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完璧なボルト締結を目指す

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【特集】ボルトができるまで

ボルトは数ある機械部品や建築資材の中でも最も基本的なものだ。身近であるが故、その生産工程に如何に複雑で高度な最新技術が取り入れられているのかを知る人は少ない。本誌読者の皆様には、生の材料から高品質で精緻なボルトがどのように生み出されるのかをこの機会に是非、知っていただきたい。

THE MAKING OF BOLTS

※本記事は、Boltedマガジン2018年第1号に掲載されたものです

 

ボ ルトには実に多くのサイズと種類があり、その形状も様々であるものの、その生産工程は概ね

共通している。コイル状の鉄線からスタートし、冷間鍛造による成形、硬度調整のための熱処理、

目的に応じた表面処理を施された後に箱詰めされ、出荷されるというステップを踏むのが一般的だ。

特殊なボルトを製造する場合は、更にこの上に必要に応じた工程が上乗せされて行く。

スウェーデン最大手ボルトメーカーの一角であるバルトン社はやはり、その生産工程を含めて

あらゆる面でボルト作りの深い知見を有している。「当社ではカタログ品と呼ばれる流れ品は作って

いません。お客様側のスペックに合わせたカスタム品だけを設計・製造しています。」

スウェーデン、ハルスタハンマーにあるバルトン社の製造工場でテクニカルマネージャーを務める

ヘンリク・オスカーソン氏にお話を伺った。「その締結部に最適なボルトを作るためには、その

ボルトがどこに使われるのかによって無数の選択肢から最適な製造方法をチョイスすべきだと当社は

考えています。」

 

コイル状になった鋼の鉄線を伸ばして必要な長さでカットした後、冷間鍛造で加工するという工程

から、ボルト作りはスタートする。鋼の強度区分はISO 898-1という国際標準で定められており、

全てのメーカーはこれを満たした材料を使用しなければならない。これを常温下で専用の鍛造機に

通し、求められる形にプレスして行く。冷間鍛造と温間および熱間鍛造は、基本的に材料を鍛造する

温度で分類され、常温のまま複数の金型で高圧プレスを行う方法を冷間鍛造と呼ぶ。冷間の場合、

被加工物が低温の硬い状態のまま加工するため、複数回の鍛造を必要とする。冷間鍛造の金型は、

公差何百分の1ミリという極めて高精度に作られた200に及ぶパーツで構成されており、その分

非常に高精度な加工が可能となる。金型さえできてしまえば、冷間鍛造は熱間鍛造よりも多くの量を

均一の品質で、高速で生産できる。

冷間鍛造単体では作れないような高度で複雑な形状のものは、旋盤やドリルによる切削工程が追加

されることもある。旋盤による加工では、ボルトを高速回転させ、デザインに応じた形状に切り出す

作業が行われる。ドリルはボルト自体に通し穴を空ける時等に用いられる。座金類が予め組み込まれ

たボルトもあるが、その組込作業もこの段階で行われる。

 

熱処理は全てのボルトに対して行われる定番の工程だ。材料の鋼の硬度を上げるため、ボルトは極度

の高温に晒される。一般に「ねじを切る」と呼ばれるねじ部の加工は、そのボルトが転造でも切削

でも、この熱処理の前段階、つまり材料がまだ柔らかい間に行われる。転造によるねじ加工は冷間

鍛造とよく似た工程で、ボルトを回転させながら金型でプレスしてねじ部を成形する。一方で切削に

よるねじ加工は、文字通り切削作業によってねじ部を形作る。

熱処理は材料である鋼の性質を変えて硬度を上げる目的で行われるため、ねじ部の加工は熱処理前に

行う方が遥かに効率が良い。ところが、このねじ部の加工を敢えて熱処理後に行うことで、ボルトの

疲労耐性を向上させることができる。バルトン社のオスカーソン氏に話を聞いてみよう。

「金属は熱処理時の加熱によって微妙に傷んだり、ヒートマークと呼ばれる一種のダメージを受ける

ことがあります。そのため、中には熱処理後のねじ加工を求めるお客様もいらっしゃいます。

エンジンに使うシリンダーボルトなんかはその最たる例ですね。硬度を上げた後の鋼を加工するので

コストはかなり上がってしまいますが、ねじ部の状態はそれだけ良くなります。」

その径の10倍以上の長さを持つ長尺のボルトを作る場合は、熱処理によって元のコイル状の鉄線のように軸が曲がってしまうことがあるため、軸をまっすぐに伸ばすという工程も必要になるという。

 

表面処理は、そのボルトがどこで使われるのか、ユーザーが何を求めるのか、という2点を基準に

決定される。最も多いのは耐食性の向上。電気亜鉛めっきが広く普及しているのは、このためだ。

ボルトを亜鉛溶液に浸して電流を流すと、亜鉛がボルトに凝着してコーティングされる。だが、問題

もある。電気亜鉛めっきではその作業内容上、ボルト内に水素が吸蔵される。このため水素脆化に

よる、いわゆる「遅れ破壊」のリスクが高まってしまうのだ。それを避ける別のオプションとして

は、亜鉛フレークコートがある。電気亜鉛めっきよりも更に耐食性が向上するが、電気亜鉛めっき

よりも高価だ。

 

耐食性を考慮する必要がない場合(エンジンの内部や常に油に接している締結部等)にコストダウン

を図りたいなら、フォスフェートやパーカーライジング等とも呼ばれるリン酸エステルによる表面

処理を行うという手もある。

標準品のボルトであれば、こうした表面処理の工程を経れば後は梱包され、出荷を待つばかりという

状態になるのだが、何かしらの取付金具等とセットになったボルトは、ここから更にアセンブリ工程

が付加されることになる。また、「パッチ」と呼ばれる処理が施されるものもある。接着剤を塗布

したりねじ部にナイロン層をコーティングして緩み止めにするものや、摩擦係数を低減するような

液状パッチをコーティングし、締付作業時に格段に低いトルクで必要軸力が得られるようにするもの

等が挙げられるだろう。

 

あなたの手元にある全てのボルトは、こういった一連のプロセスを全て完了して作り上げられた

ものだ。後はその品質が全ての箇所で一定しているか、他の製品と比較して均一な品質を持っている

かという品質検査を経てボルトは梱包されて行き、パーツを締結するという使命を果たすために

次々と顧客の下へと届けられて行くのである。

 

ボルトができるまで

1. 鋼の鉄線
ほどいて伸ばした後、必要な長さにカット。

2. 冷間鍛造
常温環境下で鍛造機により成形。

3. ボルトヘッド
冷間鍛造の工程内で、様々な金型に順次プレスされて行くことで成形される。

4. ねじ部
ねじを切る方法は、転造と切削の2通り。

5. 熱処理
硬度を調整するため、成形後に高温で熱処理を行う。

6. 表面処理
目的に応じて様々な処理方法がある。例えば耐食性向上を目的とするなら、亜鉛めっきが一般的。

7. 梱包・出荷
定められた水準を全箇所で満たしているかの品質検査を経てボルトは梱包され、出荷を待つ。

ボルト締結の第一人者が語る理想の締結

14 3月 2018
comment

テキスト: 岡田 圭佑

本誌BOLTEDマガジンは、日本のボルト締結の第一人者である工学博士、酒井智次氏にインタビューを行う貴重な機会を得た。酒井氏の著書「増補 ねじ締結概論(養賢堂)」はボルト締結のバイブルとして、その発刊当初から高く評価され、賞賛を集めている。

Voice Of Wisdom

※本記事は、Boltedマガジン2017年第1号に掲載されたものです

 

「ねじ締結概論」でも触れられている、酒井先生の考える理想の締結とはどのようなものでしょうか?
「一口で言ってしまうと、特殊なものでなく広く普及した汎用のねじ部品を用いること。そして、

これが問題なのですが、あらゆる不具合を起こさない、そういうねじ締結設計を行うことです。

たった一つの不具合でも起こってしまえば、それで全てダメになる。だから、あらゆることに目を

配っていなければいけないし、全てにおいて不具合を出さない、というのが理想です。「評価漏れが

ない」というのが、私が最も重要視するポイントです。」

 

ボルト締結体にとって、潤滑油の使用はメリットになりますか?

