BOLTED

完璧なボルト締結を目指す

原子力の安全を守るトリプル・プロテクト

23 2月 2018
comment

テキスト: ウルリッヒ・シャマリ

写真: イラスト: ダヘル・ニュークリア・テクノロジーズ社

※本記事はBOLTEDマガジン 2017年第2号に掲載されたものです

課題

ダヘル・ニュークリア・テクノロジーズ社は、ドイツのフランクフルト・アム・マインにほど近いハナウという町にあり、放射性物質の運搬用コンテナを開発している企業です。当然ながら、最高レベルの安全性が必要です。

UF6 と表記される六フッ化ウランの運搬用コンテナの新規設計を行っていた時、同社は国際原子力機関(IAEA)の道路・海上・鉄道輸送に関する勧告を含めた国内外での極めて厳格な規制に対応する必要がありました。コンテナがこれらの規制に対応するには、例え輸送中に事故に遭ってもその衝撃、圧力、熱等に耐えるものでなくてはなりません。

事故によって発生し得る負荷は、120 センチの高さからの落下、9 メートル落下、そして先の尖った地面への 1 メートル落下を含む一連の試験によって定義されます。それでもコンテナは、次に受ける耐熱試験で火炎に脅かされることのないよう完全に密封されていなければならないという、厳格極まる試験に合格する必要があるのです。

ソリューション

脱落を起こさない設計を実現すべく動き出しました。同社はここに高い優先度を付け集中的に研究を行い、 254SMO 製のウェッジロックワッシャーであるノルトロックに辿り着きます。今 NL16ss-254 の品番が付いたこの製品は、ダヘル社のトリプル・プロテクト・ロック構造(図参照)において不可欠なパーツとなっています。1 本のボルトがパーツを固定し、またそのボルトは別のボルトによって固定され、ノルトロックワッシャーはその 2 本目のボルトを固定するのに用いられます。各コンテナにはこの方式で固定される 6 つの締結箇所があり、全てにノルトロックワッシャーが取り付けられます。

結果

ノルトロックのウェッジロッキング機構によって、ダヘル社の原子力産業用輸送コンテナのボルト締結は、振動や荷重に晒されても一切の緩みとは無縁のものとなりました。同社にとっては、緩み対策にノルトロックワッシャーを用いることで複雑な設計変更を行うより遥かにコストを抑えられたことと、誰でも簡単にメンテナンス作業を行えることも大きなメリットとなりました。必要なら、ノルトロックワッシャーはいつでも取り外してコンテナの状態が万全かどうか確認できるのです。同社の新型コンテナの寿命は 30 年と設定されています。それは同時に、ノルトロックワッシャーが 30 年に渡ってこのコンテナを十分に支え続けられることがお客様に認められたことをも意味しています。

【BoltingTIPS】並目と細目で何が変わるの?

21 2月 2018
comment

テキスト: 文章:岡田 圭佑  文章監修:竹中 正人

ねじの並目と細目では
何が変わるの?

※本記事は2月22日配信の無料メールマガジン「BOLTEDジャーナル」にてご紹介したものです。メールマガジンのご登録はこちらから。

 

ねじピッチにも規格化された違いがある

並目と細目。恐らく多くの方はねじピッチにこの2種類があることはご存知かと思います。細目ねじ

とは、一般的な並目ねじに比べてピッチ(ねじ山頂上間の距離)が狭いものを言います。一般的に

ねじやボルトは並目ねじが広く普及しており、発注時にも特に指定が無ければ並目ねじがお手元に

届くでしょう。ですが、業種が変わると常識も変わります。代表的なところでは自動車業界となり

ますが、自動車業界では「ねじ」と言えば細目ねじを指します。

 

ねじの並目・細目のピッチは国際的に規格化されており、英語ではCoarse thread(並目ねじ)、Fine

thread(細目ねじ)と呼ばれ、原則的には万国共通の区分です。ところが実際には、ねじピッチを

規定したISO 724: 1993(ISO general-purpose metric screw threads-Basic dimensions)には

並目・細目の区分は定められていません。ここでは単にねじの呼び径ごとのピッチが複数規格化され

ており、規格化されたピッチは並目・細目といった2種ではないサイズも多くあります。例えばM8

では並目ピッチが1.25、細目ピッチが1とされている場合が多いようですが、M8x0.75、つまり

ピッチが0.75のものも規格として存在します。

 

このISO724に対応する形で、日本国内ではJIS B 0205(旧規格:1997および1982/新規格:

2001)が定められています。ところがこのJIS規格の中ではその呼び径に定められたピッチで最大の

ものが「並目」、それ以下のものが「細目」として区分されています。

例えば先ほどのM8であれば最大ピッチ1.25が並目となり、ピッチ1と0.75が細目というわけですね。

この場合のピッチ0.75を「極細目」と呼ぶ方もいらっしゃいますが、これは毎回M8×0.75と説明する

時間と労力を省いて効率化する目的で、便宜上そのような通称が用いられるようになったのではない

かと言われています。

 

ノルトロックはピッチが変わっても使えるか

ノルトロックワッシャーの使用可否を考える際、ねじピッチが影響して来るのは2枚組内側となる

カム面(大きい方のギザギザがある面です)の角度です。ねじピッチが小さくなると、ねじ山の角度

は60°と規格で定められているため水平を基準としたねじ部の傾斜角(リード角)が小さくなって

行きます。

 

ノルトロックワッシャーの機構を見てみると、上図のように、ノルトロックワッシャーのウェッジ

ロック機構はカム山の角度(∠α)がねじのリード角(∠β)よりも大きくなっているために緩み方向

の力が加わるとカム面同士がスライドする(一方のカムが他方のカム山を登って行く形となる)こと

でワッシャーの厚みが増し、結果として緩もうとすることで逆に軸力が増加してセルフロック機能が

働く仕組みです。そのため、ねじピッチが小さな細目ねじに使用した場合も前提となる、∠αが∠β

より大きい、という条件は崩れません。つまり細目ねじや極細目ねじでもノルトロックは問題なく

機能します。逆に木ねじのようなねじピッチが並目よりも大きなねじは、∠αが∠βよりも小さく

なってしまうため、ノルトロックのウェッジロック機構は機能しないことになります。

 

