The history of the bolt

ボルト。それは一見、モノを固定するためのとても単純な製品のように見えます。しかし、深く掘り下げてみると、取るに足りないように見えるボルトとねじの背景には、多くのドラマが積み重なった濃密な歴史がありました。ボルトの歴史は、そのまま人類の産業史と重なって来るのです。

ねじ/ボルトの起源

ボルトは、建築や機械設計で使用される最も一般的な、ありふれた部材です。電動歯ブラシや扉の蝶番のような小さなものから、ビルのコンクリート柱を固定する巨大なものまで、私たちの生活は見渡す限りねじ/ボルトで溢れているといっても過言ではありません。

でも、ボルトがいったいどこから来たのでしょう?

誰が発明したのでしょう?

不思議に思ったことはありませんか?

ねじの起源については、専門家の間で意見が分かれ、「諸説あり」の状態ではありますが、紀元前400年前という説が有力です。とは言え、現在のねじ/ボルトのように万能部材として機能するようになったのは150年前のことだと言われています。

フレデリック・E.グレーヴズ(Frederick E. Graves)氏は自身の論文「Nuts and bolts」の中で、締結部材として作用するボルトと、それに対応するナットは15世紀までしか遡ることができないと論じています。この結論の根拠は、ねじについて言及された最初の記録が15世紀初頭のものであるためです。

しかし同時に、グレーヴズ氏はボルトは15世紀までしか遡れないものの、ねじを切っていないボルトについては、「ドアを開け閉めするためのピボットや、かんぬきのためのバー、ロッドの溝に挿入するクサビとして」使用されていたローマ帝国の時代まで遡ることができるとも述べており、ローマ人が最初のねじを開発した際に、その最初のねじは青銅製または銀製であったことまで記されています。ねじ山は手作業で削られたか、ワイヤーを棒に巻き付けた上ではんだ付けする、という手法が取られていたようです。

いや、発明されたのはもっと昔だ、という説もあります。ボルトのエキスパートであるビル・エクルズ(Bill Eccles)博士の研究によると、アルキメデス(紀元前287~212年)がねじの原理を展開し、それを使って、水を汲み上げる装置を作ったというのです。しかし、ウォータースクリューはアルキメデスの時代よりも前にエジプトで考案されたとする説もあります。

それは木で造られたもので、灌漑工事や船底の汚水除去に使用されていました。「しかし多くの人が、ねじは、紀元前400年頃、タレントゥム出身のアルキュタス(ギリシャの哲学者)によって発明されたと考えており、往々にして、アルキュタスを力学の祖と呼び、プラトンと同時代の人と見なしています」と、エクルズ氏は自身のウェブサイトで述べています。このように、ねじ/ボルトの起源については多くの識者が様々な結論を発表しています。

用途という点に着目して、歴史をいくつかに分けてみましょう。
まず、揚水用の螺旋やワイン醸造のぶどう圧搾機。そして締結部材そのものとして使われていた紀元前400年頃まで遡る、約400年間使われていたねじ。
15世紀まで進むと、ヨハン・グーテンベルク(Johannes Gensfleisch zur Laden zum Gutenberg)が、自身の印刷機にねじ締結を使用しています。ねじ/ボルトの普及は、時計や甲冑などに用途が拡大するに従って勢いを増します。グレーヴズ氏によれば、15世紀末から16世紀初頭にかけてのレオナルド・ダ・ヴィンチのノートには、ねじ切り機のスケッチがいくつも描かれているようです。

このように諸説入り乱れる中でも、研究者の大半が同意するのは、ボルトナットの発展を加速させ、工学・建築分野の重要な部材として、その地位を確固たるものに押し上げたのは、産業革命だったという点です。

1905年のW.R.ウィルバー(W.R. Wilbur)による「History of the Nut and Bolt Industry in America」には、ねじ/ボルトを製造する最初の機械は1568年にフランスのベッソンによって作られた、と書かれており、後にそのベッソンは、旋盤で使用されるねじ切りゲージを世に広めました。1641年、イングランドのヒンドレー・オブ・ヨーク社がこのベッソンの装置を改良して販売し、更に広く普及することになります。

米国では、馬車博物館(the Carriage Museum of America)でボルトの歴史に関する文献を見ることができます。18世紀初頭に生産された車に取り付けられたナットは、後世のものより平たく角張っており、角を面取りして仕上げてありました。この時代のボルト・ナットの製造は、大変に骨の折れる厄介な作業でした。