そうです。摩擦係数を小さくするということは、被締結体同士が滑りを起こさないという前提の下

で、あらゆる面において良いことです。しかし大前提として、緩みというものは被締結体同士がある

大きさ以上の滑りを繰り返した場合には「緩む環境」にあるから、摩擦係数が小さければ緩みやす

いし、摩擦係数が大きければ緩みにくい。

じゃあ、摩擦係数が小さいとすべて緩むのかと言われると、被締結体同士が滑っていない場合は

「緩む環境」にないですから、この場合は摩擦係数がいくら小さくても緩みやすいということは

ありません。

 

滑りの原因となる外力について、せん断方向、軸方向、そしてねじれという3つがありますが、
その辺りの お考えはいかがでしょうか?

外力がせん断方向であれば滑り、外力が軸方向であれば被締結材が離れてしまう遊離という現象が

起こってしまいますね。そういう状況では摩擦係数が小さいほど、明らかに緩みやすい。ねじれの

場合は、座面の摩擦係数がこの範囲に入った時に緩んでしまうというものがあるんですが、これは

複雑な相関関係があります ので摩擦係数の大小だけで一概には言え ません。

その滑りに関して、私の「ねじ締結概論」には古い考え方で書かれています。私の本では「マクロ

滑り」という座面のところで被締結体が滑ることを言っています。被締結体がこれだけ滑ると、座面

にも滑りが出てしまうという被締結体の座面に滑りを許さない限界滑り量という考え方なんですが、

これは目視で明らかに確認できる滑りです。0.1mmあれば目で見てわかりますか ら。ところが

1988年くらいから限界滑り量に達していなくても、目に見えないような小さな滑りが実はじわじわと

出ていて、緩み方向に回ったかどうかも目視できない程度の微小な回転を起こして、軸力が徐々に

なくなることがあるというのがわかって来た。その現象は「マイクロスリップ」ないしは「微小

滑り」と呼ばれています。微小滑りからの緩み、その発端になったのが1988年くらいに精密工学会誌

に載った論文でした。

 

例えば被締結体が接触しているとします。その接合面のこの地点でどれだけ滑りが起こっているか、

また別の地点でどれだけ滑りが起こっているか、従来の実験では不可能ですが、これが有限要素法

(FEM)というものであれば、全部計算できるんです。その有限要素法が2000年くらいから、ねじ

の分野にも適用されるようになって、それを用いた論文もたくさん出て来ました。今やねじの研究

は 殆ど有限要素法です。2006年に東大の泉聡志先生が書かれた論文を見ると、マクロスリップ

(目視できる明白な滑り)ではなく、マイクロスリップ(目に見えない微小滑り)が起こっていて

も、少しずつ緩み回転をし始めていると、そういう結果が出てるんですね。私も初めてそれを読んだ

時は非常にシ ョックでした。

 

その泉先生の論文を見ると、マイクロスリ ップと言われる微小滑りでも、繰り返されると微小な

緩み回転、例えば1000回で1度、1回あたり1/1000度ですが、そういう微小な緩み回転が起こって

いると。1/1000度なんて肉眼ではとても観測できません。しかし 有限要素法であれば、完璧に出る

んですね。有限要素法で見ると、実は微小滑りでも緩み回転は起こっているという論文が出て来た。

こりゃ参ったな!と思いましたよ(笑)。

私は微小滑りがフレッティング摩耗にはつながると勿論思ってたんですが、まさか回転緩みの原因に

なるとは、当時の実験では検証のしようがなかったので結果として見逃していました。新しい有限

要素法という、目に見えないものまでミクロン単位で計算できるものが開発されて、驚きましたね。

有限要素法はシミュレーションなので実証するのは大変ですが、ここのところは私も最近考え方を

変えなきゃいかんなと思っているところですね。

 

Facts: 微小滑り
被締結材間で発生する肉眼では確認できない微小な滑り。徐々に軸力損失が発生し、最終的には目に見える回転緩みに発展する。同様に、金属材料のなじみやリラクゼーション等の非回転緩みによっても軸力損失は発生する。

ノルトロックのXシリーズワッシャーは、世界で唯一、回転緩みと非回転緩みを同時に防止できる製品であり、通常のノルトロックワッシャ ー同様に回転緩みを防止しながら独自の皿ばね形状により、非回転緩みをも同時に防止する複合型ウェッジロッキング機構を備えている。

 

※本インタビューは「BOLTEDマガジン」グローバル版用に編集されたものです。酒井智次先生へのロングインタビューはこちらの記事で全文をご覧いただけます。

 

Facts: 酒井 智次先生

  • 1941年 ‒ 愛知県岡崎市生まれ
  • 1979年 ‒ トヨタ自動車勤務時に名古屋大学より工学博士の学位を授与され、主として各種自動車部品の強度・信頼性の試験・研究・開発に従事
  • 2001年 ‒ トヨタテクノサービスへ移籍。ねじに関する教育と技術相談に従事
  • 2007年 ‒同社を定年退職し、酒井ねじ締結相談室を開設。現在もねじ締結に関する教育と技術相談を続ける

【Bolting TIPS】かじり・焼き付きの「三段対処」

12 3月 2018
comment

テキスト: 岡田 圭佑  文章監修:竹中 正人

かじり・焼き付きを
起こさない「三段対処」

※本記事は3月22日配信の無料メールマガジン「BOLTEDジャーナル」にてご紹介の記事です。メールマガジンのご登録はこちらから。

 

かじり・焼き付きの根絶は不可能

本テーマについては過去にも一度、グローバル版の「BOLTEDマガジン」で取り上げたことがあり

ますが、私たちに寄せられるご相談の中でもこの問題はかなりの部分を占めます。かじり・焼き付き

発生のメカニズム自体は、インターネットで検索するだけでもすぐに見つかりますが、主な要因は

「摩擦」です。摩擦係数は潤滑油やコーティング等で抑えることはできますが、物理現象であるため

根本的な発生率をゼロにすることは不可能です。でもだからと言って、手をこまねいているわけにも

いきません。そこで今回は「三段対処」として、実際に現場で焼き付きが発生するまでの3ステップ

に分類してお話を薦めたいと思います。

 

特に締付・取外し作業時にボルトにトルクをかける際、ねじ部や座部に発生する摺動によって摩擦熱

が発生し、材料の熱膨張等によってボルト・ナットが全く動かない状態になってしまいます。その

ため、市場には潤滑と共にボルトを急激に冷却して収縮させ、取外しが行えるようにするという製品

もありますね。しかし、なぜそこまで摩擦熱が上がってしまうのでしょうか?1つは材料の性質で

ある熱伝導率と熱膨張率が挙げられますね。ステンレスのような合金は鉄(鋼)と比較して焼き付き

が起こりやすい傾向がありますが、これはステンレスの熱伝導率が鉄に比べて約1/3と低いこと、

対して熱膨張率が約2倍と大きいことが原因です。熱伝導率が低いため、界面で発生した摩擦熱を

逃がすことができず、熱膨張率が高いためおねじとめねじのクリアランスを埋めてしまうというわけ

です。また、ステンレスに代表される合金は鉄に比べて摩擦係数が高く(一般には2倍程度)、更に

摩擦係数のバラつき幅も鉄に比べて大きくなります。私たちがステンレスの締結に潤滑油の使用を

強く推奨するのはこのためで、正確な軸力管理が求められる重要な締結部では潤滑油、油分が使用

できない環境なら摩擦を低減するコーティングが施されたボルト・ナットを使用すれば、焼き付き

だけでなく軸力管理の観点でも、より確実な締結が行えます。

 