並目を使うべきか細目にすべきか

もしこの記事を読まれているあなたが、設計上並目と細目のどちらを使うべきか迷われているなら、

ピッチの違いによるねじ底間の距離の差がキーポイントになるかも知れません(下図)。

原則として、ねじ山の角度はピッチに関わりなく60°になっているため(英国ウィット規格のみ

55°)ねじピッチが細目になると(ねじ山頂上間の距離が狭まると)、ねじ谷は浅くなります。ねじ

谷が浅くなると「くびれ」が小さくなる分、ねじ底間の距離は長くなり、有効断面積も大きくなり

ます。

また、細目でねじ谷が浅くなると、おねじ・めねじの引っかかり部も小さくなります。しかしねじ山

は1つだけではありません。同サイズの並目ねじと細目ねじを比較した場合、細目ねじは引っかかり

部は小さいものの、ねじ山の数という点では並目よりも多くなります。これらの因子を総合すると、

引っかかり部の断面径のトータルを比較した時、あまり大差のない結果となります。ねじ部の接触

面積を比較すると、細目の方が僅かに接触面積が大きくなる傾向があるものの、その差は僅かなもの

で、接触面積の観点からも大きな差は無いと言えます。

 

設計時の具体例として、ねじ山の破壊強度に配慮する目的で、ねじピッチによる破壊強度の違いが

あるか否かを考える場合、主要な因子としておねじ側・めねじ側の材料が同じなら、ねじ山の引っ

かかり部断面の径を基準にすることができます。締結体設計では原則として、めねじに破壊が起こる

前におねじ側が破断するよう設計しますが、ねじ引っかかり部断面の径をトータルして比較すると

大きな差が無いため、どうやらピッチは課題解決の決め手にはならないようだ、と考えることができ

ます。

また、ボルトの静的破断に配慮する場合は通常、有効断面積が大きな方が有利になります。この有効

断面積の観点からは、並目よりも細目の方が静的破断への強度は高いと言えます。

 

疲労強度を考えたい場合はどうでしょうか。有効断面積が大きいという点から、外力が発生した際に

細目の方がそれを受ける面積は大きくなります。荷重を受ける面積が大きければ大きいほど、単位

面積当たりの応力は小さくなりますので、繰返しかかる応力振幅に対する疲労限度という点で、細目

ねじの方が並目ねじよりも有利に思えます。ところが、疲労強度に大きな影響を及ぼす因子として、

応力集中係数と切欠き係数も無視できない観点です。一般的には、呼び径が同じ場合にはピッチが

小さいほど応力集中係数も大きくなり、疲労限度が低下する傾向にあるようです。単純に有効断面積

の差を比較した場合は細目の方が有利に思えるものの、切欠きが連続するボルトの疲労強度はピッチ

だけでなく、材料や呼び径、荷重形態、応力集中係数等の様々な影響も考慮する必要があり、その

要件は複雑さを極めます。少し観点やアプローチを変えると結論が正反対になるケースも多く、

研究者の間で意見が分かれることも珍しくありません。疲労破壊自体が極めて奥深い分野ではあり

ますが、恐らくこの疲労強度とねじピッチの関係は、ねじに関わるトピックの中でも最も難しい部類

に入るのではないでしょうか。

ただ一つ言えることは、疲労破壊に配慮したい場合、材料力学的な観点から結論を導くことに苦心

するよりも、その締結体の軸力を確実に保持して外力がボルト軸に直接伝わる状態となることを

避け、疲労破壊リスクを抑制することをご推奨します。軸力保持については観点が明確で、それに

よって疲労破壊リスクが低減できることも明確だからです。

 

そしてねじのピッチは、ボルトの呼び径が大きくなるに連れて細目に近付いて行くことも知って

おいた方が良いでしょう。ISOおよびJIS規格ではM64から並目ピッチが6になりますが、呼び径が

それ以上、例えばM120になっても並目はピッチ6のままです。一部、8というピッチも規格には存在

しますが、経験上殆どの場合ピッチはボルトの呼び径に関わらず、6が最大です。ボルト径が大きく

なってもピッチが変わらなければ、当然リード角は小さくなり、相対的にピッチは細目になって行き

ます。ピッチが小さくなると並目よりも回転数が増える分、摩擦面が増加し、結果として「かじり」

「焼き付き」が起こりやすくなってしまいます。私たちが大径ボルトの締結で「スーパーボルト」や

ボルタイト」等の「テンショニング」による締結を推奨する理由の一つは、この点です。特に回転

機械や発電設備等では日常的にこの問題について対策を考えられているため、ヒーティング(焼き

締め)の冷却時間のような待機時間が発生しない点を考えても良いソリューションと言えます。

そして弊社のスーパーボルトやボルタイトでは締結作業がより簡単になるため、多くの場合で大径

ボルト締結時によく問題となっているクレーンを使用する必要がなくなることも大きなメリットと

なるでしょう。

 

ここまでピッチの違いによる影響についてお話してきましたが、現実では設計観点からのねじの機能

だけでなく、他の観点からの評価も必要です。そう。コストの観点、それに深く紐づく現場作業の

観点です。一般的に細目ねじは流通量で並目ねじに劣るため、一本当たりの単価は並目よりもやや

高価になってしまう傾向があります。また、細目の主なメリットである小さなリード角に起因する

緩みにくさも、締付作業時の作業時間という点では裏腹にデメリットとなってしまいます。現在では

多くの業界で、コスト最適化の観点からメンテナンスの作業時間短縮が課題となっており、緻密に

コスト管理を行えば行うほど、このデメリットは大きく感じられるでしょう。

 

