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完璧なボルト締結を目指す

【BoltingTIPS】ボルト・ナットの強度区分とその組合せ

15 5月 2018
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テキスト: 岡田 圭佑  文章監修:梁 完、竹中 正人

写真: ノルトロックジャパン

強度区分を意識することはありますか?

ボルトには強度に応じたグレード(強度区分)がISO 898-1:1999において国際標準として定められて

おり、日本でもJIS B 1051:2000において上記ISO規格に対応しています。今回のコラムで本トピック

を取り上げた理由はいくつかあるのですが、その1つはボルトの強度区分における日本と諸外国の

違いが挙げられます。これはご存知の方も多いかと思いますが、日本では強度区分4.8のボルトが

圧倒的に主流であるのに対し、欧米や中国を含む他国では強度区分8.8が主流です。

では具体的に、この強度区分の違いによってどのような違いが生まれるのでしょうか?また、海外

向けに製品を輸出されるメーカー様ではどのような点に留意すべきか?逆に海外メーカーの生産設備

を国内の工場に設置している場合等、メンテナンスでどのような点に注意が必要か?ボルトの強度

区分は普段どのように意識すべきか?そうした疑問を明らかにして行きたいと思います!まずは各

強度区分とその意味するところをざっと確認して行きましょう。

 

ボルトの強度区分

ボルトの強度区分を定めたJIS B 1051:2000では、10種類の強度区分が標準化されており、中でも

流通しているものは4.8、8.8、10.9、12.9の4種が殆どです。

六角ボルトの強度区分はボルト頭に刻印されていることが多く、そのボルトを見れば強度区分は

簡単に判別できるケースも多くあります。基礎知識のおさらいですが、ボルトの強度区分の意味する

ところは、例えば国内で主流の強度区分4.8のボルトなら、小数点前の「4」は引張強さが

400N/mm²であることを示しており、小数点以下の「8」は降伏点が引張強さ(前述の通り4.8

なら400N/mm²)の8割であることを示しています。つまり強度区分4.8ボルトの降伏点は320

N/mm²ということになります。

また、六角穴付ボルト(キャップボルト)は一般的に強度区分8.8以上となり、国内では10.9や12.9

のものが主流になっています。ソケットやスパナで外側から力を加えて締め込む六角ボルトと違い、

六角穴に挿し込んで内側から力を加えて締め付けるため、穴がなめてしまわないように強化されて

いるんですね。

つまりボルトの強度区分とは、読んで字の如くボルトの強度をクラス分けして規格化したもので、

そのボルトにどの程度の力を加えても機能するか(降伏や破断を起こすことなく締結できるか)を

定めたものです。ではボルトの強度区分は何によって変わるのでしょうか?ボルトの材料?当然そう

ですね。他にも熱処理や加工方法によってもボルトの強度は変わります。一般論ですが、主な強度

区分別の材料を見てみましょう。

 

  • 4.8   :SS400相当鋼等の普通鋼、炭素鋼、SWRCH材等の冷間圧造用炭素鋼 etc
  • 8.8   :S45Cや調質済の炭素鋼、合金鋼(合金元素を添加して強化された鋼材) etc
  • 10.9 :SCM435、SCM440(クロムモリブデン鋼)等の合金鋼
  • 12.9 :SCM435等の合金鋼

 

よく見てみると、強度区分8.8と10.9の間で何となく材料の系統が分かれていますよね。8.8までは

普通鋼や炭素鋼が使われていますが、10.9以上になると炭素鋼はあまり使用されず、焼き入れ性の

良い合金鋼から作られることが多くなります。実はノルトロックワッシャーの材料もこの合金鋼の

一種で、かつ炭素含有量が比較的低いため浸炭焼入れによって表面硬度を向上させ、12.9の高強度

ボルトにもグリップできるように作られています。非合金の炭素鋼ではノルトロックワッシャーの

ウェッジロック効果が十分には発揮されず、使用環境によってはロック機能が働かないというリスク

が生じてしまうためです。

また、旧JIS規格では引張強さの1/100の数字にTを付けた強度区分が4T、7T、11T等という形で表記

されており、現在でも旧JISの強度区分の方が馴染みがあるという方もおられますね。

 

ここでも日本はガラパゴス?