完全にフラットな金属面は無い

摩擦熱がこれほど問題となる原因、もう一つは「微小突起」です。例え研磨されていたとしても、

金属面はフラットに見えてもミクロの世界では無数の凹凸が残されています。何が言いたいかと

いうと、この微笑突起のために、摩擦が起こるのは「面」ではなく「点」になるということです。

そのため、ボルトの締付や取外しのトルクが加わった時、微小突起先端の「点」には大きな応力が

かかり、摩擦熱もそれだけ大きくなるということですね。これによって凝着が起こり、かじり・焼き

付きが発生します。この微小突起表面での「単位時間・単位面積当たりの発熱量(Qm)」は、

「微小突起部面圧Pm」「摩擦係数μ」「すべり速度V」が関係する下記の式で表されます。

 

 

上図のような微小突起は、ボルトの緩みを議論する際にも「金属なじみ」の原因となります。締結に

よる圧で被締結材の微小突起同士が潰され、その分被締結材の厚みが減少して行くことにより、軸力

の損失が起こるのです。この金属なじみは最も身近な非回転緩み(戻り回転を伴わない緩み/他にも

被締結材の塑性変形、塗装面の陥没、ガスケット等挿入材の痩せ、クリープ等がある)で、金属同士

の締結であればどんな条件下でも必ず発生します。

 

かじり・焼き付き発生の発生要因

ここまで触れて来たのは化学的見地からの焼き付き要因ですが、実際に現場ではボルトに何が起こっているのでしょうか?代表的な事例を下記にまとめてみました。

 

①摩擦係数による発熱量の増加

  • ねじ部やボルト・ナット座部の摩擦係数が高い(錆びや傷によっても摩擦係数は上昇)
  • 上記に関連して、ねじ部やボルト・ナット座部の潤滑が不十分または未潤滑

 

②座部面圧による発熱量増加

  • 加工精度の問題により、ねじ部やボルト・ナット座部などが片当たりとなり、実質的な接触面積が非常に小さくなる
  • 上記に関連して、切削ねじは転造ねじよりも表面に粗さや微細な傷が残るため、かじり・焼き付きが発生しやすい
  • 高軸力での締結(特に熱伝導率の低い材料で上記全ての要件を満たす場合)

 

③すべり速度による発熱量増加

  • インパクトレンチ等の電動または空圧工具で高速で締め付ける

 

④締付時エネルギー増大による発熱量増加

  • ねじ勘合部(グリップ長さ)が長い→摩擦が発生する面積が大きい
  • ボルトピッチが小さい(細目)またはM30以上の大径ボルトを使用している

※ねじピッチの違いによるボルトの機械的性質の変化についてはこちらの記事をご覧ください

 

かじり・焼き付きの「三段対処」

かじり・焼き付きの発生要因を整理したところで、実際の現場で「締付前」、「締付作業中」、「取外し時」の3つのタイミング別に対処法をまとめてみたいと思います。

 

▶ STEP 1:締付作業前(設計・資材調達)での焼き付き対策

  • ステンレスやチタン合金等の熱伝導率の低い材料のボルト・ナットを使用する場合、潤滑油を塗布できない現場ならコーティングが施されたものを使用する。
  • ボルト・ナットを再利用する場合も、潤滑油または潤滑効果のあるコーティングを施したものを使用して摩擦係数を抑える。再利用によるねじ部と座部の傷・錆びを最小限に抑制する。
  • 切削ねじではなく転造ねじを使用する(ナットは全て切削のためコーティングまたは潤滑を検討)。
  • 高精度な加工で製造されたボルト・ナットを使用する。加工精度によるボルト表面の粗さや微細な傷による焼き付きリスクを最小限に抑える。
  • 設計段階で高軸力の締結を極力避ける。ボルト本数を増やして各締結部当たりの軸力値を落とせば座部面圧に起因する焼き付き防止に効果が期待できる。高軸力締結を導入せざるを得ない場合も、フランジボルト等で単位面積当たりの圧を極力下げる。
  • 焼き付きの発生が想定される締結部では極力狭いピッチのボルトを使用しない。大径ボルトの場合は並目でピッチが6のものが多いが、呼び径が大きくなってもピッチが変わらなければ相対的にピッチが細くなる(細目に近付く)ため、可能ならより大きなピッチのボルトを使用するか、ボルト本数を増やして各ボルトの呼び径を小さくする。
  • 焼き付きの発生が想定される締結部では、必要以上に長いねじ嵌合部(グリップ長さ)を作らない。強度の問題等で対処が難しい場合は、上述の潤滑やコーティング、高精度な転造ねじの使用、締結軸力、座部の面圧、ねじピッチといった他の要因を排除してリスク管理を行う。
  • 大径の場合、そもそも締付をトルクに依存しない。スーパーボルトのように手工具で大径ボルトを締結できる機械式ボルトテンショナーや、ボルタイトのような油圧式ボルトテンショナーといったテンショニングによる締付に切り替える

 

▶ STEP 2:締付作業中(現場)の焼き付き対策

  • 締結部環境の温度帯や衛生要件が許せば、ステンレスやチタン等の合金製ボルト・ナットには潤滑油を塗布する。高温・低温環境下でも使用できたり、クリーンルーム対応の潤滑油等衛生要件に対応した製品もあり、設計部門と事前に調整・検証を行う。
  • 鉄粉等の粉塵や埃が多い環境では、締付作業時におねじ・めねじ両側のねじ部と座部の粉塵をエアダスター等で除去する。
  • 潤滑等で摩擦係数を低減できない環境では、極力インパクトレンチやナットランナー等の電動および空圧工具を使用しない。
  • 大径の場合、油圧トルクレンチでの締付を避ける。締付時の摩擦はボルト呼び径の3乗に比例して飛躍的に上昇するため、油圧による巨大な力でボルトを回転させるとそれだけ巨大な摩擦が発生する。油圧での締付と巨大な摩擦による大きなねじりストレスも発生するためボルト折損リスクも高まる。
  • STEP 1同様に、M30を超える場合や高精度な軸力管理が必要な締結部(M16以上である必要あり)は、トルクで締付を行わない。スーパーボルトのように手工具で大径ボルトを締結できる機械式ボルトテンショナーや、ボルタイトのような油圧式ボルトテンショナーといったテンショニングによる締付に切り替える。

 

▶ STEP 3:取外し作業(現場)における焼き付き対策

  • 基本的なことではあるものの、STEP 1同様に取外し作業時も潤滑油を使用する
  • 同様に、突出部のねじ部を含めて粉塵等の異物を取り除く
  • 潤滑等で摩擦を低減できない締結部では、電動または空圧工具の使用を控える
  • ねじ突出部が1D以上(ボルト径と同寸法)ある場合は、油圧トルクレンチを使用するのであれば油圧テンショナーに切り替える
  • それでも焼き付いてしまった場合は、ボルタイトのナットスプリッター海中作業用も有)等を使用して取り外す。ボルトが焼き付いた場合にはもみ取り作業(ドリル等で焼き付いたボルト軸をその場で切削してタップを切り直す作業)での対応が必要