実際の設計ではピッチの差による耐力への影響だけでなく、例えば被締結材側の特徴や温度などの

環境因子も含め、ボルト締結体の設計では極めて多岐に渡る検討事項を漏れなく複合的に検討する

必要があります。こうして設計されたボルト締結体の評価として、ドイツ技術者協会が定めた

Verein Deutscher Ingenieure、即ちVDI 2230というものがあります。ねじ締結設計のガイドライン

となるべきもので、この考え方に基づいた計算によってボルト締結体を評価します。しかしこの

VDI 2230の計算は大変に複雑で難しく、手計算で行うのは相当な時間を費やす必要がある上、計算

にミスが無いか検算することも考えると決して簡単ではありません。そこでノルトロックジャパン

では、欧州の第三者機関が提供するVDI 2230の自動計算ソフトウェアを用いてお客様の締結体設計

評価をお手伝いすることができます。本稿のようにピッチの違いによる影響を検証したり、コスト

削減の一環で高価な締結部材を安価なものに入れ替えた時に安全性にどう影響するか等を計算に

よって評価し、エンジニアチームがその対策をご提案しています。

 

細目ねじの特徴まとめ

<細目のメリット>
並目ねじよりも緩みにくい
→リード角(ノルトロック機構図中の∠β)が小さい分、緩みにくい。

ピッチが小さいため、緻密な締付作業が行える
→同じ角度回しても、ピッチが小さい方が軸方向に進む距離が短い。

薄板など嵌合部が短い締結時に有利
→ピッチが小さい分、単純に嵌め合い長さを多く取ることができる。

並目ねじと比較して締付トルクが小さい
→ねじのリード角を坂道に例えた場合、細目の方がなだらかな上り坂となる。上る時の力(回転させる力=トルク)も小さくなり、緩める際のトルクも同様に小さくなる。反面、多くの回転数が求められるために長くなる作業時間も併せて検討することを推奨。

並目ねじよりも有効径が大きいため静的破断強度に優れ、せん断荷重への強度にも勝る
→ピッチが小さくなるとねじ谷が浅くなる分、有効径が大きくなり、耐力も向上する。

 

<細目ねじのデメリット>
●締付作業時間が長くなる
→メリットで述べた通り、トルクは低くなるが、より多く回転させる必要がある。

●並目と比較して異物の混入・凝着を起こしやすい
→ピッチが細かくより多くの回転を要するため、嵌合による微細な傷や異物が付きやすい。

●並目よりかじり・焼き付きの発生リスクが高い
→より多くの回転を要し、摩擦面が大きくなるため。特に細目ではなくても大径ボルトの場合は相対的にピッチが狭くなり(細目に寄って行く)、かじり・焼き付きが問題となりやすい。

●一般的には細目の方が疲労限度が小さくなる
→ねじ谷底の応力集中係数を基準に考える場合、ピッチが小さい方が応力集中係数が高い。
※例外あり。また、この一般論に対しても諸説あり。検証が必要である場合は先述のVDI2230の締結体評価計算によってサポートを行うことも可能です。

 

ボルト締結に関するご相談・ご質問がありましたら、いつでも下記までお問合せください。ノルトロックのエキスパートがお客様の課題を共に解決するお手伝いをいたします。

 

お問合せ✉:nlj@nord-lock-jp.com

 

 

文章監修:竹中 正人(ノルトロックジャパン アプリケーション・エンジニア)

特に材料への造詣が深く、困難な締結課題にも臆せず立ち向かう探求心で多くのお客様より信頼を得る。超音波による軸力測定、油圧テンショニングにも精通し、VDI 2230の研究にも余念がない。日本ねじ研究協会における研究委員会のメンバーでもある。

【✉RE: INQUIRY】ノルトロックの再利用回数

19 2月 2018
comment

テキスト: 岡田 圭佑  文章監修:梁 完

 

※本記事は2月22日配信の無料メールマガジン「BOLTEDジャーナル」にてご紹介したものです。メールマガジンのご登録はこちらから。

 

A:ノルトロックワッシャーは、再利用可能です。殆どの緩み止め製品が再利用できない中で、

これはノルトロックの大きなメリットの一つですが、偏芯式ナットやスリット付ナット等のように

ボルトのねじ部にダメージや負荷を与えることもないため、ノルトロックワッシャー自身だけでなく

他の締結部材の再利用性を損なうこともありません。相手材表面にリブ面のギザギザの跡

(インプレッションマーク)が残りますが、これも損傷ではありませんので、ギザギザの跡の上に

そのままノルトロックを設置し直して再利用しても、緩み止め効果に影響はありません。設置し直す

際にギザギザの跡にきれいに重ねる必要もありません。

では、その再利用は何回まで行っても問題なく確実に緩み止め効果を得られるでしょうか?率直に

結論から言うと、「一概に決められない」が正解です。しかしこれは、お客様にとっては想定できる

回答の中で一番つまらない回答ですよね。そこで今回の「RE: INQUIRY」では、実際に行った試験

データの中から一部を公開し、少しでもお客様の参考材料になるようにしたいと思います。

 

実際の試験データに進む前に、なぜ「一概に言えない」のかを先にご説明しておきます。ノルト

ロックワッシャーはメンテナンス等で取り外す際、工具で締付トルク以下の緩めトルクで取外しが

行えます(そのため摩擦を利用した緩み止め製品の検証で用いられるような、戻しトルク値での効果

検証ではノルトロックの緩み止め効果を測ることができません)。実際に取り外してみると、2枚組

内側のカム山を乗り越えた際に「カチッ」という音と手応えがありますね。この「カチッ」という

音・手応えと共にロックが解除されるのですが、下図(1)のようにその際にカム山に摩耗が発生

します。

この摩耗が進行すると、上図(2)における∠αがリード角β以下の角度となり、ノルトロック

ワッシャーの「ウェッジロック機構」が機能しなくなる、というわけです。そのためこの摩耗量は、

やはり取外し時にどれだけの圧がかかっていたかによって変わってしまいます。つまり、お客様が

「そのボルトにどの程度の軸力を発生させていたか」によって摩耗量が変わってしまうために、

一概には言えないという回答になってしまうのです。

 

