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【Bolting TIPS】そのトルク管理は正しいか

※本記事は、無料メールマガジン「BOLTEDジャーナル」掲載の過去のお問合せに対するご回答をご紹介するものです。メールマガジンのご登録はこちら

※クイズの答えは本ページ最下部になります。一度お読みになられた方は最下部で答えをご確認
ください。

 

トルク管理の「落とし穴」とその「唯一の対策」

お客様からのご相談を伺う中で、よくする質問が「締結力はどのように管理されてますか?」という

ものです。ボルトの締結力を管理されているお客様のほぼ全てと言っても良いくらいの方が、「ウチ

はトルク管理をしてる」と答えられます。しかしこの「締付トルクによって締結力を管理する」と

いう考え方は正しいとも言えるのですが、決して万能ではありません。今回は、そのトルク管理に

ついて極力皆さまの現場でも役立つような内容をお届けできればと思います。

 

制御できない「摩擦係数」

以前、元トヨタ自動車でねじ締結を専門に研究されていた、名著『ねじ締結概論(養賢堂刊)』の

著者である酒井智次先生との対談記事でも触れられていた通り、摩擦係数は全く同じ材料・表面処理

を同じメーカーで施したものであってもバラつきが生じ、決して予測も制御もできないものだという

お話がありましたが、同じボルト・ナットを使用しても摩擦係数は各締結体ごとに必ずバラついて

しまいます。そもそもトルクで締付を行う場合、トルクの90%程度はボルト・ナットの座面部と

ねじ部の摩擦によって奪われ、残る10%程度が締結力である「軸力」に転化されるという前提が

ありますが、この摩擦が一定ではないため、当然最後に残る軸力にもバラつきの影響が直に表れて

しまいます。

また、ボルトやナットは再利用すると、ねじ山に大なり小なりキズがついてしまいますが、そうした

キズダメージもまた摩擦係数を変動させる要因となります(多くの場合、再利用時には摩擦係数は

増加します)。他にも油分が少しでも付着すれば摩擦係数は低下し、粉塵等の異物が混入すればまた

摩擦係数は変動します。つまり、数えきれない程の外部要因が摩擦係数の変動に対する影響因子と

なってしまいます。摩擦とは、これほど不安定なものなのです。トルク管理の最大の課題は、締結力

が摩擦という不安定で予測不能な因子に大きく影響されるという点です。しっかりと管理している

つもりでも、実は必要な軸力が得られていなかったというケースは決して珍しくありません。

 

トルクレンチにも「精度」がある

トルクを管理する上で不可欠なトルクレンチ等の測量機能付工具。実はこれらの工具にも「精度」が

あり、許容される公差(誤差)が存在します。一般的には、デジタルトルクレンチにも±10%の公差

があり、目盛式のトルクレンチやエアー式のトルクレンチでは±15%以上の公差があります。しかし

この値はメーカーや工具のグレードによっても異なるため、普段使用されている工具の公差は

メーカーに確認しておくことをおすすめします。

10%以上のバラつきというのは微々たる誤差とは思えませんよね。しかし現実には、先述の摩擦係数

のバラつきに上乗せされる形で工具の誤差が各ボルトに発生しています。当然何も管理しないよりも

遥かに良い方法ではあるのですが、絶対に緩みや破断が起こってはならない致命的な締結部では、

トルク管理だけに頼るのはリスクがあるのも事実なのです。

 

先入観が邪魔をする「唯一の対策」

上記の「摩擦係数のバラつき」と「工具の誤差」が、トルク管理につきまとう永遠の課題です。

それでは実際に、私たちはどうすれば対策が取れるのか。答えは単純で、不安定な要因を排除または

低減するしかありません。トルク管理を行う前提である場合は、工具の誤差からは逃れようがない

ため、締付トルクを決定する際にその公差を予め想定したトルク値を設定することが唯一の対策と

なります。この公差は先述の通りメーカーや工具のグレードによっても異なりますので、極力公差の

小さなものをチョイスすることが望ましいと言えます。

一方で、摩擦です。摩擦は排除することも制御することも、原則的には不可能です。摩擦への対策と

してはまず、各締結体ごとの摩擦係数のバラつき幅を揃えるために、材料や表面処理等が同じねじで

統一することが望ましいと言えます。そもそもの摩擦係数を低減したボルト・ナットを使用するのも

良い方法と言えます。そして、我々がお客様に最もご推奨するのは潤滑油を塗ることです。

潤滑油によって摩擦係数の絶対値を最小化すれば、バラつき幅も最小化されるため、軸力への影響も

最小限に抑えることができます。しかし、皆さんは絶対に緩んではいけないボルトに潤滑油を塗る

勇気がありますか?

