Impact of extreme temperatures on metallic materials

約3500万年前、1つの巨大な隕石が地球に衝突した。その際に生み出された高温は、この地球が生まれて以来最も高い温度だったと言われている。科学者たちは、この宇宙からの飛来物の激突により生じた温度は、太陽の表面温度の約半分である2,370℃にも及んでいたと計算している。

逆に地球上で記録された観測史上最も低い温度は−89.2℃であり、旧ソビエト連邦が保有していた南極のボストーク基地で1983年7月21日に記録されている。

「絶対零度」への挑戦

前ページで触れた隕石の衝突やボストーク基地での温度はいずれも自然要因で発生する温度であるものの、工業界で金属材料が晒される温度帯は、時にこれらの極限温度帯に達し、様々な難題を技術者に投げかける。例えば、ジェットエンジンを想像してみよう。エンジン内の燃焼温度は900℃に達する。

また工業用の炉内は1,200℃に達することもある。一方で低温環境に目をやると、いわゆる極低温と呼ばれる環境では-196℃、または-269℃にも達する。高校で習う物理を思い返せば、この-269℃という温度は「絶対零度」に非常に近い温度であることが分かるだろう。絶対零度とは、あらゆる物質がこれ以上低温になれないという温度、即ち-273℃を指し、これ以下の温度は存在しない。絶対零度の環境下では熱エネルギーが全て無効化されてしまう。

だからこそ、非常な低温や高温、あるいは広範な温度変化を伴う環境に置かれる設備機器を設計する際には特に、使用される金属材料にその温度がどのように影響するのかを熟慮する必要がある。そしてそこには幾多のボルトやナットが極限温度環境下で使用されるのだ。前項の表1に示したいくつかの例のように。

金属学とも呼ばれる金属材料の研究は、あらゆる種類の金属が広範な温度変化に晒された時の挙動を明らかにしており、どのような金属、あるいは金属同士の組合せが温度変化によるネガティブな影響を軽減するのかを解明している。

その成果があるからこそ、今では鋼や他の合金は極限温度環境に適合できるよう、その性質を調整することができるのである。

低温がもたらす課題とは

低温環境がもたらすネガティブな影響として、まず挙げられるのが延性(大きな力が加わった際、破断に至るまでに塑性変形する性質)の低下と、いわゆる延性脆性遷移温度(英:DBTT / Ductile-to-brittle Transition Temperature)を超えた低温となった際に起こる材料の脆化だ(図1参照)。

「延性材料は、破断してしまう前にまず変形を起こします。」金属学、熱、そして表面処理のスペシャリストであり、フランスのメタロ・コルネア社の創設者であるアレクサンドル・フリュランタン氏は低温環境下での性質の変化を説明してくれた。「一方で
脆性材料はその最大降伏強さを超える力が加わると、すぐに破断してしまう傾向にあります。」

温度が低下し、延性脆性遷移温度に達すると多くの金属材料は延性から脆性へとその性質を変えて行く。当然のことではあるが、材料が変形してしまうケースよりも破断を起こしてしまうケースの方がより深刻だ。一般的には、温度が下がれば下がるほど、鋼は突然加えられる衝撃や曲げ応力に対して脆弱になる傾向が認められる。この衝撃や曲げ応力に対する耐性は、イメージとして変形を起こさせるような力が加わった際の復元力に近い。従ってこの特性は、衝撃試験によって評価することができる。

一方で、引張強さという観点から見てみると、低温環境は金属の機械的な引張強さを増強する結果となることが多く、引張力を加えて行くと破断を起こすまでの伸び量が少なくなる傾向にある。金属材料の機械的な強度を高く保ち、脆性の高まりを抑えるためによく用いられる方法は、ニッケルと窒素の含有量を高めたオーステナイト系ステンレス鋼を使うことだ。