 

かじり・焼き付きの本当のリスク

私たちに寄せられる焼き付きのご相談は、M30を超える大径ボルトで発生しているケースが大部分を

占めています。中には高温環境やフレッティング(微細な振動)による摩耗に起因する焼き付き、

つまり締結後の環境に起因するものもありますが、大部分は締付または取外し作業中に発生している

ものです。焼き付きの多くはトルクをかけることで発生する摩擦の熱が主要因となっていることは

本稿で何度も触れていますが、だからこそ私たちは大径の締結に対しては回して締め込むトルク法

ではなく、直接ボルトを引き伸ばして軸力を得るテンショニングを強くご推奨しています。

 

当社のお客様である大手電力会社では、大径ボルトの締結・解除作業をテンショニングに切り替えた

結果、焼き付きの発生件数がゼロになったという実績があります。そもそもテンショニングは摩擦に

影響を受けずに直接的に軸力を発生させられるため、高軸力での締結が求められる一方で相手材の

強度が高くないため軸力がオーバーすると陥没してしまう等といったターゲット軸力の幅が狭い用途

でも使用できる、軸力を正確に得ることに主眼を置いた締結方法です(油圧式ボルトテンショナー

使用時は、締結直後の初期軸力と、金属なじみ等による残存軸力に大きな差異が発生する場合があり

ますので、なじみ量を見越して初期軸力を大きくするか、なじみ収束後に再度締結する等の対策が

必要になる場合があります。ノルトロックジャパンでは、この点についてもテクニカルサポートの

一環としてお客様にサポートを提供しています)。

 

これは恐ろしい点ですが、もし締付作業中に焼き付いてしまった場合、当然それ以上トルクをかけて

も締付できない(ボルト・ナットが回らない)ために、作業者が十分に締め込んだと誤認してしまう

可能性があります。ある程度締め込んだ後に焼き付きが起こった場合、軸力が全く足りていないこと

や焼き付いていることを視覚的に見抜くことはほぼ不可能です。当然ながら、設計者が定めた必要

軸力が得られていない場合、ボルトの緩みや折損等の不具合要因となり人身事故や機械のトラブルに

よる設備損傷等のリスクを抱えてしまい、大変に危険です。そのようなリスクを避けて作業時の焼き

付き発生を防ぎ、尚且つ確実に正確な軸力を得るためには、やはりテンショニングによる締付が大径

締結の殆どのケースで最善と言えるでしょう。

 

※本記事にてご紹介した内容は、あくまで一般的な情報です。実際の現場では多くの要因が複合的に発生することも考えられ、より複雑な対策が必要となる可能性もあります。ボルト締結に関するご相談・ご質問がありましたら、いつでも下記までお問合せください。ノルトロックのエキスパートがお客様の課題を共に解決するお手伝いをいたします。

 

 

ボルト締結に関するご相談・ご質問がありましたら、いつでも下記までお問合せください。ノルトロックのエキスパートがお客様の課題を共に解決するお手伝いをいたします。

 

お問合せ✉:nlj@nord-lock-jp.com

 

 

文章監修:竹中 正人(ノルトロックジャパン アプリケーション・エンジニア)

特に材料への造詣が深く、困難な締結課題にも臆せず立ち向かう探求心で多くのお客様より信頼を得る。超音波による軸力測定、油圧テンショニングにも精通し、VDI 2230の研究にも余念がない。日本ねじ研究協会における研究委員会のメンバーでもある。

【BoltingTIPS】並目と細目で何が変わるの?

21 2月 2018
comment

テキスト: 岡田 圭佑  文章監修:竹中 正人

ねじの並目と細目では
何が変わるの?

※本記事は2月22日配信の無料メールマガジン「BOLTEDジャーナル」にてご紹介したものです。メールマガジンのご登録はこちらから。

 

ねじピッチにも規格化された違いがある

並目と細目。恐らく多くの方はねじピッチにこの2種類があることはご存知かと思います。細目ねじ

とは、一般的な並目ねじに比べてピッチ(ねじ山頂上間の距離)が狭いものを言います。一般的に

ねじやボルトは並目ねじが広く普及しており、発注時にも特に指定が無ければ並目ねじがお手元に

届くでしょう。ですが、業種が変わると常識も変わります。代表的なところでは自動車業界となり

ますが、自動車業界では「ねじ」と言えば細目ねじを指します。

 

ねじの並目・細目のピッチは国際的に規格化されており、英語ではCoarse thread(並目ねじ)、Fine

thread(細目ねじ)と呼ばれ、原則的には万国共通の区分です。ところが実際には、ねじピッチを

規定したISO 724: 1993(ISO general-purpose metric screw threads-Basic dimensions)には

並目・細目の区分は定められていません。ここでは単にねじの呼び径ごとのピッチが複数規格化され

ており、規格化されたピッチは並目・細目といった2種ではないサイズも多くあります。例えばM8

では並目ピッチが1.25、細目ピッチが1とされている場合が多いようですが、M8x0.75、つまり

ピッチが0.75のものも規格として存在します。

 

このISO724に対応する形で、日本国内ではJIS B 0205(旧規格:1997および1982/新規格:

2001)が定められています。ところがこのJIS規格の中ではその呼び径に定められたピッチで最大の

ものが「並目」、それ以下のものが「細目」として区分されています。

例えば先ほどのM8であれば最大ピッチ1.25が並目となり、ピッチ1と0.75が細目というわけですね。

この場合のピッチ0.75を「極細目」と呼ぶ方もいらっしゃいますが、これは毎回M8×0.75と説明する

時間と労力を省いて効率化する目的で、便宜上そのような通称が用いられるようになったのではない

かと言われています。

 

ノルトロックはピッチが変わっても使えるか

ノルトロックワッシャーの使用可否を考える際、ねじピッチが影響して来るのは2枚組内側となる

カム面(大きい方のギザギザがある面です)の角度です。ねじピッチが小さくなると、ねじ山の角度

は60°と規格で定められているため水平を基準としたねじ部の傾斜角(リード角)が小さくなって

行きます。

 

ノルトロックワッシャーの機構を見てみると、上図のように、ノルトロックワッシャーのウェッジ

ロック機構はカム山の角度(∠α)がねじのリード角(∠β)よりも大きくなっているために緩み方向

の力が加わるとカム面同士がスライドする(一方のカムが他方のカム山を登って行く形となる)こと

でワッシャーの厚みが増し、結果として緩もうとすることで逆に軸力が増加してセルフロック機能が

働く仕組みです。そのため、ねじピッチが小さな細目ねじに使用した場合も前提となる、∠αが∠β

より大きい、という条件は崩れません。つまり細目ねじや極細目ねじでもノルトロックは問題なく

機能します。逆に木ねじのようなねじピッチが並目よりも大きなねじは、∠αが∠βよりも小さく

なってしまうため、ノルトロックのウェッジロック機構は機能しないことになります。

 

