BOLTED

完璧なボルト締結を目指す

【Bolting TIPS】かじり・焼き付きの「三段対処」

12 3月 2018
comment

テキスト: 岡田 圭佑  文章監修:竹中 正人

かじり・焼き付きを
起こさない「三段対処」

※本記事は3月22日配信の無料メールマガジン「BOLTEDジャーナル」にてご紹介の記事です。メールマガジンのご登録はこちらから。

 

かじり・焼き付きの根絶は不可能

本テーマについては過去にも一度、グローバル版の「BOLTEDマガジン」で取り上げたことがあり

ますが、私たちに寄せられるご相談の中でもこの問題はかなりの部分を占めます。かじり・焼き付き

発生のメカニズム自体は、インターネットで検索するだけでもすぐに見つかりますが、主な要因は

「摩擦」です。摩擦係数は潤滑油やコーティング等で抑えることはできますが、物理現象であるため

根本的な発生率をゼロにすることは不可能です。でもだからと言って、手をこまねいているわけにも

いきません。そこで今回は「三段対処」として、実際に現場で焼き付きが発生するまでの3ステップ

に分類してお話を薦めたいと思います。

 

特に締付・取外し作業時にボルトにトルクをかける際、ねじ部や座部に発生する摺動によって摩擦熱

が発生し、材料の熱膨張等によってボルト・ナットが全く動かない状態になってしまいます。その

ため、市場には潤滑と共にボルトを急激に冷却して収縮させ、取外しが行えるようにするという製品

もありますね。しかし、なぜそこまで摩擦熱が上がってしまうのでしょうか?1つは材料の性質で

ある熱伝導率と熱膨張率が挙げられますね。ステンレスのような合金は鉄(鋼)と比較して焼き付き

が起こりやすい傾向がありますが、これはステンレスの熱伝導率が鉄に比べて約1/3と低いこと、

対して熱膨張率が約2倍と大きいことが原因です。熱伝導率が低いため、界面で発生した摩擦熱を

逃がすことができず、熱膨張率が高いためおねじとめねじのクリアランスを埋めてしまうというわけ

です。また、ステンレスに代表される合金は鉄に比べて摩擦係数が高く(一般には2倍程度)、更に

摩擦係数のバラつき幅も鉄に比べて大きくなります。私たちがステンレスの締結に潤滑油の使用を

強く推奨するのはこのためで、正確な軸力管理が求められる重要な締結部では潤滑油、油分が使用

できない環境なら摩擦を低減するコーティングが施されたボルト・ナットを使用すれば、焼き付き

だけでなく軸力管理の観点でも、より確実な締結が行えます。

 

完全にフラットな金属面は無い

摩擦熱がこれほど問題となる原因、もう一つは「微小突起」です。例え研磨されていたとしても、

金属面はフラットに見えてもミクロの世界では無数の凹凸が残されています。何が言いたいかと

いうと、この微笑突起のために、摩擦が起こるのは「面」ではなく「点」になるということです。

そのため、ボルトの締付や取外しのトルクが加わった時、微小突起先端の「点」には大きな応力が

かかり、摩擦熱もそれだけ大きくなるということですね。これによって凝着が起こり、かじり・焼き

付きが発生します。この微小突起表面での「単位時間・単位面積当たりの発熱量(Qm)」は、

「微小突起部面圧Pm」「摩擦係数μ」「すべり速度V」が関係する下記の式で表されます。

 

 

上図のような微小突起は、ボルトの緩みを議論する際にも「金属なじみ」の原因となります。締結に

よる圧で被締結材の微小突起同士が潰され、その分被締結材の厚みが減少して行くことにより、軸力

の損失が起こるのです。この金属なじみは最も身近な非回転緩み(戻り回転を伴わない緩み/他にも

被締結材の塑性変形、塗装面の陥没、ガスケット等挿入材の痩せ、クリープ等がある)で、金属同士

の締結であればどんな条件下でも必ず発生します。

 

かじり・焼き付き発生の発生要因

ここまで触れて来たのは化学的見地からの焼き付き要因ですが、実際に現場ではボルトに何が起こっているのでしょうか?代表的な事例を下記にまとめてみました。

 

①摩擦係数による発熱量の増加

  • ねじ部やボルト・ナット座部の摩擦係数が高い(錆びや傷によっても摩擦係数は上昇)
  • 上記に関連して、ねじ部やボルト・ナット座部の潤滑が不十分または未潤滑

 