実際の再利用試験の結果は

まずは鉄製ワッシャーの再利用試験データからご紹介したいと思います。再利用試験はドイツ工業規格DIN65151に準拠したユンカー振動試験にて実施しています。また、ノルトロックワッシャーと他の緩み止め製品との比較検証動画もこちらからご覧いただけます。

 

■M8 強度区分10.9ボルト+NL8+潤滑(二硫化モリブデン)

本試験条件として、締付後に周波数40Hz・振幅±0.5mmの振動を10秒間与えて緩みを検証した後、

取り外すというサイクルを10回行っています。最下部のグリーンの線のみ他の線と比較して損失軸力

量が多くなっていますが、他の線含めて加振直後に起こる軸力損失は戻り回転を起こす「回転緩み」

ではなく、戻り回転を伴わない「非回転緩み」の一種である初期なじみと呼ばれる現象です。

なじみはある程度で収束するため、その後はグラフから読み取れる通り軸力は失われず、10回目の

試験前後で試験体を比較しても合いマークにズレが無いことから、10回再利用を行っても回転緩みは

起こっていないことが分かります。また、本試験ではナット座面とねじ部双方に二硫化モリブデンを

塗布し、潤滑を行っていますが、緩みは起こっていません。

 

■M8 強度区分12.9ボルト+NL8+潤滑(ゾルベスト730)

次はボルトサイズは同じM8ですが、試験条件をより厳しくしたものを見てみましょう。ノルト

ロックワッシャー2枚組外側のリブ面にとって更にグリップしにくい強度区分12.9の六角穴付き

ボルトに対し、更に潤滑効果の高いゾルベストという二硫化モリブデン・グラファイト・無機系

バインダーを含む潤滑油をボルト座部、ねじ部双方に噴霧して試験を行いました。再利用回数は

15回目と20回目のものをそれぞれ二回ずつ、同じくユンカー振動試験にてボルト降伏点の70%で

ある28kNの軸力を発生させた後、検証しています。再利用は同軸力での締結→解除を繰り返して

行いました。前回通り周波数40Hz、振幅±0.5mmで10秒間加振しています。

本試験では、同じボルトで100回に渡って締結→解除を繰り返した相手材となるスペーサー(上図右

参照)を使用しています。ノルトロックワッシャーは15回目・20回目のものを各2回ずつ計4回、

スペーサーは100回締結→解除を繰り返したものですが、結果は前の試験と同様に初期なじみでの

軸力損失が収束した後は、軸力が維持されています。グラフから読み取れる通りボルトの強度区分

が12.9に上がっている分、本試験の方が軸力が高いためカムの摩耗量も増加しますが、それでも20回

の再利用でも緩み止め効果は変わりません。ゾルベストによる潤滑を施しても緩み止め効果に変わり

がない点も特筆すべき点ですね。

 

■M12 強度区分A2-70ボルト+NL12ss-254+潤滑(モリコート1000)

次はステンレス製ワッシャーで試してみましょう。ノルトロックワッシャーのステンレスは国内で

主流となっているSUS304ではなく欧州基準のSUS316L相当のステンレス材ですが、本試験は同じ

オーステナイト系ステンレスですが更に耐食性の高い254SMO製のノルトロックワッシャーを使用

しました。試験条件は、周波数40Hz、振幅±0.5mmの加振を行い、相手母材はSUS304を試験機に

入る形状に加工したものです。

軸力16.5kNで締結→解除を15回繰り返したもの、20回繰り返したものを各2回ずつ計4回、ユンカー

振動試験にて検証しています。加振時間は3倍の30秒での試験です。

上図のうち、青い線が再利用15回目、赤い線が再利用20回目の試験結果を示しています。結果は鉄製

ワッシャー同様に、20回の再利用でも緩み止め効果に陰りは見られず、もちろん合いマークも動いて

いません。ステンレス等の合金は摩擦係数が鋼よりも大きくバラつく傾向にあるため、今回も試験体

にはモリコート1000等の潤滑油を塗布しています。

 

手元にあるノルトロックはまだ問題なく機能するか

ノルトロックワッシャーは先述の通り、取外し時に「カチッ」という音と手応えが得られ、再利用が

できなくなる程カムの摩耗が進行した場合には、当然この音と手応えが無くなります。もし手元に

あるノルトロックがまだ再利用できる状態か分からないということがあれば、すぐにその場で確認

いただける方法があります。

まずはノルトロックワッシャーを締め付けた後、取り外してみてください。緩める時、上図左の

ように、2枚組のカム同士がスライドしてロックが解除されるかどうかをご確認いただき「カチッ」

という音と手応えが得られたか、上図右のようにボルト(またはナット)と相手材側にインプレッ

ションマークが残っているか、という点でロック機能の確認が現場ですぐに行えます。

この「カチッ」という音と手応えが得られた時、ロードセルで計測ができれば上図のようなことが

起こっています。縦軸が軸力を示し、横軸がトルクを示しています(緩めるためトルク値はマイナス

でグラフに表される)。これは最初に例示した鉄製ワッシャーM8サイズの時のものですが、

マイナスのトルクが加わると、軸力が元の15kN以上に一旦上昇した後、段階的に下落してゼロに

なっていることが分かります。「カチッ」という音と手応えが得られた瞬間はカムの山を乗り越えた

瞬間で、カム山を上っている時(音と手応えが得られる直前まで)にはカム山を上る分、ワッシャー

の厚みが増す形となり、ボルトの首は引っ張り上げられ、軸力が逆に上昇するのです。つまり、緩み

回転が起こることによって逆に締まって行くというのが、ノルトロックが1982年に世界で初めて開発

した「ウェッジロック機構」の秘密なのです。

明らかに音も手応えも小さな場合は、念のためそのワッシャーの再利用は避け、新しいものに交換

いただく方が確実でしょう。

 