並目を使うべきか細目にすべきか

もしこの記事を読まれているあなたが、設計上並目と細目のどちらを使うべきか迷われているなら、

ピッチの違いによるねじ底間の距離の差がキーポイントになるかも知れません(下図)。

原則として、ねじ山の角度はピッチに関わりなく60°になっているため(英国ウィット規格のみ

55°)ねじピッチが細目になると(ねじ山頂上間の距離が狭まると)、ねじ谷は浅くなります。ねじ

谷が浅くなると「くびれ」が小さくなる分、ねじ底間の距離は長くなり、有効断面積も大きくなり

ます。

また、細目でねじ谷が浅くなると、おねじ・めねじの引っかかり部も小さくなります。しかしねじ山

は1つだけではありません。同サイズの並目ねじと細目ねじを比較した場合、細目ねじは引っかかり

部は小さいものの、ねじ山の数という点では並目よりも多くなります。これらの因子を総合すると、

引っかかり部の断面径のトータルを比較した時、あまり大差のない結果となります。ねじ部の接触

面積を比較すると、細目の方が僅かに接触面積が大きくなる傾向があるものの、その差は僅かなもの

で、接触面積の観点からも大きな差は無いと言えます。

 

設計時の具体例として、ねじ山の破壊強度に配慮する目的で、ねじピッチによる破壊強度の違いが

あるか否かを考える場合、主要な因子としておねじ側・めねじ側の材料が同じなら、ねじ山の引っ

かかり部断面の径を基準にすることができます。締結体設計では原則として、めねじに破壊が起こる

前におねじ側が破断するよう設計しますが、ねじ引っかかり部断面の径をトータルして比較すると

大きな差が無いため、どうやらピッチは課題解決の決め手にはならないようだ、と考えることができ

ます。

また、ボルトの静的破断に配慮する場合は通常、有効断面積が大きな方が有利になります。この有効

断面積の観点からは、並目よりも細目の方が静的破断への強度は高いと言えます。

 

疲労強度を考えたい場合はどうでしょうか。有効断面積が大きいという点から、外力が発生した際に

細目の方がそれを受ける面積は大きくなります。荷重を受ける面積が大きければ大きいほど、単位

面積当たりの応力は小さくなりますので、繰返しかかる応力振幅に対する疲労限度という点で、細目

ねじの方が並目ねじよりも有利に思えます。ところが、疲労強度に大きな影響を及ぼす因子として、

応力集中係数と切欠き係数も無視できない観点です。一般的には、呼び径が同じ場合にはピッチが

小さいほど応力集中係数も大きくなり、疲労限度が低下する傾向にあるようです。単純に有効断面積

の差を比較した場合は細目の方が有利に思えるものの、切欠きが連続するボルトの疲労強度はピッチ

だけでなく、材料や呼び径、荷重形態、応力集中係数等の様々な影響も考慮する必要があり、その

要件は複雑さを極めます。少し観点やアプローチを変えると結論が正反対になるケースも多く、

研究者の間で意見が分かれることも珍しくありません。疲労破壊自体が極めて奥深い分野ではあり

ますが、恐らくこの疲労強度とねじピッチの関係は、ねじに関わるトピックの中でも最も難しい部類

に入るのではないでしょうか。

ただ一つ言えることは、疲労破壊に配慮したい場合、材料力学的な観点から結論を導くことに苦心

するよりも、その締結体の軸力を確実に保持して外力がボルト軸に直接伝わる状態となることを

避け、疲労破壊リスクを抑制することをご推奨します。軸力保持については観点が明確で、それに

よって疲労破壊リスクが低減できることも明確だからです。

 

そしてねじのピッチは、ボルトの呼び径が大きくなるに連れて細目に近付いて行くことも知って

おいた方が良いでしょう。ISOおよびJIS規格ではM64から並目ピッチが6になりますが、呼び径が

それ以上、例えばM120になっても並目はピッチ6のままです。一部、8というピッチも規格には存在

しますが、経験上殆どの場合ピッチはボルトの呼び径に関わらず、6が最大です。ボルト径が大きく

なってもピッチが変わらなければ、当然リード角は小さくなり、相対的にピッチは細目になって行き

ます。ピッチが小さくなると並目よりも回転数が増える分、摩擦面が増加し、結果として「かじり」

「焼き付き」が起こりやすくなってしまいます。私たちが大径ボルトの締結で「スーパーボルト」や

ボルタイト」等の「テンショニング」による締結を推奨する理由の一つは、この点です。特に回転

機械や発電設備等では日常的にこの問題について対策を考えられているため、ヒーティング(焼き

締め)の冷却時間のような待機時間が発生しない点を考えても良いソリューションと言えます。

そして弊社のスーパーボルトやボルタイトでは締結作業がより簡単になるため、多くの場合で大径

ボルト締結時によく問題となっているクレーンを使用する必要がなくなることも大きなメリットと

なるでしょう。

 

ここまでピッチの違いによる影響についてお話してきましたが、現実では設計観点からのねじの機能

だけでなく、他の観点からの評価も必要です。そう。コストの観点、それに深く紐づく現場作業の

観点です。一般的に細目ねじは流通量で並目ねじに劣るため、一本当たりの単価は並目よりもやや

高価になってしまう傾向があります。また、細目の主なメリットである小さなリード角に起因する

緩みにくさも、締付作業時の作業時間という点では裏腹にデメリットとなってしまいます。現在では

多くの業界で、コスト最適化の観点からメンテナンスの作業時間短縮が課題となっており、緻密に

コスト管理を行えば行うほど、このデメリットは大きく感じられるでしょう。

 

実際の設計ではピッチの差による耐力への影響だけでなく、例えば被締結材側の特徴や温度などの

環境因子も含め、ボルト締結体の設計では極めて多岐に渡る検討事項を漏れなく複合的に検討する

必要があります。こうして設計されたボルト締結体の評価として、ドイツ技術者協会が定めた

Verein Deutscher Ingenieure、即ちVDI 2230というものがあります。ねじ締結設計のガイドライン

となるべきもので、この考え方に基づいた計算によってボルト締結体を評価します。しかしこの

VDI 2230の計算は大変に複雑で難しく、手計算で行うのは相当な時間を費やす必要がある上、計算

にミスが無いか検算することも考えると決して簡単ではありません。そこでノルトロックジャパン

では、欧州の第三者機関が提供するVDI 2230の自動計算ソフトウェアを用いてお客様の締結体設計

評価をお手伝いすることができます。本稿のようにピッチの違いによる影響を検証したり、コスト

削減の一環で高価な締結部材を安価なものに入れ替えた時に安全性にどう影響するか等を計算に

よって評価し、エンジニアチームがその対策をご提案しています。

 

細目ねじの特徴まとめ

<細目のメリット>
並目ねじよりも緩みにくい
→リード角(ノルトロック機構図中の∠β)が小さい分、緩みにくい。

ピッチが小さいため、緻密な締付作業が行える
→同じ角度回しても、ピッチが小さい方が軸方向に進む距離が短い。

薄板など嵌合部が短い締結時に有利
→ピッチが小さい分、単純に嵌め合い長さを多く取ることができる。

並目ねじと比較して締付トルクが小さい
→ねじのリード角を坂道に例えた場合、細目の方がなだらかな上り坂となる。上る時の力(回転させる力=トルク)も小さくなり、緩める際のトルクも同様に小さくなる。反面、多くの回転数が求められるために長くなる作業時間も併せて検討することを推奨。

並目ねじよりも有効径が大きいため静的破断強度に優れ、せん断荷重への強度にも勝る
→ピッチが小さくなるとねじ谷が浅くなる分、有効径が大きくなり、耐力も向上する。

 

<細目ねじのデメリット>
●締付作業時間が長くなる
→メリットで述べた通り、トルクは低くなるが、より多く回転させる必要がある。

●並目と比較して異物の混入・凝着を起こしやすい
→ピッチが細かくより多くの回転を要するため、嵌合による微細な傷や異物が付きやすい。

●並目よりかじり・焼き付きの発生リスクが高い
→より多くの回転を要し、摩擦面が大きくなるため。特に細目ではなくても大径ボルトの場合は相対的にピッチが狭くなり(細目に寄って行く)、かじり・焼き付きが問題となりやすい。

