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完璧なボルト締結を目指す

【Bolting TIPS】ボルト緩み要因のすべて

9 11月 2017
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テキスト: 梁 完(Yang Wan)

設計者と作業者で異なる「視点」

例えば合いマークが動いていないのにボルトが緩んでいたり、どんな対策を試しても緩みや疲労破壊

によるボルト折損が繰り返し起こってしまうといった事象に遭遇したことはありませんか?ボルト

締結体の構成には無限とも言えるバリエーションがあり、どこにでも有効な万能薬的なソリュー

ションは残念ながらありません。設計者の立場と技術者・作業者の立場でもボルト締結体に対する

向き合い方は違って来ると思いますが、皆さんは永遠のテーマとも言える「緩み」に対し、どこまで

広い範囲を想定されているでしょうか?

 

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回転緩みはボルト折損にも繋がる

言うまでもなく、という言葉を付け加えたくなる程、振動に起因する緩みは一般的です。締結体に

加わる衝撃も同じように緩み要因となりますが、振動や衝撃による緩みは、ボルト軸に対してせん断

方向に加われば被締結材間の「滑り」に繋がり、戻り回転を起こす「回転緩み」が発生しますが、

言い換えれば振動や衝撃等の外力に負けない軸力で締結されていれば、被締結材間の滑りを許さず、

緩み止めを使用しなくても回転緩みは起こらないとも言えます。

 

設計者は被締結材間の滑りや遊離以外にも、被締結材にかかる面圧により陥没が発生しないか、

ボルトが降伏しないか、ボルト軸方向に何らかの外力が繰り返し加わる場合はボルト軸にかかる

繰返し応力によって疲労破壊が起こらないか、現場で必要軸力をどのように発生させるか等、詳細に

渡って配慮する必要がありますね。ハイテンションボルト等での高軸力締結部を設計する場合には

「遅れ破壊」と呼ばれる現象にも気を遣う必要が出てきます。疲労破壊と遅れ破壊は、前者が動的

疲労破壊、後者が静的疲労破壊と呼ばれ、性質の異なるものですが、特にボルト締結においては、

疲労破壊が多く見られます。主に軸力が不足することで発生したものですが、振動等に起因する

「回転緩み」によって軸力が急激に下がってしまい、疲労破壊を誘発しているケースも多く見受け

られます。

 

ボルトの折損が繰り返し起こってしまう締結部では、私たちはまず軸力損失(=緩み)による疲労

破壊を疑います。大径ボルトの場合なら、そもそもの締付時に十分な軸力が得られていないことも

多く、締付方法そのものの見直しが必要となる場合もあります。戻り回転による軸力損失(回転

緩み)の主要因は、先述の通り被締結材間の滑りで、それを引き起こす振動や衝撃が主要因となり

ますが、締結体に加わる振動や衝撃を無くすことは通常できません。そのため、まずはターゲットと

なる既定の軸力が外力に勝っているか、締結時に正確に得られているか、という点を検証する必要が

あります。また、ボルト軸方向に大きな外力が伝わる場合には、被締結材間で「遊離」が発生して

いないかを検証する必要があります。被締結材間で遊離が発生してしまう場合、その大きな外力は

ボルトにそのまま伝わってしまいます。その外力がボルトに繰り返し発生すると、例えそこから発生

する応力がボルトの耐力範囲内でも、ボルトの応力振幅が大きくなり疲労破壊が起こるという結末が

待っています。

 

合いマークが動かなくても
緩みは起こる

ここまで戻り回転を起こす「回転緩み」について触れて来ましたが、皆さんは戻り回転を起こさない

緩みを普段意識されているでしょうか?イメージするのが難しい方は、ボルト締結体の相手材が陥没

した場合を想像してみてください。アルミ等の軟金属、樹脂、FRP等の繊維複合材や、塗装面の締結

に慣れている方は、この問題に普段から対処されているでしょう。配管のフランジ等でガスケットや

パッキンを挟んだ締結部にも同様のことが言えますね。また、高温状態と低温状態を行き来する

熱サイクル環境下に置かれる締結部では、材料の膨張・収縮による影響を考慮する必要があり、可能

な限り締結体の構成を同材料で揃える等の対策を取らないと、膨張率の違いによって戻り回転を

伴わない緩みが起こるリスクがあります。これらの戻り回転を伴わない緩みを「非回転緩み」と呼び

ますが、非回転緩みの原因には下記の3つも挙げられますので、是非ご確認ください。

 

❶金属の「なじみ」
→金属はフラットに見える面でも、実際には粗さが残り、凹凸があります。凹凸面同士が締結されると、その圧によって凹凸が潰され、その分の厚みが減少することで軸力損失(緩み)が起こります。この現象は、金属面が接する被締結材間、ボルト頭・ナットの座面、ねじ間全てで起こるもので、これを金属の「なじみ」と言い、金属材料の締結では例外なく発生します。しかし、なじみは無限に進行するものではなく、ある程度で収束します。

