BOLTED

完璧なボルト締結を目指す

【エキスパート】疲労強度向上のための考察

1 2月 2018
comment

テキスト: ズハイール・チャイブ

※本記事はBOLTEDマガジン 2015年第2号に掲載されたものです

 

Q: ボルト締結体の疲労強度向上のために、どのような点に注意すべきでしょうか?

 

A: ボルト締結体の疲労強度は、その静的強度と比較すると非常に小さなものです。疲労強度向上の

ために設計者ができることとして、ねじ部の強度向上、そしてねじ部にかかる応力の軽減があります。

まずねじ部の強度向上という点ですが、これは切削ねじではなく転造ねじの使用をお勧めします。

また、ねじ部への応力軽減という点については、ボルト径を上げて少数のボルトで締結するのでは

なく、ボルト径を下げてボルト本数を増やしてください。これによってボルトの本数分、応力が

分散されるためです。

 

ボルト締結体の疲労強度は、スーパーボルトやフレックスナットのような、ねじ部への応力を分散し、

締結部に弾性を与える事のできる締結部材を使用することでも向上できます。疲労限度向上のために

最善の方法は、ねじ部のどこか特定の地点への応力集中を避けることです。これには主に3通りの方法

があります。応力集中を設計レベルで避ける方法、締結作業レベルで避ける方法、そして締結体に

緩みが発生することを避けることで応力集中を避ける方法です。

設計レベルでは、ボルト締結部の応力分散や、締結体への外力を軽減するよう配慮することで疲労強度

の向上に繋がります。これにはちょっとしたコツがありますので、以下を覚えておいてください。

 

  1. 軸力を可能な限り高く設定する
  2. できるだけボルト径を小さく、ボルト本数を多くして、応力を分散させる
  3. 締結部材の相手材への接地面積を可能な限り大きくする
  4. ボルトの締結長さを可能な限り長くする
  5. 可能な限り常に、かかる外力以上の軸力を保持する

 

設計レベルでの疲労強度向上策には、他にも金属のなじみ、クリープ、熱による膨張収縮サイクル等

による非回転緩みに対抗できる弾性部材(ノルトロックXシリーズワッシャー等)の使用等があり

ます。締結作業に関しては、必要な軸力を確実に得ることが最も重要です。締結体が十分な軸力を

保持して相手材と固定されている限り、応力は1点に集中することなく分散されて行くからです。

締結精度を確保するためには、校正済みの工具を使うことも大切です。また、得られる軸力の精度を

向上するには、摩擦係数を低く抑えてバラつきを安定させるために各締結体に合った潤滑油を使用

することもお薦めいたします。これは勿論、ねじ部のかじり防止という点でも役立ちます。

摩擦係数のバラつきは、同じトルクで締結しても軸力がバラついてしまうことを意味します。望ましい

作業手順があってこそ、完璧なボルト締結が実現できるという点を常に忘れないでください。

 

最後に、締結部の軸力保持という点については、緩みからボルト締結体を守るという1点に尽きます。

先ほど潤滑油をお薦めしましたが、中には潤滑油を使用することで緩みやすくなるのではないか、

という懸念を抱く方もいるでしょう。当然です。しかし、締結体にかかる外力を軸力が上回っていれ

ば、つまり締結体が緩む環境に無ければ、潤滑油によって摩擦係数が下がっていても関係なく、緩み

が起こることはありません。発生し得る外力が想定し切れない場合は、ノルトロックワッシャーの

ように摩擦に左右されない機構を持った緩み止め製品を使用することで保険をかけることもできます。

(トルクと摩擦、軸力の関係については工学博士・酒井智次先生のインタビュー記事に詳細)

また、疲労耐性という点では締結体を疲労亀裂の原因となり得るサビ・腐食から保護することも重要

で、これは適正な材料やコーティングの選定によって担保できるでしょう。

 

エキスパートに訊く
ボルト締結の安全性についてお悩みはありませんか?
ノルトロックのエキスパートにご相談ください。
ご相談・ご質問は、experts@nord-lock.comにて承ります。

 


 

quizz

BOLTEDクイズ(BOLTEDジャーナル #.024)解答

 

Q:今回のクイズは「BoltingTIPS」で取り上げた、ボルトの破壊に関する問題です。今回のTIPSではいろいろな種類の破壊をご紹介しましたが、そのうち「静的破壊」への対策として正しいものはどれになるでしょうか?

A:下の選択肢から正解を選んでくださいね。

1.ボルトの強度区分を上げる
2.ボルトの強度区分を下げる
3.ボルトの緩みを解決する

分かるかな?( *´艸`)

 

答え:1

 

ボルトの「静的破壊」の原因は、想定していなかったような大きな外力(ボルトの最大引っ張り強さ

以上の外力)がボルトに伝わることでしたね。そのため設計レベルでは、これまで見落としていた

大きな外力は無かったか、その想定外の外力はどの程度の大きさなのかを把握する必要がありますが、

ボルトの強度区分を上げて(一般的な4.8のボルトなら8.8や10.9に)、ボルトの最大引っ張り強さを

向上させることが解決策になり得ますね。「3」で触れたように緩みが原因になるものは静的破壊

ではなく「疲労破壊」でした。わかったかな?

 

/FIKA

* All fields required. Email won't be shown.