当初、ボルト・ナットは手作業で作られていましたが、ほどなくして高まる需要に対応できなくなり、製造工程を抜本的に改革する必要に迫られました

そして、1760年の英国で、J&W・ワイアットがねじを大量生産するための製造プロセスを開発しました。

しかし、これによって大きな問題が発生しました。各企業が独自のボルト・ナットを製造したため、市場にはサイズやねじ山の角度などがバラバラの、汎用性というものが全くないねじが出回り、混沌とした状態に陥ってしまいました。機械メーカーにとっては非常に大きな問題です。

この混沌は半世紀以上も続き、1841年になってようやくジョセフ・ホイットワースが解決策を見つけ出しました。英国内の作業場を津々浦々まで渡り歩き、サンプルのねじを集めて長年研究した結果、遂にねじの大きさの標準化というアイデアが提案されたのです。ホイットワースの提案は、ねじ山の角度を55度に標準化し、インチ当たりのねじ山の数を、直径ごとに定義すべきであるというものでした。

その頃、アメリカでも同様の運動が起こります。アメリカではまず、そのホイットワースのねじを使うことにしました。1864年にはウィリアム・セラーズが、ねじ山の角度を60度にし、サイズに応じて様々なねじピッチにすることを提案しました。これが今日の米国並目ねじと細目ねじの規格となっています。英国規格よりも米国規格の方が優れていたのは、ねじの谷と山が平らであるという点でした。山と谷が丸みを帯びているウィットねじに比べて製造が容易だったのです。

しかし、こういうところがねじ/ボルトの奥深い点なのですが、こと動的アプリケーションに対しては、ねじ山が丸みを帯びていた方が疲労耐性が高まるため、ウィットねじの方が信頼性で分がありました。使用環境が変われば最適なボルト締結が大きく変わる、良い例ですね。

第一次世界大戦では各国間で使用するねじが統一されていなかったことが大きな障害となり、第二次世界大戦では、連合軍にとってさらに大きな問題となりました。1948年、英国、米国、カナダは、インチ法を使用するすべての国の規格としてユニファイねじを使用するという協定を結びました。これは1919年にドイツですでに開発されていたドイツ工業規格DINのメートルねじと同様の構造を有しており、ウィットねじの利点(疲労性能を改善する丸みのあるねじ谷)と、セラーねじの利点(60度のねじ山形角度と平らなねじ山)を組み合わせたものです。そして、ユニファイねじの方がねじ谷の径が大きいため、DINのメートルねじよりも有利であることがわかりました。これが、現在すべての工業国で採用されているISO規格のメートルねじへと繋がっていくのです。

この業界で働いている人なら、ここ数十年の間に、ボルトがかなり微調整されているのを見てきたはずです。「35年前にこの業界で働き始めたころ、ボルトの強度は、現在のようには十分に定義されていませんでした」とエクルズ氏は思い起こします。「強度区分規格の導入と、それに関係するISO規格のアップデートによって、ボルト強度とその特性を試験する方法について、定義がかなり明確になりました。」

今日では材料が精緻化・多様化されているため、ボルトの材料は鋼材から新たな他の材料へと変化し、変わりつつある業界のニーズに応えています。

過去20年の間に、ニッケル系合金が発展しました。このニッケル系合金は、ターボチャージャーやエンジンなどの、鋼材では対応が難しい高温環境でその性能を発揮できます。近年の研究では、アルミニウム、マグネシウム、チタンなどの軽金属製ボルトに注目が集まっています。

今日のボルト製造技術は、基本的な鋼材から手作りするしかなかった時代から、劇的な進歩を遂げました。緩みの問題においても、現在ではノルトロックがウェッジロッキング機構を開発したことで、摩擦に依存せずにボルトの緩みを防止することができるようになっています。ユーザー企業は、アプリケーションごとにカスタマイズされた、デルタプロテクトという特殊な表面処理が施された鉄製ワッシャー、またはステンレス製のワッシャーやホイールナット、更には作業性向上のためにノルトロックワッシャーとボルトが分離しないようなセムスタイプのコンビボルトを選ぶこともできます。

米国企業のスーパーボルトとスイス企業のP&S Vorspannsysteme AG(現在のノルトロックAG)の買収により、海洋産業や電力・発電産業、採掘業などの重工業で使用するボルト製品がノルトロックの製品群に加わり、ボルト締結における世界トップ企業へ大きく前進しました。更に2015年には現場での作業性を大幅に改善した進化形油圧テンショナーを展開する英国のボルタイト社を、2016年には建機・重機のアーム部に使用されるピボットピンをメンテナンスフリーにするエクスパンダー・システムをもつエクスパンダー社(スウェーデン)を傘下に迎え、ノルトロックグループは更に包括的に、総合的にボルト締結の課題をお客様と共に解決する真のパートナーへと進化しています。

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