●一般的には細目の方が疲労限度が小さくなる
→ねじ谷底の応力集中係数を基準に考える場合、ピッチが小さい方が応力集中係数が高い。
※例外あり。また、この一般論に対しても諸説あり。検証が必要である場合は先述のVDI2230の締結体評価計算によってサポートを行うことも可能です。

 

ボルト締結に関するご相談・ご質問がありましたら、いつでも下記までお問合せください。ノルトロックのエキスパートがお客様の課題を共に解決するお手伝いをいたします。

 

お問合せ✉:nlj@nord-lock-jp.com

 

 

文章監修:竹中 正人(ノルトロックジャパン アプリケーション・エンジニア)

特に材料への造詣が深く、困難な締結課題にも臆せず立ち向かう探求心で多くのお客様より信頼を得る。超音波による軸力測定、油圧テンショニングにも精通し、VDI 2230の研究にも余念がない。日本ねじ研究協会における研究委員会のメンバーでもある。

 


 

quizz

BOLTEDクイズ(BOLTEDジャーナル #.026)解答

今回のクイズは上の「並目と細目で何が変わるか」からの出題。

Q:ねじが細目になる、つまりピッチが狭くなって来ると、ねじ谷が浅くなる分だけ有効断面積が広くなりますよね。ピッチの違いによるボルトの性質はこの点にほぼ集約されて来るのですが、細目ねじの利点を説明した次の分のうち間違っているものはどれでしょうか?

この手のお話は本当、面白いですよね!

 

A:下の選択肢から間違った説明を選んでくださいね。

① 有効断面積が広い分、静的破断強度が高い
② 有効断面積が広い分、最大引張強さが強い
③ 有効断面積が広い分、疲労強度が高い

今回のクイズは、正解することよりも一緒に考えていただきたいです!

 

 

 

答え:3

 

 

本文にもある通り、一般的には並目よりも細目の方が疲労強度は低いとされています。でもこれは

あくまで一般論のお話。イメージしてみると、有効断面積が大きいということは「繰り返し応力を

受ける面積も大きいので疲労強度も増すのでは?」と思いませんか?私もこの答えはすごく意外で

たくさんの文献を読んでみましたが、一般論ではやはり並目の方が疲労強度が強いようです。実際

には並目でも細目でも、圧力側フランクの面積自体に大差はなく、どちらかと言えばやはり応力集中

係数と切欠き係数によってこの答えが導かれているようですが。私にはまだ難しいです…

私も社内のエンジニアにたくさん教えてもらって、もっとレベルアップできるようがんばります!

 

/FIKA

 

 

【✉RE: INQUIRY】ノルトロックの再利用回数

19 2月 2018
comment

テキスト: 岡田 圭佑  文章監修:梁 完

 

※本記事は2月22日配信の無料メールマガジン「BOLTEDジャーナル」にてご紹介したものです。メールマガジンのご登録はこちらから。

 

A:ノルトロックワッシャーは、再利用可能です。殆どの緩み止め製品が再利用できない中で、

これはノルトロックの大きなメリットの一つですが、偏芯式ナットやスリット付ナット等のように

ボルトのねじ部にダメージや負荷を与えることもないため、ノルトロックワッシャー自身だけでなく

他の締結部材の再利用性を損なうこともありません。相手材表面にリブ面のギザギザの跡

(インプレッションマーク)が残りますが、これも損傷ではありませんので、ギザギザの跡の上に

そのままノルトロックを設置し直して再利用しても、緩み止め効果に影響はありません。設置し直す

際にギザギザの跡にきれいに重ねる必要もありません。

では、その再利用は何回まで行っても問題なく確実に緩み止め効果を得られるでしょうか?率直に

結論から言うと、「一概に決められない」が正解です。しかしこれは、お客様にとっては想定できる

回答の中で一番つまらない回答ですよね。そこで今回の「RE: INQUIRY」では、実際に行った試験

データの中から一部を公開し、少しでもお客様の参考材料になるようにしたいと思います。

 

実際の試験データに進む前に、なぜ「一概に言えない」のかを先にご説明しておきます。ノルト

ロックワッシャーはメンテナンス等で取り外す際、工具で締付トルク以下の緩めトルクで取外しが

行えます(そのため摩擦を利用した緩み止め製品の検証で用いられるような、戻しトルク値での効果

検証ではノルトロックの緩み止め効果を測ることができません)。実際に取り外してみると、2枚組

内側のカム山を乗り越えた際に「カチッ」という音と手応えがありますね。この「カチッ」という

音・手応えと共にロックが解除されるのですが、下図(1)のようにその際にカム山に摩耗が発生

します。

この摩耗が進行すると、上図(2)における∠αがリード角β以下の角度となり、ノルトロック

ワッシャーの「ウェッジロック機構」が機能しなくなる、というわけです。そのためこの摩耗量は、

やはり取外し時にどれだけの圧がかかっていたかによって変わってしまいます。つまり、お客様が

「そのボルトにどの程度の軸力を発生させていたか」によって摩耗量が変わってしまうために、

一概には言えないという回答になってしまうのです。

 

実際の再利用試験の結果は

まずは鉄製ワッシャーの再利用試験データからご紹介したいと思います。再利用試験はドイツ工業規格DIN65151に準拠したユンカー振動試験にて実施しています。また、ノルトロックワッシャーと他の緩み止め製品との比較検証動画もこちらからご覧いただけます。

 

■M8 強度区分10.9ボルト+NL8+潤滑(二硫化モリブデン)

本試験条件として、締付後に周波数40Hz・振幅±0.5mmの振動を10秒間与えて緩みを検証した後、

取り外すというサイクルを10回行っています。最下部のグリーンの線のみ他の線と比較して損失軸力

量が多くなっていますが、他の線含めて加振直後に起こる軸力損失は戻り回転を起こす「回転緩み」

ではなく、戻り回転を伴わない「非回転緩み」の一種である初期なじみと呼ばれる現象です。

なじみはある程度で収束するため、その後はグラフから読み取れる通り軸力は失われず、10回目の

試験前後で試験体を比較しても合いマークにズレが無いことから、10回再利用を行っても回転緩みは

起こっていないことが分かります。また、本試験ではナット座面とねじ部双方に二硫化モリブデンを

塗布し、潤滑を行っていますが、緩みは起こっていません。

 

■M8 強度区分12.9ボルト+NL8+潤滑(ゾルベスト730)

次はボルトサイズは同じM8ですが、試験条件をより厳しくしたものを見てみましょう。ノルト

ロックワッシャー2枚組外側のリブ面にとって更にグリップしにくい強度区分12.9の六角穴付き

ボルトに対し、更に潤滑効果の高いゾルベストという二硫化モリブデン・グラファイト・無機系

バインダーを含む潤滑油をボルト座部、ねじ部双方に噴霧して試験を行いました。再利用回数は

15回目と20回目のものをそれぞれ二回ずつ、同じくユンカー振動試験にてボルト降伏点の70%で

ある28kNの軸力を発生させた後、検証しています。再利用は同軸力での締結→解除を繰り返して

行いました。前回通り周波数40Hz、振幅±0.5mmで10秒間加振しています。

本試験では、同じボルトで100回に渡って締結→解除を繰り返した相手材となるスペーサー(上図右

参照)を使用しています。ノルトロックワッシャーは15回目・20回目のものを各2回ずつ計4回、

スペーサーは100回締結→解除を繰り返したものですが、結果は前の試験と同様に初期なじみでの

軸力損失が収束した後は、軸力が維持されています。グラフから読み取れる通りボルトの強度区分

が12.9に上がっている分、本試験の方が軸力が高いためカムの摩耗量も増加しますが、それでも20回

の再利用でも緩み止め効果は変わりません。ゾルベストによる潤滑を施しても緩み止め効果に変わり

がない点も特筆すべき点ですね。

 