社内で再利用回数を規定したい場合

ノルトロックジャパンでは、本稿でご紹介した振動試験に加え、トルク-軸力試験を交えて実際に

使用されるボルト、ナット、相手母材を使用して再利用限度回数を検証する試験を行い、お客様社内

での再利用回数策定のお手伝いも行っています。特に社内規格としてノルトロックをご使用いただい

ているお客様には一般的にご提供しているサービスですので、必要なお客様はお気軽にノルトロック

ジャパンまでお問合せください。

 

※実際の現場では、使用環境に由来する想定外の因子により再利用回数も変動する可能性が無いとは言い切れません。本稿で示した試験結果はあくまで一つの目安としてご確認いただき、実際に再利用回数を規定される際は上述の通り、ノルトロックジャパンまでご相談をお願い申し上げます。

 

お問合せ✉:nlj@nord-lock-jp.com

 

文章監修:梁 完(ノルトロックジャパン エンジニアリングマネージャー)

【エキスパート】疲労強度向上のための考察

1 2月 2018
comment

テキスト: ズハイール・チャイブ

※本記事はBOLTEDマガジン 2015年第2号に掲載されたものです

 

Q: ボルト締結体の疲労強度向上のために、どのような点に注意すべきでしょうか?

 

A: ボルト締結体の疲労強度は、その静的強度と比較すると非常に小さなものです。疲労強度向上の

ために設計者ができることとして、ねじ部の強度向上、そしてねじ部にかかる応力の軽減があります。

まずねじ部の強度向上という点ですが、これは切削ねじではなく転造ねじの使用をお勧めします。

また、ねじ部への応力軽減という点については、ボルト径を上げて少数のボルトで締結するのでは

なく、ボルト径を下げてボルト本数を増やしてください。これによってボルトの本数分、応力が

分散されるためです。

 

ボルト締結体の疲労強度は、スーパーボルトやフレックスナットのような、ねじ部への応力を分散し、

締結部に弾性を与える事のできる締結部材を使用することでも向上できます。疲労限度向上のために

最善の方法は、ねじ部のどこか特定の地点への応力集中を避けることです。これには主に3通りの方法

があります。応力集中を設計レベルで避ける方法、締結作業レベルで避ける方法、そして締結体に

緩みが発生することを避けることで応力集中を避ける方法です。

設計レベルでは、ボルト締結部の応力分散や、締結体への外力を軽減するよう配慮することで疲労強度

の向上に繋がります。これにはちょっとしたコツがありますので、以下を覚えておいてください。

 

  1. 軸力を可能な限り高く設定する
  2. できるだけボルト径を小さく、ボルト本数を多くして、応力を分散させる
  3. 締結部材の相手材への接地面積を可能な限り大きくする
  4. ボルトの締結長さを可能な限り長くする
  5. 可能な限り常に、かかる外力以上の軸力を保持する

 

設計レベルでの疲労強度向上策には、他にも金属のなじみ、クリープ、熱による膨張収縮サイクル等

による非回転緩みに対抗できる弾性部材(ノルトロックXシリーズワッシャー等)の使用等があり

ます。締結作業に関しては、必要な軸力を確実に得ることが最も重要です。締結体が十分な軸力を

保持して相手材と固定されている限り、応力は1点に集中することなく分散されて行くからです。

締結精度を確保するためには、校正済みの工具を使うことも大切です。また、得られる軸力の精度を

向上するには、摩擦係数を低く抑えてバラつきを安定させるために各締結体に合った潤滑油を使用

することもお薦めいたします。これは勿論、ねじ部のかじり防止という点でも役立ちます。

摩擦係数のバラつきは、同じトルクで締結しても軸力がバラついてしまうことを意味します。望ましい

作業手順があってこそ、完璧なボルト締結が実現できるという点を常に忘れないでください。

 

最後に、締結部の軸力保持という点については、緩みからボルト締結体を守るという1点に尽きます。

先ほど潤滑油をお薦めしましたが、中には潤滑油を使用することで緩みやすくなるのではないか、

という懸念を抱く方もいるでしょう。当然です。しかし、締結体にかかる外力を軸力が上回っていれ

ば、つまり締結体が緩む環境に無ければ、潤滑油によって摩擦係数が下がっていても関係なく、緩み

が起こることはありません。発生し得る外力が想定し切れない場合は、ノルトロックワッシャーの

ように摩擦に左右されない機構を持った緩み止め製品を使用することで保険をかけることもできます。

(トルクと摩擦、軸力の関係については工学博士・酒井智次先生のインタビュー記事に詳細)

また、疲労耐性という点では締結体を疲労亀裂の原因となり得るサビ・腐食から保護することも重要

で、これは適正な材料やコーティングの選定によって担保できるでしょう。

 

エキスパートに訊く
ボルト締結の安全性についてお悩みはありませんか?
ノルトロックのエキスパートにご相談ください。
ご相談・ご質問は、experts@nord-lock.comにて承ります。

 


 

quizz

BOLTEDクイズ(BOLTEDジャーナル #.024)解答

 

Q:今回のクイズは「BoltingTIPS」で取り上げた、ボルトの破壊に関する問題です。今回のTIPSではいろいろな種類の破壊をご紹介しましたが、そのうち「静的破壊」への対策として正しいものはどれになるでしょうか?

A:下の選択肢から正解を選んでくださいね。

1.ボルトの強度区分を上げる
2.ボルトの強度区分を下げる
3.ボルトの緩みを解決する

分かるかな?( *´艸`)

 

答え:1

 

ボルトの「静的破壊」の原因は、想定していなかったような大きな外力(ボルトの最大引っ張り強さ

以上の外力)がボルトに伝わることでしたね。そのため設計レベルでは、これまで見落としていた

大きな外力は無かったか、その想定外の外力はどの程度の大きさなのかを把握する必要がありますが、

ボルトの強度区分を上げて(一般的な4.8のボルトなら8.8や10.9に)、ボルトの最大引っ張り強さを

向上させることが解決策になり得ますね。「3」で触れたように緩みが原因になるものは静的破壊

ではなく「疲労破壊」でした。わかったかな?

