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【BoltingTIPS】並目と細目で何が変わるの?

21 2月 2018
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テキスト: 岡田 圭佑  文章監修:竹中 正人

ねじの並目と細目では
何が変わるの?

※本記事は2月22日配信の無料メールマガジン「BOLTEDジャーナル」にてご紹介したものです。メールマガジンのご登録はこちらから。

 

ねじピッチにも規格化された違いがある

並目と細目。恐らく多くの方はねじピッチにこの2種類があることはご存知かと思います。細目ねじ

とは、一般的な並目ねじに比べてピッチ(ねじ山頂上間の距離)が狭いものを言います。一般的に

ねじやボルトは並目ねじが広く普及しており、発注時にも特に指定が無ければ並目ねじがお手元に

届くでしょう。ですが、業種が変わると常識も変わります。代表的なところでは自動車業界となり

ますが、自動車業界では「ねじ」と言えば細目ねじを指します。

 

ねじの並目・細目のピッチは国際的に規格化されており、英語ではCoarse thread(並目ねじ)、Fine

thread(細目ねじ)と呼ばれ、原則的には万国共通の区分です。ところが実際には、ねじピッチを

規定したISO 724: 1993(ISO general-purpose metric screw threads-Basic dimensions)には

並目・細目の区分は定められていません。ここでは単にねじの呼び径ごとのピッチが複数規格化され

ており、規格化されたピッチは並目・細目といった2種ではないサイズも多くあります。例えばM8

では並目ピッチが1.25、細目ピッチが1とされている場合が多いようですが、M8x0.75、つまり

ピッチが0.75のものも規格として存在します。

 

このISO724に対応する形で、日本国内ではJIS B 0205(旧規格:1997および1982/新規格:

2001)が定められています。ところがこのJIS規格の中ではその呼び径に定められたピッチで最大の

ものが「並目」、それ以下のものが「細目」として区分されています。

例えば先ほどのM8であれば最大ピッチ1.25が並目となり、ピッチ1と0.75が細目というわけですね。

この場合のピッチ0.75を「極細目」と呼ぶ方もいらっしゃいますが、これは毎回M8×0.75と説明する

時間と労力を省いて効率化する目的で、便宜上そのような通称が用いられるようになったのではない

かと言われています。

 

ノルトロックはピッチが変わっても使えるか

ノルトロックワッシャーの使用可否を考える際、ねじピッチが影響して来るのは2枚組内側となる

カム面(大きい方のギザギザがある面です)の角度です。ねじピッチが小さくなると、ねじ山の角度

は60°と規格で定められているため水平を基準としたねじ部の傾斜角(リード角)が小さくなって

行きます。

 

ノルトロックワッシャーの機構を見てみると、上図のように、ノルトロックワッシャーのウェッジ

ロック機構はカム山の角度(∠α)がねじのリード角(∠β)よりも大きくなっているために緩み方向

の力が加わるとカム面同士がスライドする(一方のカムが他方のカム山を登って行く形となる)こと

でワッシャーの厚みが増し、結果として緩もうとすることで逆に軸力が増加してセルフロック機能が

働く仕組みです。そのため、ねじピッチが小さな細目ねじに使用した場合も前提となる、∠αが∠β

より大きい、という条件は崩れません。つまり細目ねじや極細目ねじでもノルトロックは問題なく

機能します。逆に木ねじのようなねじピッチが並目よりも大きなねじは、∠αが∠βよりも小さく

なってしまうため、ノルトロックのウェッジロック機構は機能しないことになります。

 

並目を使うべきか細目にすべきか

もしこの記事を読まれているあなたが、設計上並目と細目のどちらを使うべきか迷われているなら、

ピッチの違いによるねじ底間の距離の差がキーポイントになるかも知れません(下図)。

原則として、ねじ山の角度はピッチに関わりなく60°になっているため(英国ウィット規格のみ

55°)ねじピッチが細目になると(ねじ山頂上間の距離が狭まると)、ねじ谷は浅くなります。ねじ

谷が浅くなると「くびれ」が小さくなる分、ねじ底間の距離は長くなり、有効断面積も大きくなり

ます。

また、細目でねじ谷が浅くなると、おねじ・めねじの引っかかり部も小さくなります。しかしねじ山

は1つだけではありません。同サイズの並目ねじと細目ねじを比較した場合、細目ねじは引っかかり

部は小さいものの、ねじ山の数という点では並目よりも多くなります。これらの因子を総合すると、

引っかかり部の断面径のトータルを比較した時、あまり大差のない結果となります。ねじ部の接触

面積を比較すると、細目の方が僅かに接触面積が大きくなる傾向があるものの、その差は僅かなもの

で、接触面積の観点からも大きな差は無いと言えます。

 

