A wind-win situation

The Challenge

離れたところからでは分かり難いが、風力発電機のタワー部分は巨大な負荷が加わった時にその力を分散させるため、たわむように曲がる構造になっている。しかしこの柔軟な構造のために、北米の大手電力会社はタワー内のヨーデッキとサドルデッキ(次ページ図2参照)と呼ばれる部分を固定するボルトに、危険で修繕に高額なコストを要する大きな問題を抱えてしまった。

これは多くの風力発電機に共通した問題でもあった。同社単体でも、同様の設計で作られた風車がおよそ6,000基あり、北米の全ての企業が保有するものをトータルすれば、その数は35,000基に上る。風力発電機のタワーを製造したメーカーからは様々な改修案が提示されたが、その殆どがL型のデッキブラケットを固定するボルトをより高強度なものと交換するというものだった。しかしこの改修案は、非常に複雑な工程と多額のコストを要するもので、風力発電機を24時間、あるいはそれ以上の期間停止させ、メンテナンス作業者に工事を行わせる必要があった。しかも、その改修工事を行っても尚、問題は解決されなかったのだ。

この問題に数年間苦しんだ後、この電力会社に勤める1人のクリエイティブな技術者が、問題の原因はボルトではないという結論を導き出した。L型のデッキブラケット自体が問題だと言うのだ。この問題を解決できる可能性が最も高いのは、関節構造で接合することであると考え、彼はそれが実現できるパーツを求めて奔走する。しかし求めているようなパーツを既製品で入手するのは難しく、その技術者はメーカー品のブラケットと入れ替えられるパーツを求め、地元にある「ファスナル」という大手工業部品サプライヤーの店舗を訪れた。

 

The Solution

その技術者は、風車のブラケット部品についてファスナルのテクニカルエキスパートと様々な角度から話し合いを行った。結果、ノルトロックワッシャーで関節構造の接合部を固定するという非常にシンプルな方法(図1参照)がベストであるという結論に達した。そして同社は試験的に2基の風車でノルトロックを導入した関節構造の接合を導入することにしたのだ。

ノルトロックワッシャーは、この関節構造の接合部を支えるボルトが緩むのを物理的に防ぐという意味で、非常に重要な役割を担っている。風力発電機の運転中にもデッキをその場にしっかりと固定することができた。メーカー側から提示された改修案では実現できなかったことだ。この技術者が考案した新たな設計では、風によってタワーが曲がった時、デッキが様々な方向に微かに動くような構造になっている。

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The Result

同社は稼働中の風力発電機のヨーデッキとサドルデッキに20の新たなテストブラケットを取り付け、1年以上に亘ってその状態を記録し続けたが、劣化や不具合の兆候は何も現れることはなかった。成功裏に終わった試験を経て、この電力会社とファスナルはノルトロックグループのサポートと共に、シンプルなデッキブラケット交換キットを開発した。

ブラケット部の交換のため、間もなく風力発電ファームに出荷されることになるこのキットは、5つの関節構造とそれを締結するボルト、そしてノルトロックワッシャーによって構成されている。この関節構造をもつデッキブラケット交換キットはこの問題を半永久的に解決できるだけでなく、従来の改修方法よりも格段に短時間で作業を終えることができた。24時間、あるいはそれ以上の時間を要した作業が、ほんの3~4時間で完了するのだ。この新たなソリューションは同社に更なる利益をもたらし、作業者の安全確保やメンテナンスコストの削減、費用対効果の改善等、数多くのメリットを生み出すこととなったのだ。

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FACT

顧客:北米の大手電力会社およびノルトロックグループの大手代理店

エンドユーザー:風力発電業界

場所:米国とカナダに設置された35,000基に上る風力発電機、その他世界中の風力発電機

アプリケーション:風力発電機内のヨーデッキとサドルデッキを接合するブラケット部のボルト

ソリューション:ノルトロックワッシャーによって固定され、荷重による影響を抑制された関節構造のブラケット

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