②座部面圧による発熱量増加

  • 加工精度の問題により、ねじ部やボルト・ナット座部などが片当たりとなり、実質的な接触面積が非常に小さくなる
  • 上記に関連して、切削ねじは転造ねじよりも表面に粗さや微細な傷が残るため、かじり・焼き付きが発生しやすい
  • 高軸力での締結(特に熱伝導率の低い材料で上記全ての要件を満たす場合)

 

③すべり速度による発熱量増加

  • インパクトレンチ等の電動または空圧工具で高速で締め付ける

 

④締付時エネルギー増大による発熱量増加

  • ねじ勘合部(グリップ長さ)が長い→摩擦が発生する面積が大きい
  • ボルトピッチが小さい(細目)またはM30以上の大径ボルトを使用している

※ねじピッチの違いによるボルトの機械的性質の変化についてはこちらの記事をご覧ください

 

かじり・焼き付きの「三段対処」

かじり・焼き付きの発生要因を整理したところで、実際の現場で「締付前」、「締付作業中」、「取外し時」の3つのタイミング別に対処法をまとめてみたいと思います。

 

▶ STEP 1:締付作業前(設計・資材調達)での焼き付き対策

  • ステンレスやチタン合金等の熱伝導率の低い材料のボルト・ナットを使用する場合、潤滑油を塗布できない現場ならコーティングが施されたものを使用する。
  • ボルト・ナットを再利用する場合も、潤滑油または潤滑効果のあるコーティングを施したものを使用して摩擦係数を抑える。再利用によるねじ部と座部の傷・錆びを最小限に抑制する。
  • 切削ねじではなく転造ねじを使用する(ナットは全て切削のためコーティングまたは潤滑を検討)。
  • 高精度な加工で製造されたボルト・ナットを使用する。加工精度によるボルト表面の粗さや微細な傷による焼き付きリスクを最小限に抑える。
  • 設計段階で高軸力の締結を極力避ける。ボルト本数を増やして各締結部当たりの軸力値を落とせば座部面圧に起因する焼き付き防止に効果が期待できる。高軸力締結を導入せざるを得ない場合も、フランジボルト等で単位面積当たりの圧を極力下げる。
  • 焼き付きの発生が想定される締結部では極力狭いピッチのボルトを使用しない。大径ボルトの場合は並目でピッチが6のものが多いが、呼び径が大きくなってもピッチが変わらなければ相対的にピッチが細くなる(細目に近付く)ため、可能ならより大きなピッチのボルトを使用するか、ボルト本数を増やして各ボルトの呼び径を小さくする。
  • 焼き付きの発生が想定される締結部では、必要以上に長いねじ嵌合部(グリップ長さ)を作らない。強度の問題等で対処が難しい場合は、上述の潤滑やコーティング、高精度な転造ねじの使用、締結軸力、座部の面圧、ねじピッチといった他の要因を排除してリスク管理を行う。
  • 大径の場合、そもそも締付をトルクに依存しない。スーパーボルトのように手工具で大径ボルトを締結できる機械式ボルトテンショナーや、ボルタイトのような油圧式ボルトテンショナーといったテンショニングによる締付に切り替える

 

▶ STEP 2:締付作業中(現場)の焼き付き対策

  • 締結部環境の温度帯や衛生要件が許せば、ステンレスやチタン等の合金製ボルト・ナットには潤滑油を塗布する。高温・低温環境下でも使用できたり、クリーンルーム対応の潤滑油等衛生要件に対応した製品もあり、設計部門と事前に調整・検証を行う。
  • 鉄粉等の粉塵や埃が多い環境では、締付作業時におねじ・めねじ両側のねじ部と座部の粉塵をエアダスター等で除去する。
  • 潤滑等で摩擦係数を低減できない環境では、極力インパクトレンチやナットランナー等の電動および空圧工具を使用しない。
  • 大径の場合、油圧トルクレンチでの締付を避ける。締付時の摩擦はボルト呼び径の3乗に比例して飛躍的に上昇するため、油圧による巨大な力でボルトを回転させるとそれだけ巨大な摩擦が発生する。油圧での締付と巨大な摩擦による大きなねじりストレスも発生するためボルト折損リスクも高まる。
  • STEP 1同様に、M30を超える場合や高精度な軸力管理が必要な締結部(M16以上である必要あり)は、トルクで締付を行わない。スーパーボルトのように手工具で大径ボルトを締結できる機械式ボルトテンショナーや、ボルタイトのような油圧式ボルトテンショナーといったテンショニングによる締付に切り替える。