設計時の具体例として、ねじ山の破壊強度に配慮する目的で、ねじピッチによる破壊強度の違いが

あるか否かを考える場合、主要な因子としておねじ側・めねじ側の材料が同じなら、ねじ山の引っ

かかり部断面の径を基準にすることができます。締結体設計では原則として、めねじに破壊が起こる

前におねじ側が破断するよう設計しますが、ねじ引っかかり部断面の径をトータルして比較すると

大きな差が無いため、どうやらピッチは課題解決の決め手にはならないようだ、と考えることができ

ます。

また、ボルトの静的破断に配慮する場合は通常、有効断面積が大きな方が有利になります。この有効

断面積の観点からは、並目よりも細目の方が静的破断への強度は高いと言えます。

 

疲労強度を考えたい場合はどうでしょうか。有効断面積が大きいという点から、外力が発生した際に

細目の方がそれを受ける面積は大きくなります。荷重を受ける面積が大きければ大きいほど、単位

面積当たりの応力は小さくなりますので、繰返しかかる応力振幅に対する疲労限度という点で、細目

ねじの方が並目ねじよりも有利に思えます。ところが、疲労強度に大きな影響を及ぼす因子として、

応力集中係数と切欠き係数も無視できない観点です。一般的には、呼び径が同じ場合にはピッチが

小さいほど応力集中係数も大きくなり、疲労限度が低下する傾向にあるようです。単純に有効断面積

の差を比較した場合は細目の方が有利に思えるものの、切欠きが連続するボルトの疲労強度はピッチ

だけでなく、材料や呼び径、荷重形態、応力集中係数等の様々な影響も考慮する必要があり、その

要件は複雑さを極めます。少し観点やアプローチを変えると結論が正反対になるケースも多く、

研究者の間で意見が分かれることも珍しくありません。疲労破壊自体が極めて奥深い分野ではあり

ますが、恐らくこの疲労強度とねじピッチの関係は、ねじに関わるトピックの中でも最も難しい部類

に入るのではないでしょうか。

ただ一つ言えることは、疲労破壊に配慮したい場合、材料力学的な観点から結論を導くことに苦心

するよりも、その締結体の軸力を確実に保持して外力がボルト軸に直接伝わる状態となることを

避け、疲労破壊リスクを抑制することをご推奨します。軸力保持については観点が明確で、それに

よって疲労破壊リスクが低減できることも明確だからです。

 

そしてねじのピッチは、ボルトの呼び径が大きくなるに連れて細目に近付いて行くことも知って

おいた方が良いでしょう。ISOおよびJIS規格ではM64から並目ピッチが6になりますが、呼び径が

それ以上、例えばM120になっても並目はピッチ6のままです。一部、8というピッチも規格には存在

しますが、経験上殆どの場合ピッチはボルトの呼び径に関わらず、6が最大です。ボルト径が大きく

なってもピッチが変わらなければ、当然リード角は小さくなり、相対的にピッチは細目になって行き

ます。ピッチが小さくなると並目よりも回転数が増える分、摩擦面が増加し、結果として「かじり」

「焼き付き」が起こりやすくなってしまいます。私たちが大径ボルトの締結で「スーパーボルト」や

ボルタイト」等の「テンショニング」による締結を推奨する理由の一つは、この点です。特に回転

機械や発電設備等では日常的にこの問題について対策を考えられているため、ヒーティング(焼き

締め)の冷却時間のような待機時間が発生しない点を考えても良いソリューションと言えます。

そして弊社のスーパーボルトやボルタイトでは締結作業がより簡単になるため、多くの場合で大径

ボルト締結時によく問題となっているクレーンを使用する必要がなくなることも大きなメリットと

なるでしょう。

 

ここまでピッチの違いによる影響についてお話してきましたが、現実では設計観点からのねじの機能

だけでなく、他の観点からの評価も必要です。そう。コストの観点、それに深く紐づく現場作業の

観点です。一般的に細目ねじは流通量で並目ねじに劣るため、一本当たりの単価は並目よりもやや

高価になってしまう傾向があります。また、細目の主なメリットである小さなリード角に起因する

緩みにくさも、締付作業時の作業時間という点では裏腹にデメリットとなってしまいます。現在では

多くの業界で、コスト最適化の観点からメンテナンスの作業時間短縮が課題となっており、緻密に

コスト管理を行えば行うほど、このデメリットは大きく感じられるでしょう。

 