より多くの要素が絡み合う高温環境

極高温の環境下においては、元通りに復元可能な現象も発生するが、一方で復元できない永久的な変化も起こる。復元可能な現象とは、機械的な引張強さの低下や延性の変化を含めて、極高温から通常の温度に戻った時にその性質も当初の状態に戻るものを指す。

他方、永久的な変化とは、高温環境下での経年や熱処理プロセスによって過度な焼き戻しを施されたような状態になるもので、これは疲労耐性の低下を招いてしまう。そのため、金属材料の使用温度帯は焼きなまし・焼き戻しを行う温度以下としなければならない。

ステンレス鋼は、高温に晒されることで不動態皮膜と呼ばれる保護膜が減少あるいは損失してしまう。そのため設計者は高温環境下に置かれるステンレス鋼に対しては、空気中に含まれる湿度等の影響因子に細心の注意を払う必要がある。フリュランタン氏は言う。「金属の性質に直接的な影響を及ぼさない液体物であっても、何らかの影響を受けることは避けられません。

例えば、二硫化モリブデン(MoS2)のような潤滑剤は、高温環境下では変質し、その潤滑性能を完全に失ってしまう(MoS2が三硫化モリブデンであるMos3に変化してしまう)ため、様々な問題が発生するリスクがあります。」

高温環境はクリープとリラクゼーションも引き起こす

クリープとリラクゼーションに関して、その重要かつ多くの弊害をもたらす現象は高温に晒されることで発生する。クリープは、例えそれが降伏強さ以下のものであっても、高い圧が加わり続けることで、材料が徐々に塑性変形を起こしてしまう現象を指す。リラクゼーションは、最初から加えられていた荷重が降伏強さ以下のものであっても、この弾性変形の一部が塑性変形化する(図2参照)ことで半永久的な歪みとなり、応力を分散させてしまう現象だ。

金属材料に発生するクリープやリラクゼーションといった現象は、その材料に加えられる荷重や変形が降伏強さ以下のものであっても、晒される温度が上昇すれば、より顕著に現れる。また、クリープやリラクゼーションの進行規模は、そこに加わる荷重の大きさ、温度、そしてそれらに晒される時間の長さに比例する。これらの現象は、鉄の場合でおよそ200℃から、ステンレス鋼やいくつかの軽金属では100℃を超えた辺りで現れはじめる。設計者はニッケル合金やコバルト合金等のクリープ耐性合金を選定し、こうしたリスクを抱える難しい締結部の要求事項をクリアすることができる。しかしクリープやリラクゼーションが、変形や応力振幅という意味で、材料を半永久的に変貌させてしまうことを常に念頭に置いておかねばならない。

広範な温度変化の中では熱膨張係数自体が変化する

物理学的には、極限温度環境がもたらす結果にはもう1つ、その温度に比例して材料が膨張または収縮するという重要なものがある。例えば、鉄の温度が上昇するということは、その鉄を構成する原子の振動幅がより大きくなることを意味する。原子の振動運動が活発化し、振幅が大きくなって行くに連れ、原子同士の距離は離れて行く。これにより、材料の熱膨張は発生する。

温度上昇に伴う実際の熱膨張は、いわゆる熱膨張係数(CTE/Coefficient of Thermal Expansion)というもので説明できる。これは通常、20℃の温度環境下における膨張率を基に定義されるもので、例えば0℃~100℃間というような特定温度帯の中ではこの係数に応じて膨張が起こる。しかし、フリュランタン氏はこう補足する。「極高温・極低温帯を含む広範な温度変化に晒されるケースでは、ある材料の熱膨張率は一定ではなく、およそ100℃毎に膨張率の見直しが求められます。」熱膨張率自体もその温度によって変化するという事実に加え、設計者は材料の経年劣化や、その使用環境に晒され続けることで発生する材料の変質も考慮しなければならない。これらは極限温度環境下に置かれる設備機器やボルト締結体がどのようなものであるかに関わらず、途轍もなく重要な要素だ。

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