 

▶ STEP 3:取外し作業(現場)における焼き付き対策

  • 基本的なことではあるものの、STEP 1同様に取外し作業時も潤滑油を使用する
  • 同様に、突出部のねじ部を含めて粉塵等の異物を取り除く
  • 潤滑等で摩擦を低減できない締結部では、電動または空圧工具の使用を控える
  • ねじ突出部が1D以上(ボルト径と同寸法)ある場合は、油圧トルクレンチを使用するのであれば油圧テンショナーに切り替える
  • それでも焼き付いてしまった場合は、ボルタイトのナットスプリッター海中作業用も有)等を使用して取り外す。ボルトが焼き付いた場合にはもみ取り作業(ドリル等で焼き付いたボルト軸をその場で切削してタップを切り直す作業)での対応が必要

 

かじり・焼き付きの本当のリスク

私たちに寄せられる焼き付きのご相談は、M30を超える大径ボルトで発生しているケースが大部分を

占めています。中には高温環境やフレッティング(微細な振動)による摩耗に起因する焼き付き、

つまり締結後の環境に起因するものもありますが、大部分は締付または取外し作業中に発生している

ものです。焼き付きの多くはトルクをかけることで発生する摩擦の熱が主要因となっていることは

本稿で何度も触れていますが、だからこそ私たちは大径の締結に対しては回して締め込むトルク法

ではなく、直接ボルトを引き伸ばして軸力を得るテンショニングを強くご推奨しています。

 

当社のお客様である大手電力会社では、大径ボルトの締結・解除作業をテンショニングに切り替えた

結果、焼き付きの発生件数がゼロになったという実績があります。そもそもテンショニングは摩擦に

影響を受けずに直接的に軸力を発生させられるため、高軸力での締結が求められる一方で相手材の

強度が高くないため軸力がオーバーすると陥没してしまう等といったターゲット軸力の幅が狭い用途

でも使用できる、軸力を正確に得ることに主眼を置いた締結方法です(油圧式ボルトテンショナー

使用時は、締結直後の初期軸力と、金属なじみ等による残存軸力に大きな差異が発生する場合があり

ますので、なじみ量を見越して初期軸力を大きくするか、なじみ収束後に再度締結する等の対策が

必要になる場合があります。ノルトロックジャパンでは、この点についてもテクニカルサポートの

一環としてお客様にサポートを提供しています)。

 

これは恐ろしい点ですが、もし締付作業中に焼き付いてしまった場合、当然それ以上トルクをかけて

も締付できない(ボルト・ナットが回らない)ために、作業者が十分に締め込んだと誤認してしまう

可能性があります。ある程度締め込んだ後に焼き付きが起こった場合、軸力が全く足りていないこと

や焼き付いていることを視覚的に見抜くことはほぼ不可能です。当然ながら、設計者が定めた必要

軸力が得られていない場合、ボルトの緩みや折損等の不具合要因となり人身事故や機械のトラブルに

よる設備損傷等のリスクを抱えてしまい、大変に危険です。そのようなリスクを避けて作業時の焼き

付き発生を防ぎ、尚且つ確実に正確な軸力を得るためには、やはりテンショニングによる締付が大径

締結の殆どのケースで最善と言えるでしょう。

 

※本記事にてご紹介した内容は、あくまで一般的な情報です。実際の現場では多くの要因が複合的に発生することも考えられ、より複雑な対策が必要となる可能性もあります。ボルト締結に関するご相談・ご質問がありましたら、いつでも下記までお問合せください。ノルトロックのエキスパートがお客様の課題を共に解決するお手伝いをいたします。

 

 

ボルト締結に関するご相談・ご質問がありましたら、いつでも下記までお問合せください。ノルトロックのエキスパートがお客様の課題を共に解決するお手伝いをいたします。

 

お問合せ✉:nlj@nord-lock-jp.com

 

 

文章監修:竹中 正人(ノルトロックジャパン アプリケーション・エンジニア)

特に材料への造詣が深く、困難な締結課題にも臆せず立ち向かう探求心で多くのお客様より信頼を得る。超音波による軸力測定、油圧テンショニングにも精通し、VDI 2230の研究にも余念がない。日本ねじ研究協会における研究委員会のメンバーでもある。

* All fields required. Email won't be shown.