実際の設計ではピッチの差による耐力への影響だけでなく、例えば被締結材側の特徴や温度などの

環境因子も含め、ボルト締結体の設計では極めて多岐に渡る検討事項を漏れなく複合的に検討する

必要があります。こうして設計されたボルト締結体の評価として、ドイツ技術者協会が定めた

Verein Deutscher Ingenieure、即ちVDI 2230というものがあります。ねじ締結設計のガイドライン

となるべきもので、この考え方に基づいた計算によってボルト締結体を評価します。しかしこの

VDI 2230の計算は大変に複雑で難しく、手計算で行うのは相当な時間を費やす必要がある上、計算

にミスが無いか検算することも考えると決して簡単ではありません。そこでノルトロックジャパン

では、欧州の第三者機関が提供するVDI 2230の自動計算ソフトウェアを用いてお客様の締結体設計

評価をお手伝いすることができます。本稿のようにピッチの違いによる影響を検証したり、コスト

削減の一環で高価な締結部材を安価なものに入れ替えた時に安全性にどう影響するか等を計算に

よって評価し、エンジニアチームがその対策をご提案しています。

 

細目ねじの特徴まとめ

<細目のメリット>
並目ねじよりも緩みにくい
→リード角(ノルトロック機構図中の∠β)が小さい分、緩みにくい。

ピッチが小さいため、緻密な締付作業が行える
→同じ角度回しても、ピッチが小さい方が軸方向に進む距離が短い。

薄板など嵌合部が短い締結時に有利
→ピッチが小さい分、単純に嵌め合い長さを多く取ることができる。

並目ねじと比較して締付トルクが小さい
→ねじのリード角を坂道に例えた場合、細目の方がなだらかな上り坂となる。上る時の力(回転させる力=トルク)も小さくなり、緩める際のトルクも同様に小さくなる。反面、多くの回転数が求められるために長くなる作業時間も併せて検討することを推奨。

並目ねじよりも有効径が大きいため静的破断強度に優れ、せん断荷重への強度にも勝る
→ピッチが小さくなるとねじ谷が浅くなる分、有効径が大きくなり、耐力も向上する。

 

<細目ねじのデメリット>
●締付作業時間が長くなる
→メリットで述べた通り、トルクは低くなるが、より多く回転させる必要がある。

●並目と比較して異物の混入・凝着を起こしやすい
→ピッチが細かくより多くの回転を要するため、嵌合による微細な傷や異物が付きやすい。

●並目よりかじり・焼き付きの発生リスクが高い
→より多くの回転を要し、摩擦面が大きくなるため。特に細目ではなくても大径ボルトの場合は相対的にピッチが狭くなり(細目に寄って行く)、かじり・焼き付きが問題となりやすい。

●一般的には細目の方が疲労限度が小さくなる
→ねじ谷底の応力集中係数を基準に考える場合、ピッチが小さい方が応力集中係数が高い。
※例外あり。また、この一般論に対しても諸説あり。検証が必要である場合は先述のVDI2230の締結体評価計算によってサポートを行うことも可能です。

 

ボルト締結に関するご相談・ご質問がありましたら、いつでも下記までお問合せください。ノルトロックのエキスパートがお客様の課題を共に解決するお手伝いをいたします。

 

お問合せ✉:nlj@nord-lock-jp.com

 

 

文章監修:竹中 正人(ノルトロックジャパン アプリケーション・エンジニア)

特に材料への造詣が深く、困難な締結課題にも臆せず立ち向かう探求心で多くのお客様より信頼を得る。超音波による軸力測定、油圧テンショニングにも精通し、VDI 2230の研究にも余念がない。日本ねじ研究協会における研究委員会のメンバーでもある。

 


 

quizz

BOLTEDクイズ(BOLTEDジャーナル #.026)解答

今回のクイズは上の「並目と細目で何が変わるか」からの出題。

Q:ねじが細目になる、つまりピッチが狭くなって来ると、ねじ谷が浅くなる分だけ有効断面積が広くなりますよね。ピッチの違いによるボルトの性質はこの点にほぼ集約されて来るのですが、細目ねじの利点を説明した次の分のうち間違っているものはどれでしょうか?

この手のお話は本当、面白いですよね!

 

A:下の選択肢から間違った説明を選んでくださいね。

① 有効断面積が広い分、静的破断強度が高い
② 有効断面積が広い分、最大引張強さが強い
③ 有効断面積が広い分、疲労強度が高い

今回のクイズは、正解することよりも一緒に考えていただきたいです!

 

 

 

答え:3

 

 

本文にもある通り、一般的には並目よりも細目の方が疲労強度は低いとされています。でもこれは

あくまで一般論のお話。イメージしてみると、有効断面積が大きいということは「繰り返し応力を

受ける面積も大きいので疲労強度も増すのでは?」と思いませんか?私もこの答えはすごく意外で

たくさんの文献を読んでみましたが、一般論ではやはり並目の方が疲労強度が強いようです。実際

には並目でも細目でも、圧力側フランクの面積自体に大差はなく、どちらかと言えばやはり応力集中

係数と切欠き係数によってこの答えが導かれているようですが。私にはまだ難しいです…

私も社内のエンジニアにたくさん教えてもらって、もっとレベルアップできるようがんばります!

 

/FIKA

 

 

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