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完璧なボルト締結を目指す

【BoltingTIPS】ボルト折損を見つけたら何をすべきか

17 1月 2018
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テキスト: 岡田 圭佑 文章監修:梁 完

ボルトの折損を見つけたら
現場でまず何をすべき?

※本記事は1月18日配信の無料メールマガジン「BOLTEDジャーナル」にてご紹介したものです。メールマガジンのご登録はこちらから。

 

ボルトが折れているのを発見したら

皆さんは現場で折れたボルトを発見した経験はありますか?もしくはボルトの折損が元で何かの

トラブルを経験された方もいらっしゃるかも知れません。締結部によってはボルト1本の折損が

大きな事故原因になりかねませんが、ボルトの折損リスクは実はかなり広範囲に渡って存在して

います。そこで今回の「Bolting TIPS」では、実際に現場で折れたボルトを発見した時に何をすれば

良いか、また折損を防ぐためにはどのような点に注意すべきかを掘り下げて行きたいと思います。

 

ボルトの緩みが誘発する「疲労破壊」

ボルト締結に関するトラブルと聞いて、真っ先に思い浮かぶのは「緩み」に関するものではないで

しょうか。以前のコラムで紹介したような原因でボルトやナットには緩み(軸力損失)が発生しま

すが、ボルトに対する動的荷重の繰り返しによる破壊、いわゆる「疲労破壊」が緩みに起因して発生

するものであることはあまり広く知られていないように感じます。正確には、その締結部の軸力が

不足することで振動や衝撃が直接的にボルト軸に繰り返し伝わるために疲労破壊が起こってしまう

(下図)のですが、これには締付後に軸力が抜けてしまった可能性と、そもそも締付段階で必要軸力

が得られていなかったケースとに大別されます。腐食(錆び)や汚れが付着する前に発見できた

場合は、折れたボルトが疲労破壊によるものかどうかは多くの場合、視覚的に判別できます。その

ため疲労破壊でボルトが折れてしまったと分かった時には、まず軸力不足を原因として疑い、締付後

に緩んでしまったのか、それとも締付時から必要軸力が得られていなかったのかを検証する必要が

あります。

 

図)軸力がゼロの状態になると、荷重がボルト軸に直接伝わるために、ボルトには
大きなストレスが伝わってしまう。反対に、十分な軸力が発生していれば、締結部全体に
ストレスが分散されるため、ボルトに伝わるストレスも大幅に低減される。

 

ボルトの緩み要因については前回のコラムで詳しく触れたのでここでは割愛します。ここでは締付時

の軸力不足について、もう少し掘り下げてみましょう。特にトルク管理を行っている現場では、

そもそも既定のトルク値が適正かどうかを見直す必要があるかも知れません。必要トルクの算出時に

経年やメンテナンスによる座面やねじ部の細かな引っ掻き傷・錆び等が想定されていない場合、

これは問題になる可能性があります。座面やねじ部に傷や錆びが付くと「摩擦係数」が上がって

しまうため、同じトルクで締付を行っても、大きくなった摩擦にトルクの力が奪われ、狙っていた

軸力が得られないというケースがあります。摩擦のコンディションによって既定トルクを段階的に

設定する、または予め増大する摩擦を織り込んだトルク設定を行う等の方法でこのリスクに配慮でき

ます。場合によってはどちらの方法も対応が難しいケースもありますが、特に座面の傷や錆びは

影響が大きく視覚的に確認できるため、メンテナンス後の再締付の際には注意することをおすすめ

します。

 

M30を超える大径ボルトやナットの締付では、ハンマーや油圧トルクレンチ等で締め付けても、摩擦

が大きくなるために必要トルクがボルト径の約3乗に比例して増大し、ねじりストレスによる別の

折損リスクを抱えてしまいます。大径ボルトを正確な軸力で締結するには、無理に回して締め込む

方法ではなく、弊社のスーパーボルトやボルタイトのように、ボルトを直接引き伸ばして軸力を

得る「テンショニング」による締結をおすすめします。一般的には、回して締め込むトルク法では

軸力誤差が±30%程度発生すると言われていますが、特にスーパーボルトによるテンショニング

では、弊社での試験でもお客様企業での試験でも、±5~10%以内という驚くべき精度で締結が行え

ます。狙った軸力が正確に得られていれば、振動等の外力が加わってもそれに負けてしまうことが

なく、緩みも起こりません。加えて、ボルト軸には主に第1ねじ山と第2ねじ山に応力集中が発生

します。疲労破壊で折れるのも、殆どが雌ねじ側から見て第1・第2ねじ山の部分です。しかし

スーパーボルトでは、特許構造により、この応力を均一に各ねじ山に分散するため、軸力精度以外の

観点でもボルト折損のリスクを低減し、極限までそのリスクを抑えることができるようになって

います。

 

