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完璧なボルト締結を目指す

【技術特集】設備機器可動部の摩耗

13 9月 2017
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テキスト: ニック・タウンセンド

写真: ノルトロックグループ イラスト: ダン・ハンベ

あらゆる工場内設備や建機において、可動部のピン穴に起こる磨耗の肉盛補修や ブッシュ交換は、当然のメンテナンスと考えられて来た。しかし、それは本当に避けられないのか?エクスパンダー・システムがこれまでの常識を、覆す。

機器可動部から
摩耗が無くなる日

※本記事はBOLTEDマガジン 2017年第2号に掲載されたものです

 

可動部を備えたあらゆる設備機器は、いつかピン穴やブッシ ュの磨耗によるリペア作業が必 要と

なります。最もよく見られるのは大きな荷重や振動に晒される建機や掘削機、製にもクレーン、風力

タービン、プレス機、工場設備等あらゆる可動部で摩耗は起こります。場合によっては同じ可動部で

ピン穴の補修やブッシュ交換を何度も行っているということもあるでしょう。過酷な環境になれば

なるほど補修サイクルは短くなります。また、ピン穴やブッシュが摩耗すると稼動部にガタつきが

生じ、正確な作業が難しくなります。なぜ従来品のピンでは、ピン穴やブッシュの磨耗が避けられ

ないのか?そこには、以下の3つの理由が挙げられます。

 

  1. 一般的に、ピンはラグ部(ピン穴)よりも硬い材質で作られているため、ピンが穴の中でピン穴に繰り返し当たると、変形してしまいます。
  2. ピン穴の中では応力集中が起こります。ピンを通す穴径には、ピンを確実に挿入するための僅かなクリアランスがあり、これが「遊び」となってしまいます。そのためピンが荷重を受けると、ピン穴内部の応力方向にあたる部分にピンが衝突し、全応力を受けることになります。
  3. 可動部が逆方向へ動いた時には、先述の遊びのために先程の対角部分に、ピンが全応力そのままの力で打ち付けられます。

 

ピン穴が磨耗・変形した場合に最も一般的なリペア作業は、肉盛と研磨での穴加工です。初めに

可動部からピンを取り外し、穴加工用のドリルや溶接棒等必要な設備を準備します。次に、磨耗した

ピン穴が真円になるよう穴を削り、肉盛した後、最終的に必要な径になるよう正確に加工・調整

します。穴加工設備を除去し、施工部を塗装し直してやっと、新しいピンを取り付けることができ

ます。ピン径や長さ、作業工程、そして依頼先の混み具合によっては1ヶ月程かかることもあり、

設備機器が使用できないこの期間は、大きな機会損失となってしまいます。

 

ピンの代金以外にも施工費や運搬費、そして多額の機会損失を生むにも関わらず、このコストと時間

は「仕方のないこと」とされています。エクスパンダー・システム研究開発部門のエンジニア、

ジョニー・ワイバーグはこれまで多くのお客様の話を伺っています。「ピン穴の摩耗を抱える誰もが

皆やっていることだから、当たり前になってしまっているんです。当たり前なので、当然お客様の方

では他の解決方法を探そうという発想にも繋がりにくいんですね。」

一方で、技術者達はもっと良い方法があるはずだと研究を重ねて来たものの、どんな環境・条件下

でも効果を発揮する解決策の発見には至りませんでした。選択肢の一つとしてピン穴の隙間を最小限

に抑えるよう、僅かに径の太いピンを用いて応力をできるだけ分散させるという方法があります。

しかし当然、ピンが穴に入りにくく、特殊品なのでピン自体のコストも上がってしまいます。

それでもピン穴内の遊びをゼロにはできず、行く行くはピン穴も摩耗してしまいます。

温度を利用し、凍結して収縮させたピンを取り付け後に加熱して膨張させ、ピン穴内の隙間を埋める

方法も考案されていますが、作業コストが跳ね上がるだけでなく、一旦取り付けると外せなくなって

しまうためメンテナンスが行えません。技術的にも、ピン穴内の公差は数十ミクロン単位の公差

グレード6に収める必要があり、熱による収縮・膨張はここまでの精度で管理することは困難です。

硬度の高いブッシュを使用することで改善を図るという方法もありますが、それでも摩耗を遅らせる

以上の効果は望めず、結局は消耗品として何度もブッシュを交換せざるを得ない点は変わりません。

 