強度区分4.8の鋼製ボルトが主流である国は、実は日本だけなのはご存知でしたか?欧米でも同じ

アジアの中国や韓国でも、鋼製ボルトの主流は8.8です。もちろん国内外問わず強度区分を指定して

購入すれば入手は可能ですが、逆に海外では4.8のボルトが入手できない国もあります。

ここで問題になるのは海外との製品のやり取りで、機械を海外に輸出されるメーカー様は4.8の

ボルトを使われていると海外では入手不可な国も多いため、メンテナンス時に8.8のボルトに交換

されてしまう可能性があります。最初から8.8のボルトで設計しておけば4.8よりも高軸力で締結が

できるため、ボルト本数を減らしたり、それによって軽量化が図れたかも知れません。規格を

設けて4.8のボルトの使用を強制する場合は現地での入手性を事前に確認することをご推奨いたし

ます。また、逆に海外製品を輸入して使用する場合はもう少し深刻なケースが起こり得ます。

ボルトが8.8以上のものが付いていれば、4.8では発揮できない軸力で締結する設計になっている

可能性があります。海外との強度区分の違いを知っていれば良いのですが、何も知らないままメンテ

ナンスで4.8のボルトに交換して海外から指定されたトルクで締め付けた場合、ボルトが降伏したり

破断したりするリスクがあります。破断すれば少なくとも締付時に不具合を認識できますが、単に

軸力不足の状態で作業が完了されていたりすると最悪の場合、軸力不足に起因する事故に繋がる

恐れもあります。

 

ステンレス製ボルトの強度区分

SUS製ボルトの強度区分は、鋼製ボルトとは全く違います。国内で主流のステンレス鋼はSUS304

ですが、SUS304から作られるSUS製ボルトの強度区分はA2-50という強度区分となります。

また、ステンレス製ボルトも鉄製と同じく六角ボルトよりもキャップボルトの方が強度区分が高く

なります。六角ボルトではA2-50(引張強さ500N/mm²)が最も主流ですが、キャップボルト

ではA2-70(引張強さ700N/mm²)が最も主流になります。鉄製と同じく、「ボルト頭部の

形状が六角かキャップかによって強度区分が違っている可能性が高い」ということは覚えておいて

ください。

 

ナットの強度区分

実はあまり知られておらず、またボルトと違ってナット本体にもマーキングされていないものが

多いのですが、ナットにも強度区分が存在します。JIS B 1052-2では、ナット本体の高さが

「呼び径×0.8(0.8d)」以上のもの(いわゆる1種、2種、そして10割ナット)には4、5、6、

8、9、10、12と7段階に渡って強度区分が定められています。

 

 

JIS B 1052-2では各強度区分ごとに組み合わせるボルトの強度区分と呼び径範囲が定められ

ており、また強度区分ごとに保証荷重応力が定められています。保証荷重とはその引張荷重を

15秒間加えてもナットのねじ山がせん断破壊したりナットが破断しないと保証される値で、この試験

方法もJIS B 1052-2にて規定されています。

 

 

JIS推奨外の組み合わせで使用した時

JIS B 1052-2で定められたナットの最大強度区分は12ですが、上図を参照するとこの場合に

組み合わせるボルトは強度区分12.9、呼び径はM39までということになります。これがナット

強度区分8になっても組み合わせるボルト呼び径はM39まで、逆に4.8と組み合わせる強度区分4

のナットはM16より大きなものと規定されています。でも、ちょっと待ってください。この表では

M40を超える大径ボルトには強度区分4以外のナットは使えないように読み取れます。M40以上

のボルトには強度区分4以外のナットは使うべきでないということでしょうか?

JIS B 1052-2ではこの点にもしっかり言及されています。現在JIS B 1181で定められている

ナット規格ではM40以上になると最小ナット高さがナット呼び径の0.8倍(0.8d)未満になって

しまいます。JIS B 1052-2では0.8d以上のナット高さを持つナットにしか強度区分が規格化されて

おらず、ナットの強度区分策定の基となる設計理論に適合しないため、M40以上ではナットの強度

区分が規定されていないのです。そのため、JIS B 1052-2には「機械的性質は受渡当事者間の協定に

よる」と記載されています。つまり、JIS規格として規定するのではなく使用者に委ねられている

状態です。じゃあどうすれば?という場合には、「ナット強度をボルト強度より強くする」という

基本を守り、「ナットの呼び高さを高くする」ことでナットの破断を防ぐことができます。締結体

設計ではおねじの方がめねじより先に破断するよう設計するという前提がありますが、ナット高さは

見過ごされがちです。ここに一つ、私たちの社内試験で起こった実例を挙げておきましょう。

 

そのお客様は、いわゆる立て込みという形で機器側にめねじが切られており、ボルトで締結する形

でした。実機と同じ普通鋼のSS400のナットを準備し、こちらも設計上規定されていた強度

区分12.9のボルトを使って締め付け、ユンカー振動試験で緩み耐性の検証を行ったところ、

締め付け中に不自然に軸力が低下したため試験を中止して確認したところ、ナットの第1ねじ山が

破断していました。これをナット高さを呼び径以上の高いナットに交換して(嵌め合い長さを長く

して)再度試験を行ったところ、ナットの破断は起こりませんでした。

勿論この内容が全てのケースにそのまま適合できるわけではありませんが、ナット強度と同様に

ナット高さ(=嵌め合い長さ)もねじ部が破断しない安全・確実な締結体設計には重要だとお分かり

いただけるかと思います。

 

設備機器側にめねじを設計する時の注意点は

特に近年では、様々な理由からボルト-ナットの締結ではなく、いわゆる立て込みでのボルト締結が

増えていますね。メーカー様の製品(設備機器側)にめねじを切ることになるわけですが、今までの

お話を踏まえて締結部設計の際にはどんなことに留意すべきでしょうか?