 

/FIKA

【個人様向けFAQ】正しいサイズの選び方

 

ノルトロックワッシャーの正しいサイズはどうやって選べばいいの?というお問合せに

ノルトロックのスウェーデン人エンジニア、Fridaが動画でお答えします!

 

► 更に詳しく:ノルトロックワッシャーとは

► 動画を見る:ユンカー振動試験によるノルトロックvs他製品の比較検証

【FAQ】ノルトロックのメリットはどういうところ?

ノルトロックのメリットは
どういうところ?

※本記事は1月18日配信の無料メールマガジン「BOLTEDジャーナル」にてご紹介したものです。メールマガジンのご登録はこちらから。

 

「緩み止め」と考えると、ノルトロックを理解できない

矛盾しているように感じるかも知れませんが、ノルトロックワッシャーはボルト/ナットの緩みを

物理的に防止することが第一の目的です。しかし「緩み止め製品」かと言われると、メーカーとして

はNOと回答したくなるのです。その理由はノルトロックをお使いいただくことでお客様にもたらせ

るメリットと深く関係しています。

 

緩みを防ぐのは当たり前のこと

ボルト締結の安全性向上をサポートする立場として、最も危険で最もありふれた事故原因である

「緩み」を防ぐのは、ある意味では当然のことと言えます。他の緩み止め製品は、それが偏芯式の

ロックナットであろうとねじ山にスリットを利用して噛みつくタイプのナットであろうと、摩擦を

利用しています。ですが摩擦を利用する(摩擦係数を向上させる)ことで緩みの対策を行うという

コンセプトは、単に「緩みにくい」状態を作っているだけで「緩みを防止する」こととは意味が少し

違って来ます。加えて摩擦を増大させると作業負荷も増してしまい、作業時間が延びてしまいます。

メンテナンスでの取外しが難しくなる点も、同じく大きなデメリットとなります。

 

ノルトロックの最大のメリットは、「摩擦に依存せず、物理的に緩みを防止すること」です。1982年

に世界で初めてこのウェッジロック機構を開発・製品化することで生まれたノルトロックは、まず

この点に大きくフォーカスして製品の改良を重ねて来ました。しかしそれによるお客様側のメリット

には、単に緩みが無くなるというだけでなく、多くのポジティブな副作用が生まれます。

 

摩擦に依存しないため、締結部に潤滑油が使用できる
→潤滑が必要でワイヤーロックや折り曲げ座金しか選択肢が無かった締結部にも使用可能
→低いトルクで必要軸力が得られるため、作業効率(=コスト)が向上
→摩擦係数を最低限に抑えることでバラつき幅が最小化され、軸力精度が大幅に向上
→ねじ嵌合部や座部の摩耗・ダメージを大きく軽減し、ボルト/ナットの再利用性も向上

 

リアリスティックにコストメリットを考える

生々しい切り口で見てみると、ノルトロックワッシャーは当然、一般的な平座金より高額になって

しまいます。ですが、多くの緩み止めナットと同程度の価格帯で入手することができるものでも

あります。コストについて考える時、一昔前までは殆どの方がここで思考停止し、これ以上の考察を

行いませんでした。しかし、多くの新技術が台頭して業界環境がかつてないスピードで変わって行く

今日では、エンドユーザー様が経済的な持続可能性を強く求めるようになっています。つまり、

メンテナンスコストの削減です。鉄道事業者や電力会社を例に取るまでもなく、維持費を低減する

ことは今や死活問題となって来ているのです。読者の皆さまの中にも、この点をシビアにお客様から

迫られているという方は大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

 

ノルトロックワッシャーの第二のメリットは、スーパーボルトボルタイトエクスパンダー・

システムという他のノルトロックグループが供給する製品と同じく「メンテナンスコストを削減

できる」点です。ユンカー振動試験でご覧いただけるように、緩みを物理的に許さないノルトロック

は、単純にメンテナンス項目から「増し締め作業」を無くしてしまうことができます。既に見た

ように、締結部に潤滑油が使えるようにすることで、大幅に作業効率を向上させ、ボルト等の他の

締結部材の再利用性も損ないません。また、ノルトロックワッシャー自体も再利用が可能である

ため、この点もメンテナンスコスト削減に寄与できます。

 

また別の観点から、ノルトロックワッシャーにはノルトロックグループの他製品とも共通した大きな

メリットがあります。それは「作業者の技能に依存せず、誰が作業しても同じ効果が得られる」と

いう点です。特にワイヤーロックや折り曲げ座金を使用する場合、仕上がりが甘くなってやり直し、

というパターンがあります。元々が作業を食う作業である上に、やり直しまで行うと作業効率は

相当に低くなってしまいます。ノルトロックワッシャーは座金と同じくボルト軸に通して締め付ける

だけの作業となるため、この類の懸念はありません。また、この道30年のベテランが締め付けても、

昨日入った新人作業者が締め付けても、同じ緩み止め効果が得られます。これは、遠く離れた地方等

の意思疎通が難しい現場に落とし込む際にも大きなメリットとなり得るばかりか、海外でメンテ

ナンスが行われるケースでもヒューマンエラーのリスクを最小化することができます。

 

メンテナンスコストが削減できる
→メンテナンス項目から「増し締め」を無くすことができる
→上述の通り、潤滑油の使用で作業効率を向上させられる
→ボルト軸に通して締めるだけなので、作業工程を増やさない
→ボルト・ナット等の他の締結部材の再利用性を損なわない
→ノルトロックワッシャー自体が再利用可能(限度回数は締結軸力によって変わります)