当然ながら、潤滑油を塗れば「緩み」は発生しやすくなります。これは事実なのですが、多くの方が

このイメージが頭にあるせいで潤滑油の大きなメリットをみすみす逃してしまっています。これは、

そもそも緩みが起こる根本的な原因を理解することで払拭できる「先入観」なんですね。

 

ボルト締結体は、締結されている軸力以上の外力(振動・衝撃等)が加わった際に、被締結材の間で

滑りが起こることで回転緩みを起こします。しかし潤滑油が塗られていて何の緩み止めも施さなくと

も、ボルトの軸力が外力に勝り、被締結材間で滑りが起きない限り(緩む環境にない限り)は、回転

緩みは起こりません。つまり、ノルトロックワッシャーのような緩み対策品を使用する必要もないの

です。

しかし設計時にあらゆることを想定しておいたとしても、実際の現場では想定以上の外力が発生する

可能性もあります。ノルトロックワッシャーは、唯一の摩擦を利用しない緩み止め機構を持つ製品

として、外力が想定し切れないケースや「保険」が求められるケースで最も有効なソリューションと

言えます。潤滑油を塗布したボルト締結体にも、ドライ状態(潤滑なし)の状態と変わらない緩み

止め機能が発揮でき、軸力の大小に関係なく回転緩みを物理的に防止します。これは自社製品だから

推しているという訳ではなく、実際にノルトロックの機構を真似たコピー品と比較しても、同等の

成績を収めた緩み止め製品が存在しないからです。

最後に、ボルト締結体に潤滑油を使用する主なメリットをまとめておきます。このメリットはコスト

にも関わることですので、是非一度潤滑油の使用をご検討ください。何か不安な点があれば、

いつでもノルトロックジャパンにてご相談を承ります。

 

ボルト締結体に潤滑油を使用するメリット

  • 格段に小さなトルクで必要軸力が得られる
  • 摩擦係数のバラつきが最小化されるため、締結精度が向上する
  • ボルトへのねじりストレスを最小化でき、折損リスクを小さくできる
  • 上記2点によりボルトの能力を最大限に利用できる
  • ボルト/ナットの嵌合部へのダメージを最小化でき、再利用性を最大限に確保できる
  • 取外し時にも、より小さなトルクで取外しができる
  • 耐食性が向上する
  • かじり・焼き付きへの対策となる

 

※熱サイクル、塑性変形、なじみ等の非回転緩みの懸念がある場合は、ノルトロックXシリーズワッシャーを使用する等、別途対応策の検討が必要です

 

 

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ボルト締結のお悩みは、nlj@nord-lock-jp.comまでお問い合わせください!

 


 

quizz

BOLTEDクイズ(BOLTEDジャーナル #.023)解答

ボルト締結のちょっとしたクイズ。お昼休みや休憩時間にどうぞ。

 

前回のメールマガジンに掲載した「BoltingTIPS」では、トルク管理のお話を
取り上げました。今回のクイズでは啓蒙の意味も込めて、その要点からの出題です。

 

<Q>多くの場合、トルク管理を行う締付トルクはその設備機器や締結部材が新品である前提に

なっています。机上の計算で算出されるので無理もありません。でも現実は、相手材表面の錆びや

微細な引っ掻きキズが入っただけでも摩擦係数は大きく変動し、トルクをかけた結果得られる軸力も

その分大きく変動します。でも、現場では無心で既定された締付トルクで粛々と締付作業が行われ

ます。既定のトルクで締め付けても軸力が全然足りていないケースは珍しくないんです。

これって、考えてみると怖いお話ですよね。

では、トルク管理を効果的に行う上で、当てはまらないものは次のうち、どれでしょうか?

 

<A>
下の選択肢から正解を選んでくださいね。

① ボルト締結に潤滑油を使用して摩擦係数のバラつき幅を最小化する
② 錆び等の状態により、何段階かに締付トルクを分けて設定しておく
③ 締付トルクを算出する際に、他締結部と同じ数値に揃えて設定する

分かるかな?是非少しの間、考えてみてくださいね。

 

答え:③

 

作業面での確実性を重視すれば、3も正解と見なせるのですが各締結部に必要な軸力は当然ながら

変わって来ます。必ずしも間違いとは言えないのですが、特に重要な締結部に関しては摩擦係数の

変動もある程度想定して、締付トルクを個別に設定する方が確実と言えます。その意味では②の

ように、錆び状態等の視覚的に客観的判断ができる基準が設けられるのであれば、錆びの段階別に

締付トルクを複数既定しておくという対策は理想的です。

どのような設備機器でもそれが可能という訳ではありませんが、締結体の状態を考慮せずに一律の

トルク値だけでトルク管理を行う方法にはリスクも伴うということも重要ですね。

 

/FIKA

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