想定外の応力による「静的破壊」と、何の前触れもなく突然折れる「遅れ破壊」

衝撃や振動等の小さな動的負荷が繰り返し伝わることで発生する疲労破壊に対し、「静的破壊」と

呼ばれる、想定外の応力(ボルトの最大引っ張り強さ以上の応力)がかかってしまうことで折れて

しまうものがあります。静的破壊が原因でボルトが折れてしまった場合は、その原因となった想定外

の応力の発生原因を突き止める必要があります。4.8のボルトを使用していたのであれば8.8や10.9の

ボルトに交換する等して、より強度の高いボルトで締結するという対策が考えられます。しかし、

どの程度の応力がかかって折損が発生したのかが把握できない限りは根本解決にはなりにくい

でしょう。静的破壊に関しては、締結部にかかる外力で見落としているものが無いか設計レベルで

確認することも必要です。

 

「遅れ破壊」は、高軸力で高強度ボルトを締結した際に、時間を置いて何の予兆もなく突然破壊が

発生するものです。これは高軸力で締結され続けるという静的負荷によるものだけではなく、材料に

混入した水素による水素脆化によっても発生します。最近では水素脆化による破壊リスクを低減した

材料や表面処理も開発されているため、設計に関わる方は一通り把握された方が良いでしょう。

従って遅れ破壊への対策としては、極力12.9以上の高強度ボルトの使用を避け、材料的に水素脆化に

配慮したボルトを使用することです。高強度ボルトの使用が規格で義務付けられている場合以外は、

ボルトの本数を増やしたりボルト径を上げる等の基本的な対処方法で高強度ボルトの使用を避ける

ことができます。水素脆化リスクに関しては、電気亜鉛めっきが施されたものは、めっきの過程で

水素が材料に吸蔵され、水素脆化リスクが向上すると言われています。

 

破壊要因は他にもある

上記で触れた疲労破壊や遅れ破壊の他にもボルトの折損原因となるものは存在します。最も代表的な

ものは腐食(錆び)によるものですが、腐食は一旦発生すると際限なく進行し、それを止めることは

極めて困難です。また、鉄とステンレス等の異素材を組み合わせて使用されると、「ガルバニック

腐食」と呼ばれる腐食リスクを抱えることになります。これは水等の電解液が付着した場合に両材料

の電位差によって、低電位な金属から高電位な金属に電子が移動することで低電位な金属がイオン化

し、急速に腐食してしまう現象ですが、致命的な結果を招きかねないため、設計者でなくとも知って

おいた方が良い知識と言えます。

温度も金属の破壊要因となり得ます。熱サイクルは金属の疲労を誘発しますが、ボルトの被締結材の

ように高い圧力下で高温環境に晒される場合は、材料ごとの一定期間後にクリープという塑性変形が

発生します。クリープは防止することも発生後に進行を止めることもできないため、クリープが発生

する場合はクリープが進行する前(最終的にはクリープ破壊に繋がる)に材料を交換するしかありま

せん。

 

■ボルト破断の対策まとめ

<疲労破壊>

  • 締付後に軸力損失(緩み)が発生していないかを検証する
  • 締付時に必要軸力が得られているかを検証する
  • M30以上のボルトをトルクで締め付けている場合は、テンショニング等への締付方法の見直しを検討する
  • 設計者は計算によって外力によってもたらされる応力振幅が疲労限度を超えていないかを検証し、疲労破壊リスクを回避することができます

<静的破壊>

  • 締結部に発生する応力で見落としているものがないか確認する
  • 想定以上の外力の原因を見つけ出し、その外力がどの程度の大きさなのかを明らかにする
  • より強度区分の高いボルトを使用するか、ボルトの本数を増やす

<遅れ破壊>

  • 強度区分12.9以上のボルトは極力使用しない
  • 10.9以下のボルトで必要軸力が得られない場合は、ボルト径を上げるか本数を増やす(設計変更)
  • 水素脆化に配慮した材料・表面処理のボルトを使用する

<その他の破壊>

  • 腐食やクリープ等の進行性の劣化を発見した場合は、早めに交換を行う
  • 異なる材料同士を締結することを避け、ガルバニック腐食に配慮する(鉄の部材で締結すべき箇所に誤ってSUS製の部材を使用する等のヒューマンエラーを防ぐ仕組み作りも重要)

 

※本記事にてご紹介した内容は、あくまで一般的な情報です。実際の現場では多くの要因が複合的に発生することも考えられ、より複雑な対策が必要となる可能性もあります。

 

ボルト締結に関するご相談・ご質問がありましたら、いつでも下記までお問合せください。ノルトロックのエキスパートがお客様の課題を共に解決するお手伝いをいたします。
お問合せ✉:nlj@nord-lock-jp.com

 

文章監修:梁 完
ノルトロックジャパン エンジニアリングマネージャー

現場を訪問しての丁寧なフィールドサポートはお客様からの評価も高い。またノルトロック製品のスペシャル品を設計する技能も持ち合わせるスペシャリスト。

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