高い再現性
→不完全な作業によるやり直しを無くすことができる
→熟練者でも新人でも同じ効果が得られる
→遠く離れた地方や海外等、意思疎通が難しい先でメンテを行う場合にも有利

 

ノルトロックを使うメリットは製品だけではない

ノルトロックジャパンの営業技術員は、入社後長い期間、ボルト締結の専門知識のトレーニングを

受け、習得した知見をお客様とのお話の中で役立てるだけでなく、更に深い知見を有するエンジニア

がお客様をサポートします。必要であれば実際に現場に伺い、「ボルト締結とはそもそも何か」と

いったセミナーを開催したり、超音波軸力計を用いて実際に現場でどの程度締結力にバラつきが

起こっているかを検証したり、VDI2230の計算を行ってお客様が設計されたボルト締結体の安全性

評価を行ったり、有限要素法による解析で事故原因を究明したりすることも可能です。

大阪にあるテクニカルセンターでは、実際に使用される締結部材と相手材を使用して振動試験を

行ったり、算出されたトルクで締結した時に本当に必要軸力が出ているのかロードセルによる測定で

検証したりといった各種試験も行っています。ノルトロックワッシャーに限らず、ノルトロック

グループの製品を採用いただくということは、これらのテクニカルサポートを受ける権利を手に

することも意味しているのです。

 

私たちは常にお客様が設計・製造されている機器、実際に使用されている設備をボルト締結の観点

から一つ上のレベルに引き上げるお手伝いができるよう活動しています。実際に国内でも、多くの

事業者様や設備機器メーカー様に私たちのテクニカルサポートを提供しており、単に部材を納める

メーカーではなく、パートナーとして安全で持続可能なものづくりをお手伝いしています。

 

 

ボルト締結に関するご相談・ご質問がありましたら、いつでも下記までお問合せください。ノルトロックのエキスパートがお客様の課題を共に解決するお手伝いをいたします。

お問合せ✉:nlj@nord-lock-jp.com

【BoltingTIPS】ボルト折損を見つけたら何をすべきか

17 1月 2018
comment

テキスト: 岡田 圭佑 文章監修:梁 完

ボルトの折損を見つけたら
現場でまず何をすべき?

※本記事は1月18日配信の無料メールマガジン「BOLTEDジャーナル」にてご紹介したものです。メールマガジンのご登録はこちらから。

 

ボルトが折れているのを発見したら

皆さんは現場で折れたボルトを発見した経験はありますか?もしくはボルトの折損が元で何かの

トラブルを経験された方もいらっしゃるかも知れません。締結部によってはボルト1本の折損が

大きな事故原因になりかねませんが、ボルトの折損リスクは実はかなり広範囲に渡って存在して

います。そこで今回の「Bolting TIPS」では、実際に現場で折れたボルトを発見した時に何をすれば

良いか、また折損を防ぐためにはどのような点に注意すべきかを掘り下げて行きたいと思います。

 

ボルトの緩みが誘発する「疲労破壊」

ボルト締結に関するトラブルと聞いて、真っ先に思い浮かぶのは「緩み」に関するものではないで

しょうか。以前のコラムで紹介したような原因でボルトやナットには緩み(軸力損失)が発生しま

すが、ボルトに対する動的荷重の繰り返しによる破壊、いわゆる「疲労破壊」が緩みに起因して発生

するものであることはあまり広く知られていないように感じます。正確には、その締結部の軸力が

不足することで振動や衝撃が直接的にボルト軸に繰り返し伝わるために疲労破壊が起こってしまう

(下図)のですが、これには締付後に軸力が抜けてしまった可能性と、そもそも締付段階で必要軸力

が得られていなかったケースとに大別されます。腐食(錆び)や汚れが付着する前に発見できた

場合は、折れたボルトが疲労破壊によるものかどうかは多くの場合、視覚的に判別できます。その

ため疲労破壊でボルトが折れてしまったと分かった時には、まず軸力不足を原因として疑い、締付後

に緩んでしまったのか、それとも締付時から必要軸力が得られていなかったのかを検証する必要が

あります。

 

図)軸力がゼロの状態になると、荷重がボルト軸に直接伝わるために、ボルトには
大きなストレスが伝わってしまう。反対に、十分な軸力が発生していれば、締結部全体に
ストレスが分散されるため、ボルトに伝わるストレスも大幅に低減される。

 

ボルトの緩み要因については前回のコラムで詳しく触れたのでここでは割愛します。ここでは締付時

の軸力不足について、もう少し掘り下げてみましょう。特にトルク管理を行っている現場では、

そもそも既定のトルク値が適正かどうかを見直す必要があるかも知れません。必要トルクの算出時に

経年やメンテナンスによる座面やねじ部の細かな引っ掻き傷・錆び等が想定されていない場合、

これは問題になる可能性があります。座面やねじ部に傷や錆びが付くと「摩擦係数」が上がって

しまうため、同じトルクで締付を行っても、大きくなった摩擦にトルクの力が奪われ、狙っていた

軸力が得られないというケースがあります。摩擦のコンディションによって既定トルクを段階的に

設定する、または予め増大する摩擦を織り込んだトルク設定を行う等の方法でこのリスクに配慮でき

ます。場合によってはどちらの方法も対応が難しいケースもありますが、特に座面の傷や錆びは

影響が大きく視覚的に確認できるため、メンテナンス後の再締付の際には注意することをおすすめ

します。

 