これらの方法ではピン穴やブッシュの摩耗による高い維持費とダウンタイム(稼働停止期間)の発生

を無くすことはできません。ところが、エクスパンダー・シス ムならこの問題を完全に解決し得る

のです。エクスパンダーは両端がテーパー形状になったピンで、その両端にスリットの入った拡張

スリーブが付いています。エクスパンダーを取り付けると、拡張スリーブはピンの軸を太らせるよう

に拡張し、ピン穴内の隙間を完全に埋めてしまいます。

エクスパンダー・システムの拡張スリーブがピン穴の中で広がると、応力は全体に分散され、摩耗

だけでなく可動部のガタつきも解決できます。また、摩耗を防止できるということは、外部に依頼

して高コストな肉盛等の補修作業を行う必要がなくなり、ピン穴のリペア費用とダウンタイムの機会

損失を無くしてしまうことを意味します。エクスパンダー・システムの取付は、誰でも現場で簡単に

行えますが、最も時間のかかる工程が元のピンの取外しです。しかしこれは、旧来の肉盛等の穴加工

を行う補修作業でも必要な工程です。直近の事例で、スウェーデンのエクスパンダー・システムに

φ70mmのピ ンにてエクスパンダーと従来品のピンとでコスト比較を行って欲しいという依頼があり

ました。部材コストやダウンタイムの機会損失を考慮すると、エクスパンダー・システムのトータル

コストは約500ユーロ(6万5千円)と見積もられました。対して従来品のピンは、部材コストだけを

見ればエクスパンダー・システムの約3分の1程度でしたが、取付・取外しのコストが同等と考えても

穴加工に要する時間、溶接やドリル作業のコスト、そして何倍ものダウンタイムによる機会損失額を

含めたトータルコストは、計2,300ユーロ(30万円)を超えてしまいました。

 

エクスパンダー・システムの採用時、ドリルでの穴加工は完全には無くせないかも知れません。

しかし肉盛溶接を不要なものとすることはできます。その建機や工場内設備の一生涯に渡って付き

まとうピン穴の摩耗という問題は完全に解決されます。従来品のピンでは摩耗の問題は避けられず、

繰り返し補修作業を行い、ダウンタイムの損失額を含めたコストを支払い続けることになります。

一般論での試算では、建機や工場内設備はその製品寿命の中で3~4回、または3,000から4,000時間

ごとに、この補修作業を要します。理論上は、手元にある全ての設備機器で、ピン1本当たり数千

ユーロ(数十万円)単位での維持費削減が実現される計算となります。

 


 

使い古した釘から得た アイデアが
大臣賞を受賞するまでのシンデレラ ストーリー

1950年代のス ウェーデン。双子であるエヴァースとゲルハルトのスヴェンソン兄弟は、スウェーデンで道路工事の事業を営む中、繰り返されるピン穴の磨耗による修繕費とダウンタイムによる機会損失の発生に辟易していた。

ある日、またしてもピン穴の磨耗によっ て可動部がガタついているのに気付いたエヴァースは、業を煮やしてピンをラグに固定するため、錆びた使い古しの釘をピン穴に打ち込んだ。応急対応的な解決策ではあったものの、ピン穴の隙間に釘を打ち込んで「隙間を埋める」というアイデアは彼自身も驚く程の効果を上げた。これがエクスパンダー・システム開発の契機となり、以降長年に渡ってスヴェンソン兄弟は自らの重機にエクスパンダー・システムを使用して道路工事の事業を続けたが、エヴァースの息子であるロジャーがこのアイデアに秘められた可能性に気付き、製品技術の特許を取得してエクスパンダー・システムAB社を設立したのは1986年のことだった。翌1987年、エクスパンダー・システムは、スウェーデンの産業大臣(現 産業・技術革新大臣)より、アルフレッド・ノーベル記念革新技術開発賞を受賞。

現在、エクスパンダー・システムは世界中で何百万もの設備機器可動部に採用されるグローバルブランドとなり、ノルトロックグループで更なる品質向上と飛躍を目指している。

 

Getting over 6,000 extra operating hours

可動部のピン穴に起こる摩耗はどんな設備機器にも起こるよくある問題で、設備機器ユーザーは長年に渡って多額の修繕費と、何よりダウンタイムの機会損失を支払い続けて来ました。この点こそが、エクスパン ダー・システムがピリオドを打たんとするところです。

エクスパンダー・システムは、従来品のピンよりも購入単価は高くなってしまいます。ですが、ピン穴の補修作業である肉盛溶接やドリルでの研磨作業等によるコスト、ダウンタイムをトータルに考慮すると、エクスパンダー・システムは相当量のコストを削減できます。では、どれだけのコストが削減できるのか?それは勿論ケースバイケースではありますが、ピン穴の磨耗が頻繁に起こるような過酷な環境下ではダウンタイムコストが上昇するため、より大きなコスト削減が期待できます。

スウェーデンの建機メーカーであるマスキニアAB社ではかつて、補修作業によるダウンタイムが看過できない程利益を圧迫していました。そのため、1999年からエクスパンダー・システムを採用しています。

先日、3,700時間の運転後、1台の掘削機が補修作業のために運搬されて来ました。摩耗による補修を要していたブーム取付軸部分は、旧来の肉盛溶接等の穴加工を伴う作業を行った場合は最短で3、4日を要する作業であったものの、エクスパンダー・システムによってピン交換がたったの6時間で完了しています。

マスキニアAB社のアフターサービス・マネージャーであるラーズ・マルメン氏は、同社の純製部品に指定されているエクスパンダーを下記のように評しています。「従来品のピンより高価ではあるものの、寿命が3,700時間とされる従来品の修繕時間とそのダウンタイムの損失額を考慮すれば、エクスパンダー・システムに確実にアドバンテージがあります。しかもエクスパンダー・システムには10年間の製品保証まで付いています。少なくとも10,000時間は何の問題もなく運転が続けられると考えていますよ。」

 

エクスパンダー・システムをもっと詳しく

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