■M12 強度区分A2-70ボルト+NL12ss-254+潤滑(モリコート1000)

次はステンレス製ワッシャーで試してみましょう。ノルトロックワッシャーのステンレスは国内で

主流となっているSUS304ではなく欧州基準のSUS316L相当のステンレス材ですが、本試験は同じ

オーステナイト系ステンレスですが更に耐食性の高い254SMO製のノルトロックワッシャーを使用

しました。試験条件は、周波数40Hz、振幅±0.5mmの加振を行い、相手母材はSUS304を試験機に

入る形状に加工したものです。

軸力16.5kNで締結→解除を15回繰り返したもの、20回繰り返したものを各2回ずつ計4回、ユンカー

振動試験にて検証しています。加振時間は3倍の30秒での試験です。

上図のうち、青い線が再利用15回目、赤い線が再利用20回目の試験結果を示しています。結果は鉄製

ワッシャー同様に、20回の再利用でも緩み止め効果に陰りは見られず、もちろん合いマークも動いて

いません。ステンレス等の合金は摩擦係数が鋼よりも大きくバラつく傾向にあるため、今回も試験体

にはモリコート1000等の潤滑油を塗布しています。

 

手元にあるノルトロックはまだ問題なく機能するか

ノルトロックワッシャーは先述の通り、取外し時に「カチッ」という音と手応えが得られ、再利用が

できなくなる程カムの摩耗が進行した場合には、当然この音と手応えが無くなります。もし手元に

あるノルトロックがまだ再利用できる状態か分からないということがあれば、すぐにその場で確認

いただける方法があります。

まずはノルトロックワッシャーを締め付けた後、取り外してみてください。緩める時、上図左の

ように、2枚組のカム同士がスライドしてロックが解除されるかどうかをご確認いただき「カチッ」

という音と手応えが得られたか、上図右のようにボルト(またはナット)と相手材側にインプレッ

ションマークが残っているか、という点でロック機能の確認が現場ですぐに行えます。

この「カチッ」という音と手応えが得られた時、ロードセルで計測ができれば上図のようなことが

起こっています。縦軸が軸力を示し、横軸がトルクを示しています(緩めるためトルク値はマイナス

でグラフに表される)。これは最初に例示した鉄製ワッシャーM8サイズの時のものですが、

マイナスのトルクが加わると、軸力が元の15kN以上に一旦上昇した後、段階的に下落してゼロに

なっていることが分かります。「カチッ」という音と手応えが得られた瞬間はカムの山を乗り越えた

瞬間で、カム山を上っている時(音と手応えが得られる直前まで)にはカム山を上る分、ワッシャー

の厚みが増す形となり、ボルトの首は引っ張り上げられ、軸力が逆に上昇するのです。つまり、緩み

回転が起こることによって逆に締まって行くというのが、ノルトロックが1982年に世界で初めて開発

した「ウェッジロック機構」の秘密なのです。

明らかに音も手応えも小さな場合は、念のためそのワッシャーの再利用は避け、新しいものに交換

いただく方が確実でしょう。

 

社内で再利用回数を規定したい場合

ノルトロックジャパンでは、本稿でご紹介した振動試験に加え、トルク-軸力試験を交えて実際に

使用されるボルト、ナット、相手母材を使用して再利用限度回数を検証する試験を行い、お客様社内

での再利用回数策定のお手伝いも行っています。特に社内規格としてノルトロックをご使用いただい

ているお客様には一般的にご提供しているサービスですので、必要なお客様はお気軽にノルトロック

ジャパンまでお問合せください。

 

※実際の現場では、使用環境に由来する想定外の因子により再利用回数も変動する可能性が無いとは言い切れません。本稿で示した試験結果はあくまで一つの目安としてご確認いただき、実際に再利用回数を規定される際は上述の通り、ノルトロックジャパンまでご相談をお願い申し上げます。

 

お問合せ✉:nlj@nord-lock-jp.com

 

文章監修:梁 完(ノルトロックジャパン エンジニアリングマネージャー)

【個人様向けFAQ】正しいサイズの選び方

 

ノルトロックワッシャーの正しいサイズはどうやって選べばいいの?というお問合せに

ノルトロックのスウェーデン人エンジニア、Fridaが動画でお答えします!

 

► 更に詳しく:ノルトロックワッシャーとは

► 動画を見る:ユンカー振動試験によるノルトロックvs他製品の比較検証

【BoltingTIPS】ボルト折損を見つけたら何をすべきか

17 1月 2018
comment

テキスト: 岡田 圭佑 文章監修:梁 完

ボルトの折損を見つけたら
現場でまず何をすべき?

※本記事は1月18日配信の無料メールマガジン「BOLTEDジャーナル」にてご紹介したものです。メールマガジンのご登録はこちらから。

 

ボルトが折れているのを発見したら

皆さんは現場で折れたボルトを発見した経験はありますか?もしくはボルトの折損が元で何かの

トラブルを経験された方もいらっしゃるかも知れません。締結部によってはボルト1本の折損が

大きな事故原因になりかねませんが、ボルトの折損リスクは実はかなり広範囲に渡って存在して

います。そこで今回の「Bolting TIPS」では、実際に現場で折れたボルトを発見した時に何をすれば

良いか、また折損を防ぐためにはどのような点に注意すべきかを掘り下げて行きたいと思います。

 

ボルトの緩みが誘発する「疲労破壊」

ボルト締結に関するトラブルと聞いて、真っ先に思い浮かぶのは「緩み」に関するものではないで

しょうか。以前のコラムで紹介したような原因でボルトやナットには緩み(軸力損失)が発生しま

すが、ボルトに対する動的荷重の繰り返しによる破壊、いわゆる「疲労破壊」が緩みに起因して発生

するものであることはあまり広く知られていないように感じます。正確には、その締結部の軸力が

不足することで振動や衝撃が直接的にボルト軸に繰り返し伝わるために疲労破壊が起こってしまう

(下図)のですが、これには締付後に軸力が抜けてしまった可能性と、そもそも締付段階で必要軸力

が得られていなかったケースとに大別されます。腐食(錆び)や汚れが付着する前に発見できた

場合は、折れたボルトが疲労破壊によるものかどうかは多くの場合、視覚的に判別できます。その

ため疲労破壊でボルトが折れてしまったと分かった時には、まず軸力不足を原因として疑い、締付後

に緩んでしまったのか、それとも締付時から必要軸力が得られていなかったのかを検証する必要が

あります。

 

図)軸力がゼロの状態になると、荷重がボルト軸に直接伝わるために、ボルトには
大きなストレスが伝わってしまう。反対に、十分な軸力が発生していれば、締結部全体に
ストレスが分散されるため、ボルトに伝わるストレスも大幅に低減される。

 