❷リラクゼーション
→締結体が時間の経過と共に締結の圧によって塑性変形を起こす現象で、軟金属や樹脂、繊維複合材の締結で多く見られる現象です。

❸クリープ
→主に高温環境下で高い圧を受け続けた場合に起こる塑性変形を指します。材料の耐力以下の応力でも、それが長期に渡ると発生する可能性があり、この塑性変形によって軸力損失(緩み)が発生します。一般的には材料の融点の1/2以上の温度環境下ではクリープが起こるリスクが高まるとされており、これを防ぐ手段は事実上ありません。クリープは進行すると材料の破壊を引き起こす(クリープ破壊)ため、通常は一定期間で材料を交換する等の対策が取られています。

また、非回転緩みで最も厄介な点は、非回転緩みで軸力が抜けてしまうと今度はもっと致命的な軸力損失を起こす回転緩みに繋がる、という点です。これはつまり、原因の究明が難しくなることを意味しています。そのため緩みが頻発する締結部や対策を施しても緩みが解決しない締結部では非回転緩みの可能性も併せて検討されることをおすすめいたします。

 

現場の締付作業に起因する
緩みもある

最後に、現場での締付作業に起因する緩みにも触れたいと思います。特にトルク管理を行われて

いない現場では、ボルトを目一杯締め付けるということが往々にしてあります。この場合、ボルトの

降伏点を超えてしまうと、ちょうどバネが一定以上引き伸ばされると元に戻らなくなるのと同じこと

がボルトにも発生し、必要な軸力が得られなくなるばかりか、破断の原因にもなってしまいます。

トルク管理を行っている場合でも、設備機器は年月が経ち繰り返しメンテナンスされる中で発生

する微細な引っ掻き傷や錆び等により、主に締結部座面の摩擦係数が大きく変わってしまいます。

お客様からの不具合相談を受ける中でもこうしたケースは珍しくありませんが、摩擦係数が変動

するということは、当初算出した締付トルクでは必要軸力が得られなくなっているということです。

それでも現場では、当初既定された締付トルクを忠実に守って作業を続けているのです。そのため

締付トルクを規定する際には経年による締結部の摩擦係数変動も考慮に入れておく必要があります。

 

また、M30を超える大径ボルトの場合には、その正反対の事象が多く見受けられます。ボルトは

サイズが大きくなるにつれて締付に必要なトルクも当然大きくなりますが、正比例して増大する

のではなく、飛躍的に大きくなる摩擦のためにボルトサイズのおよそ3乗に比例して必要トルクが

増大します。何より重要なのは、サイズが大きくなると「回して締め込む」という締付方法自体に

無理が出て来てしまうということです。ハンマーで叩いても、油圧トルクレンチで締結しても、必要

軸力を正確に得るのは難しく、軸力不足によるボルト破断に繋がってしまいます。そもそも上記の

締付方法は、巨大な摩擦に対してボルトを無理に回して締め込んでいる状態であるため、ボルトには

極めて大きなねじりストレスが発生し、これもボルト折損の要因となります。

 

私たちは大径ボルトの締結に、直接ボルトを引き伸ばす「テンショニング」をおすすめしています。

M100以上のボルトでもトルクレンチ1本で締結でき、特許構造でボルト折損を防ぎ、驚異的な精度で

軸力を得られるため緩みにも強い世界初の機械式テンショナー「スーパーボルト」、最大で従来の

ボルトテンショナーの重量を30%カットし、油漏れの問題も克服した10,000回使用に製品保証が

付いた油圧テンショナー「ボルタイト」の2つをご用意しています。

 

ボルトの緩み要因まとめ

<回転緩み>

  • 被締結材間の「滑り」、「遊離」 ※疲労破壊にも繋がる
  • 上記を引き起こす「振動」や「衝撃」

<非回転緩み>

  • ガスケットやパッキンのへたり
  • 熱サイクルによる膨張・収縮
  • 塗装面や軟金属、樹脂等の陥没
  • 金属のなじみ
  • リラクゼーション(柔らかい材料が時間と共に塑性変形を起こす現象)
  • クリープ(高温環境にて時間と共に継続的に圧力下に置かれることで発生する塑性変形)

※熱サイクル、塑性変形、なじみ等の非回転緩みの懸念がある場合は、ノルトロックXシリーズワッシャーを使用する等、別途対応策の検討が必要です

<現場作業に起因する緩み>

  • 締め過ぎ(オーバートルク)によるボルト降伏 ※トルク管理未実施の場合
  • 経年による締結部の状態変化(摩擦係数の変動) ※トルク管理を行っている場合
  • 大径締結にて、そもそも必要軸力が得られていない ※締付方法の見直しが必要

 

ボルト締結に関するご相談・ご質問がありましたら、いつでも下記までお問合せください。ノルトロックのエキスパートがお客様の課題を共に解決するお手伝いをいたします。
お問合せ✉:nlj@nord-lock-jp.com

 

文章監修:梁 完
ノルトロックジャパン エンジニアリングマネージャー

現場を訪問しての丁寧なフィールドサポートはお客様からの評価も高い。またノルトロック製品のスペシャル品を設計する技能も持ち合わせるスペシャリスト。

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