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完璧なボルト締結を目指す

【技術コラム】テンショニングでも潤滑油が必要?

8 6月 2017
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テキスト: Amaris Neidich & Joseph Vernam

※本記事は、Boltedマガジン2017年第1号に掲載されたものです

Q: 油圧式・機械式共に、テンショナーで締結する場合も潤滑油は必要?

 

A: 従来通りのスパナやトルクレンチ等でボルト/ナットを回して締め込むトルク法では、ねじの

勘合部やボルト頭部の座面等、摩擦が発生する箇所が非常に多くなるため、潤滑油は重要です。

ボルトに必要な軸力を与えるための締付トルクのうち約90%が摩擦によって奪われてしまうだけで

なく、摩擦係数は常に変動するためトルクが摩擦に奪われた後に残る軸力も、結果として変動して

しまうのですが、潤滑油によって摩擦係数を低く押さえれば変動幅も必然的に小さくなり、得られる

軸力も安定化させることができる、というのがその理由です。

 

一方で「ボルタイト」のような油圧式ボルトテンショナーを用いて締付力を発生させる場合、ボルト

やスタッドを油圧で直接引き伸ばして軸力を発生させるため、トルク法のように座面やねじ部の摩擦

に力を奪われることはなく、潤滑油を塗布しても特に効果はありません。テンショニング法における

ボルトを引き伸ばす力は、軸方向に発生してそのまま軸力に転化されるため、トルク法のように回し

て締め込む必要がないのです。油圧でボルトを引き伸ばした後は、ナットを着座させる際の最小限の

摩擦のみを考慮すれば良いことになります。つまり、ナットを回転させて締め込むトルク法ではない

ため、潤滑油を使用して摩擦係数を低減する必要が無いのです。

摩擦を考慮する必要が無いということは、想定通りの軸力が正確に得られることを意味しており、

ボルト側・ナット側双方に摩擦によるダメージが無いため、再利用時にも初回同様の締結精度が期待

できます。

 

また、「スーパーボルト」のマルチ・ジャックボルトテンショナー(機械式テンショナー)を使用

する際も、油圧式同様にメインスタッドのねじ部に潤滑油を塗布しても、トルク法のように締結作業

における効果はありません。但し、取外し時のかじり・焼き付きを考慮すれば、潤滑剤の使用は勿論

好ましいとは言えます。

しかし、スーパーボルトで潤滑油の必要性が浮き彫りになるのは、各ジャックボルト(ナットボディ

に環状にぐるりと配置された小さなボルト)のねじ部および先端部です。スーパーボルトを使用する

上で、適切な潤滑油の塗布は発生軸力の精度と再利用時の再現性を維持するために非常に重要です。

スーパーボルトは主に専用のグラファイト系潤滑剤(写真左:JL-G)を使用しており、この潤滑油

の特徴は、摩擦係数が低くバラつきの少ない締結部での使用に適していることです。

 

スーパーボルト付属のジャックボルトには、専用の潤滑油が工場出荷時に予め塗布されています。

この専用潤滑油は、各ジャックボルトの先端に塗布していただくために製品に同梱されています。

取外し後の再取付時にも、軸力値を適正に軸力をコントロールするために、潤滑剤を再度塗布する

必要があります。結論としては、油圧式ボルトテンショナー使用時には潤滑油塗布は特に不要ですが、

機械式テンショナーでの締結時には、ジャックボルトへの潤滑油塗布により想定通りの精度で軸力を

得ることができるようになる、ということです。

 


 

※テンショニングに関わらず、一般的な「ボルト締結への潤滑油と摩擦」の情報をお求めの方は、
トヨタ自動車でボルト締結を専門に研究されていたボルト締結の第一人者であり工学博士・酒井智次
先生のインタビュー記事をご覧ください。

 

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