ボルトの緩み要因については前回のコラムで詳しく触れたのでここでは割愛します。ここでは締付時

の軸力不足について、もう少し掘り下げてみましょう。特にトルク管理を行っている現場では、

そもそも既定のトルク値が適正かどうかを見直す必要があるかも知れません。必要トルクの算出時に

経年やメンテナンスによる座面やねじ部の細かな引っ掻き傷・錆び等が想定されていない場合、

これは問題になる可能性があります。座面やねじ部に傷や錆びが付くと「摩擦係数」が上がって

しまうため、同じトルクで締付を行っても、大きくなった摩擦にトルクの力が奪われ、狙っていた

軸力が得られないというケースがあります。摩擦のコンディションによって既定トルクを段階的に

設定する、または予め増大する摩擦を織り込んだトルク設定を行う等の方法でこのリスクに配慮でき

ます。場合によってはどちらの方法も対応が難しいケースもありますが、特に座面の傷や錆びは

影響が大きく視覚的に確認できるため、メンテナンス後の再締付の際には注意することをおすすめ

します。

 

M30を超える大径ボルトやナットの締付では、ハンマーや油圧トルクレンチ等で締め付けても、摩擦

が大きくなるために必要トルクがボルト径の約3乗に比例して増大し、ねじりストレスによる別の

折損リスクを抱えてしまいます。大径ボルトを正確な軸力で締結するには、無理に回して締め込む

方法ではなく、弊社のスーパーボルトやボルタイトのように、ボルトを直接引き伸ばして軸力を

得る「テンショニング」による締結をおすすめします。一般的には、回して締め込むトルク法では

軸力誤差が±30%程度発生すると言われていますが、特にスーパーボルトによるテンショニング

では、弊社での試験でもお客様企業での試験でも、±5~10%以内という驚くべき精度で締結が行え

ます。狙った軸力が正確に得られていれば、振動等の外力が加わってもそれに負けてしまうことが

なく、緩みも起こりません。加えて、ボルト軸には主に第1ねじ山と第2ねじ山に応力集中が発生

します。疲労破壊で折れるのも、殆どが雌ねじ側から見て第1・第2ねじ山の部分です。しかし

スーパーボルトでは、特許構造により、この応力を均一に各ねじ山に分散するため、軸力精度以外の

観点でもボルト折損のリスクを低減し、極限までそのリスクを抑えることができるようになって

います。

 

想定外の応力による「静的破壊」と、何の前触れもなく突然折れる「遅れ破壊」

衝撃や振動等の小さな動的負荷が繰り返し伝わることで発生する疲労破壊に対し、「静的破壊」と

呼ばれる、想定外の応力(ボルトの最大引っ張り強さ以上の応力)がかかってしまうことで折れて

しまうものがあります。静的破壊が原因でボルトが折れてしまった場合は、その原因となった想定外

の応力の発生原因を突き止める必要があります。4.8のボルトを使用していたのであれば8.8や10.9の

ボルトに交換する等して、より強度の高いボルトで締結するという対策が考えられます。しかし、

どの程度の応力がかかって折損が発生したのかが把握できない限りは根本解決にはなりにくい

でしょう。静的破壊に関しては、締結部にかかる外力で見落としているものが無いか設計レベルで

確認することも必要です。

 

「遅れ破壊」は、高軸力で高強度ボルトを締結した際に、時間を置いて何の予兆もなく突然破壊が

発生するものです。これは高軸力で締結され続けるという静的負荷によるものだけではなく、材料に

混入した水素による水素脆化によっても発生します。最近では水素脆化による破壊リスクを低減した

材料や表面処理も開発されているため、設計に関わる方は一通り把握された方が良いでしょう。

従って遅れ破壊への対策としては、極力12.9以上の高強度ボルトの使用を避け、材料的に水素脆化に

配慮したボルトを使用することです。高強度ボルトの使用が規格で義務付けられている場合以外は、

ボルトの本数を増やしたりボルト径を上げる等の基本的な対処方法で高強度ボルトの使用を避ける

ことができます。水素脆化リスクに関しては、電気亜鉛めっきが施されたものは、めっきの過程で

水素が材料に吸蔵され、水素脆化リスクが向上すると言われています。

 

破壊要因は他にもある

上記で触れた疲労破壊や遅れ破壊の他にもボルトの折損原因となるものは存在します。最も代表的な

ものは腐食(錆び)によるものですが、腐食は一旦発生すると際限なく進行し、それを止めることは

極めて困難です。また、鉄とステンレス等の異素材を組み合わせて使用されると、「ガルバニック

腐食」と呼ばれる腐食リスクを抱えることになります。これは水等の電解液が付着した場合に両材料

の電位差によって、低電位な金属から高電位な金属に電子が移動することで低電位な金属がイオン化

し、急速に腐食してしまう現象ですが、致命的な結果を招きかねないため、設計者でなくとも知って

おいた方が良い知識と言えます。

温度も金属の破壊要因となり得ます。熱サイクルは金属の疲労を誘発しますが、ボルトの被締結材の

ように高い圧力下で高温環境に晒される場合は、材料ごとの一定期間後にクリープという塑性変形が

発生します。クリープは防止することも発生後に進行を止めることもできないため、クリープが発生

する場合はクリープが進行する前(最終的にはクリープ破壊に繋がる)に材料を交換するしかありま

せん。

 

■ボルト破断の対策まとめ

<疲労破壊>

  • 締付後に軸力損失(緩み)が発生していないかを検証する
  • 締付時に必要軸力が得られているかを検証する
  • M30以上のボルトをトルクで締め付けている場合は、テンショニング等への締付方法の見直しを検討する
  • 設計者は計算によって外力によってもたらされる応力振幅が疲労限度を超えていないかを検証し、疲労破壊リスクを回避することができます

<静的破壊>

  • 締結部に発生する応力で見落としているものがないか確認する
  • 想定以上の外力の原因を見つけ出し、その外力がどの程度の大きさなのかを明らかにする
  • より強度区分の高いボルトを使用するか、ボルトの本数を増やす

<遅れ破壊>

  • 強度区分12.9以上のボルトは極力使用しない
  • 10.9以下のボルトで必要軸力が得られない場合は、ボルト径を上げるか本数を増やす(設計変更)
  • 水素脆化に配慮した材料・表面処理のボルトを使用する

<その他の破壊>

  • 腐食やクリープ等の進行性の劣化を発見した場合は、早めに交換を行う
  • 異なる材料同士を締結することを避け、ガルバニック腐食に配慮する(鉄の部材で締結すべき箇所に誤ってSUS製の部材を使用する等のヒューマンエラーを防ぐ仕組み作りも重要)

 

※本記事にてご紹介した内容は、あくまで一般的な情報です。実際の現場では多くの要因が複合的に発生することも考えられ、より複雑な対策が必要となる可能性もあります。

 

ボルト締結に関するご相談・ご質問がありましたら、いつでも下記までお問合せください。ノルトロックのエキスパートがお客様の課題を共に解決するお手伝いをいたします。
お問合せ✉:nlj@nord-lock-jp.com

 

文章監修:梁 完
ノルトロックジャパン エンジニアリングマネージャー

現場を訪問しての丁寧なフィールドサポートはお客様からの評価も高い。またノルトロック製品のスペシャル品を設計する技能も持ち合わせるスペシャリスト。

【FAQ】ノルトロックはどういう仕組みなの?

 

ノルトロックの故郷・スウェーデンからお送りするお客様のよくある質問に、FridaとSonnyがお答え

する「Q&A with NORD-LOCK」。

ノルトロックグループが1982年、スウェーデンにて世界で最初に開発したウェッジロックワッシャー

である「ノルトロックワッシャー」は、摩擦ではなくボルトの軸力そのものを利用してセルフロック

を機能させることでボルト/ナットが物理的に緩むことができない状態を作り出します。是非動画で

その仕組みをご覧ください。

ノルトロックワッシャーの詳細ページはこちらから

動画「ノルトロックワッシャー ユンカー振動試験による他製品比較検証」