軸力とは?なぜ軸力が重要なのか?
ノルトロックグループの締結ソリューションにおいて、重要な役割を担っているのが、ボルト締結部に適切な「軸力」を与えることです。では、「軸力」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。ボルトを使用する箇所に適した軸力は、どのように決定すればよいのでしょう。そして、ボルト締結部に適切な軸力を確保することが、なぜ重要なのでしょうか。ここでは、これらの疑問について詳しく解説します。
この考え方は、Superbolt®マルチジャックボルトテンショナーとBoltight®油圧テンショナーの設計の中核を成すものです。どちらの製品も、ボルト締結部に適切な軸力を確実に与えることを目的としています。
では、ここでいう「適切な軸力」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。その意味を、詳しく見ていきましょう。
軸力とは?
「軸力」とは何かを説明する前に、まずはボルト締結部に作用する、その他の荷重について整理してみましょう。まず一つ目が、外力です。これは、装置や機器が稼働することでボルト締結部に作用する力で、締結部を引き離そうとする方向に働きます。確実に締結するためには、この外力に負けないだけの力を締結部に確保する必要があります。次に、締結力です。締結力は、軸力によって締結部に生じる力で、外力に対抗する役割を果たします。簡単に言えば、締結部材間をしっかりと押し付け、密着させておくための力です。そして、軸力
とは、テンショナー(MJTまたは油圧テンショナー)によってスタッドボルトに与えられる引張力のことです。この力によってスタッドボルトが伸び、その反力として締結部に締結力が生じます。この締結力が外力に対抗することで、締結状態が維持されます。油圧テンショナーを使用する場合は、まずボルトを伸ばすために予荷重を加えます。その後、テンショナーの圧力を解放すると、伸ばされたボルトが元に戻ろうとすることで、締結部に残留軸力が残ります。この残留軸力が、締結後にボルトに作用している実際の軸力となり、締結部に締結力を生み出します。なお、予荷重は、テンショナーの圧力を解放した後に残る残留軸力よりも常に大きくなります。

これらの定義に基づくと、ボルト締結における軸力は、締結部にかかるワーキングロードを常に上回っていなければなりません。この条件が満たされていれば、使用中に外部荷重が加わっても、締結部に新たな負荷はかからず、確実なボルト締結状態を維持できます。
この考え方を分かりやすく説明するため、ノルトロックグループでは、ばね(スプリング)を用いた例を紹介しています。魚用のはかりに似た仕組みをイメージしてください。まず、はかりに150ポンドの荷重をかけ、その状態で木片を差し込み、150ポンドの軸力を与えます。木片が入っている状態では、図に示すように100ポンド程度の荷重が加わっても、木片は外れず、ばねにも追加の荷重はかかりません。ところが、荷重が151ポンドに達すると、木片が外れ、ばねには再び追加の荷重がかかり始めます。ボルト締結部でも同じように断続的に荷重がかかる状態になると、疲労破壊が発生しやすくなります。こうした疲労を防ぐことが、信頼性の高いボルト締結を実現するうえで重要なポイントとなります。

軸力はどのように決まるのか
用途に応じた適切な軸力量を決めるのは、必ずしも簡単ではありません。対象となる箇所の外力が分かっている場合は、その値に1.3〜1.5程度の安全率を掛けることで、必要軸力を算出することができます。外力が不明な場合や、従来の締結方法でどれだけの軸力が与えられていたか分からない場合にはどうすればよいのでしょうか。このような場合でも、通常は従来の締結方法に関する資料が残っていることが多く、その情報をもとに軸力値を算出することができます。ここでは、軸力値を算出する代表的な方法をいくつかご紹介します。
トルクトルクによる締付けは、テンショニング法を取り入れるより前、お客様がボルトを締め付ける際に、最も一般的に用いられる方法です。通常、装置のOEMから推奨トルク値が提示されていますが、実際の施工現場においてそのトルク通りに適切にトルク管理できるとは限りません。トルク値から軸力を算出する方法は主に2通りあります。どちらの方法を用いるかは使用する潤滑剤によって決まるため、どの潤滑剤が使用されているかを把握することが非常に重要です。使用している潤滑剤が特定できれば、その技術データシート(TDS)を確認します。TDSには通常、K係数(トルク係数)または摩擦係数(μ)のいずれかが記載されており、この値に基づいて、以下のいずれかの式を用いて軸力を算出します。

ロッド応力用途によっては、ボルト応力の必要値が指定されている場合もあります。これは、軸力を加えた結果として、スタッドボルトやボルトに生じるべき特定の応力値を示すものです。ボルト応力が指定されている場合には、次の式を用いて軸力を算出します。
スタッドボルト/ボルトの伸び量ボルトやスタッドの伸び量を指定することで、必要な初期軸力を求めることもできます。この方法では、まず伸び量からボルト応力を算出し、その値を使って軸力を求めます。最も単純な考え方としては、スタッドを一様な断面を持つ連続体として扱います。ただし、実際の形状が複雑な場合には、伸び量の計算もそれに応じて複雑になります。この連続体モデルを用いる場合、まず有効締結長さを求める必要があります。有効締結長さとは、実際に引き伸ばされるスタッドの長さのことで、グリップ長さに加えて、両端のねじ結合部に対応する長さを加えたものです。基本的な有効長さの求め方を、以下の図と表にしめします。

締結部品の種類 |
各構成部品の有効長さの値 |
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六角ナット |
スタッド径 x 0.40 |
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ボルト頭部 |
スタッド径 x 0.50 |
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六角穴付きボルト |
スタッド径 x 0.40 |
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タップ穴 |
スタッド径 x 0.33 |
サイド1およびサイド2の長さが決定したら、それぞれをグリップ長さに加えることで、全体の有効長さを求めることができます。その後、以下の式を用いることで、必要な伸びを達成するためにスタッド/ボルトに必要なロッド応力(ボルト応力)を算出します。

適切な軸力が重要な理由
前述のとおり、軸力が外力を上回っていない場合、締結部に疲労が生じる可能性があります。一方、軸力が過大な場合も、締結部に悪影響を及ぼし、破損につながることがあります。
過大な軸力ボルト/スタッドが降伏または破断する可能性がある
締結箇所の構成部品に損傷を与える
応力腐食割れ(SCC)を助長する可能性がある
軸力不足振動による締結部の緩み
締結部品の疲労破壊
締結部の遊離
締結部のすべりによるせん断破壊
適切軸力より小径/少量の締結部品で対応できる
ダウンタイム(停止時間)を最小限とする
部品破損を防ぐ
最後に、ボルト締結部の軸力について、よくある誤解をいくつか紹介します。
- 締結部の総荷重は、外力と軸力を単純に合計したものではありません。適切に軸力が与えられている場合、運用中に両者の値がそのまま加算される形で荷重が作用することはほとんどありません。
- より高強度の材料を用いたボルトに、同じトルクまたは同じ軸力を与えても、締結部の疲労寿命が延びるとは限りません。むしろ高強度材は靭性が低くなる場合があり、より早期に破断に至る可能性があります。
- 最大限に大きな軸力が、常に最適とは限りません。過大な軸力は、別の問題を引き起こす可能性があります。
- ボルト径を大きくしたり、ボルトの本数を増やしたりすれば、必ずしもより安全で確実な締結になるとは限りません。適切に軸力を設計することで、必要に応じて、より少ない本数や小径ボルトで対応できる場合もあります。