上述の弊社内試験での事例からも分かる通り、機器側の材料がボルト強度よりも低い場合は嵌め合い

長さを長く取ることで対策が行えます。それが難しい場合は機器側の材料に合うようボルトの強度

区分を落とし、必要軸力が強度を落としたボルトでも発揮できるのか確認が必要です。軸力が不足

している場合はボルト本数を増やして対処することができます。この変更を行う前に締付トルクを

算出していた場合は、強度区分の変更に伴って締付トルクも変更が必要になるためご注意ください。

ところが実際の設計では、他にも様々な要因を考慮する必要がありますね。例えばボルト径が大きく

なって来ると、めねじ側の第1、第2ねじ山への応力集中によるボルト折損リスクは主要な課題の一つ

になり得ます。この応力集中は厄介で、極めて多様な要素を漏らさず考慮する必要があります。

M16以上のナット締めが行える締結部であれば、こちらのページ(JSW事例へのリンク)でお客様

からもフィードバックをいただいている通り、スーパーボルトのナット型テンショナーであれば、

その特許構造により各ねじ山へ応力を均一に分散できるため、この応力集中によるボルト折損リスク

を解決できます。

近年では軽量化等の目的でボルト締めの締結体設計が増えていると感じます。高強度ボルトがより

一般的になってきた理由にも、ボルト1本当たりの軸力を向上させることでボルト本数を減らす

という意図があるかと思います。高強度ボルトを採用する際にも立て込みのボルト締めを採用する

際にも、従来の締結体設計と同様にナットや機器側(めねじ・被締結材)の強度にも注意し、ボルト

のみでなく締結体全体として評価することが重要になって来ます。ノルトロックジャパンでは、

ドイツ技術者協会が策定したVDI 2230に則ったボルト締結体の安全性評価計算等、お客様の

設計を最適化するテクニカルサポートも行っています。ボルト締結に関してお困りのことがあれば、

ノルトロックジャパンのテクニカルサポートを是非ご活用ください。

 

 

ノルトロックへのご相談は
ボルト締結に関するご相談・ご質問がありましたら、いつでも下記までお問合せください。ノルトロックのエキスパートがお客様の課題を解決するお手伝いをいたします。
お問合せ✉:nlj@nord-lock-jp.com

 

 

文章監修:梁 完
ノルトロックジャパン エンジニアリングマネージャー

現場を訪問しての丁寧なフィールドサポート等、お客様本位の徹底したプロフェッショナリズムで業界を問わずお客様から高い評価と信頼を得る。広い視野で様々な観点から課題を冷静に分析する能力と、ノルトロック製品のカズタマイズ設計技能も持ち合わせるスペシャリスト。

 

文章監修:竹中 正人
ノルトロックジャパン アプリケーション・エンジニア

特に材料への造詣が深く、困難な締結課題にも臆せず立ち向かう探求心で多くのお客様より信頼を得る。超音波による軸力測定、油圧テンショニングにも精通し、VDI 2230の研究にも余念がない。日本ねじ研究協会における研究委員会のメンバーでもある。

 

 


 

 

quizz

BOLTEDクイズ(BOLTEDジャーナル #.027)解答

今回のクイズはBoltingTIPSに関連して、ボルト締結体設計の考え方からです!

 

Q:ボルト締結体の設計では、あってはならないことではあるものの、ボルトやナット等の締結部材が破断した時のことを想定します。おねじ側とめねじ側の設計に関わる「破断」の基本的な考え方について、正しいものは次のうちどれでしょうか?

 

A:下の選択肢から間違った説明を選んでくださいね。

① おねじ側とめねじ側では、おねじが先に破断するよう設計する
② おねじ側とめねじ側では、めねじが先に破断するよう設計する
③ おねじとめねじが同時に破断するよう設計する

今回のクイズは、ちょっと簡単だったかな?

 

 

 

答え:1

 

 

これは「おねじ」側が先に破断するよう設計するのが基本ですね。この理由は、もし「めねじ」側が

先に破断してしまうとより致命的な結果になりかねないという点もありますが、仮に高強度ボルト

を使用した場合を想像してみると、高強度ボルトの機能(軸力)をフルに活用する前にめねじが

破断してしまったら、高強度ボルトを使う意味がなくなってしまいますよね。また、ボルトが先に

破断すれば、ボルトの耐力から破断の原因となった外力がどの程度の荷重だったのかも予測が立て

やすくなります。そういった理由で「おねじが先に破断するように設計する」が正解ですね。

 

では、また次回のクイズでお会いしましょう!

/FIKA

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