M30を超える大径ボルトやナットの締付では、ハンマーや油圧トルクレンチ等で締め付けても、摩擦

が大きくなるために必要トルクがボルト径の約3乗に比例して増大し、ねじりストレスによる別の

折損リスクを抱えてしまいます。大径ボルトを正確な軸力で締結するには、無理に回して締め込む

方法ではなく、弊社のスーパーボルトやボルタイトのように、ボルトを直接引き伸ばして軸力を

得る「テンショニング」による締結をおすすめします。一般的には、回して締め込むトルク法では

軸力誤差が±30%程度発生すると言われていますが、特にスーパーボルトによるテンショニング

では、弊社での試験でもお客様企業での試験でも、±5~10%以内という驚くべき精度で締結が行え

ます。狙った軸力が正確に得られていれば、振動等の外力が加わってもそれに負けてしまうことが

なく、緩みも起こりません。加えて、ボルト軸には主に第1ねじ山と第2ねじ山に応力集中が発生

します。疲労破壊で折れるのも、殆どが雌ねじ側から見て第1・第2ねじ山の部分です。しかし

スーパーボルトでは、特許構造により、この応力を均一に各ねじ山に分散するため、軸力精度以外の

観点でもボルト折損のリスクを低減し、極限までそのリスクを抑えることができるようになって

います。

 

想定外の応力による「静的破壊」と、何の前触れもなく突然折れる「遅れ破壊」

衝撃や振動等の小さな動的負荷が繰り返し伝わることで発生する疲労破壊に対し、「静的破壊」と

呼ばれる、想定外の応力(ボルトの最大引っ張り強さ以上の応力)がかかってしまうことで折れて

しまうものがあります。静的破壊が原因でボルトが折れてしまった場合は、その原因となった想定外

の応力の発生原因を突き止める必要があります。4.8のボルトを使用していたのであれば8.8や10.9の

ボルトに交換する等して、より強度の高いボルトで締結するという対策が考えられます。しかし、

どの程度の応力がかかって折損が発生したのかが把握できない限りは根本解決にはなりにくい

でしょう。静的破壊に関しては、締結部にかかる外力で見落としているものが無いか設計レベルで

確認することも必要です。

 

「遅れ破壊」は、高軸力で高強度ボルトを締結した際に、時間を置いて何の予兆もなく突然破壊が

発生するものです。これは高軸力で締結され続けるという静的負荷によるものだけではなく、材料に

混入した水素による水素脆化によっても発生します。最近では水素脆化による破壊リスクを低減した

材料や表面処理も開発されているため、設計に関わる方は一通り把握された方が良いでしょう。

従って遅れ破壊への対策としては、極力12.9以上の高強度ボルトの使用を避け、材料的に水素脆化に

配慮したボルトを使用することです。高強度ボルトの使用が規格で義務付けられている場合以外は、

ボルトの本数を増やしたりボルト径を上げる等の基本的な対処方法で高強度ボルトの使用を避ける

ことができます。水素脆化リスクに関しては、電気亜鉛めっきが施されたものは、めっきの過程で

水素が材料に吸蔵され、水素脆化リスクが向上すると言われています。

 

破壊要因は他にもある

上記で触れた疲労破壊や遅れ破壊の他にもボルトの折損原因となるものは存在します。最も代表的な

ものは腐食(錆び)によるものですが、腐食は一旦発生すると際限なく進行し、それを止めることは

極めて困難です。また、鉄とステンレス等の異素材を組み合わせて使用されると、「ガルバニック

腐食」と呼ばれる腐食リスクを抱えることになります。これは水等の電解液が付着した場合に両材料

の電位差によって、低電位な金属から高電位な金属に電子が移動することで低電位な金属がイオン化

し、急速に腐食してしまう現象ですが、致命的な結果を招きかねないため、設計者でなくとも知って

おいた方が良い知識と言えます。

温度も金属の破壊要因となり得ます。熱サイクルは金属の疲労を誘発しますが、ボルトの被締結材の

ように高い圧力下で高温環境に晒される場合は、材料ごとの一定期間後にクリープという塑性変形が

発生します。クリープは防止することも発生後に進行を止めることもできないため、クリープが発生

する場合はクリープが進行する前(最終的にはクリープ破壊に繋がる)に材料を交換するしかありま

せん。

 

■ボルト破断の対策まとめ

<疲労破壊>

  • 締付後に軸力損失(緩み)が発生していないかを検証する
  • 締付時に必要軸力が得られているかを検証する
  • M30以上のボルトをトルクで締め付けている場合は、テンショニング等への締付方法の見直しを検討する
  • 設計者は計算によって外力によってもたらされる応力振幅が疲労限度を超えていないかを検証し、疲労破壊リスクを回避することができます

<静的破壊>

  • 締結部に発生する応力で見落としているものがないか確認する
  • 想定以上の外力の原因を見つけ出し、その外力がどの程度の大きさなのかを明らかにする
  • より強度区分の高いボルトを使用するか、ボルトの本数を増やす

<遅れ破壊>

  • 強度区分12.9以上のボルトは極力使用しない
  • 10.9以下のボルトで必要軸力が得られない場合は、ボルト径を上げるか本数を増やす(設計変更)
  • 水素脆化に配慮した材料・表面処理のボルトを使用する

<その他の破壊>

  • 腐食やクリープ等の進行性の劣化を発見した場合は、早めに交換を行う
  • 異なる材料同士を締結することを避け、ガルバニック腐食に配慮する(鉄の部材で締結すべき箇所に誤ってSUS製の部材を使用する等のヒューマンエラーを防ぐ仕組み作りも重要)

 

※本記事にてご紹介した内容は、あくまで一般的な情報です。実際の現場では多くの要因が複合的に発生することも考えられ、より複雑な対策が必要となる可能性もあります。

 

ボルト締結に関するご相談・ご質問がありましたら、いつでも下記までお問合せください。ノルトロックのエキスパートがお客様の課題を共に解決するお手伝いをいたします。
お問合せ✉:nlj@nord-lock-jp.com

 

文章監修:梁 完
ノルトロックジャパン エンジニアリングマネージャー

現場を訪問しての丁寧なフィールドサポートはお客様からの評価も高い。またノルトロック製品のスペシャル品を設計する技能も持ち合わせるスペシャリスト。

【FAQ】ノルトロックはどういう仕組みなの?

 

ノルトロックの故郷・スウェーデンからお送りするお客様のよくある質問に、FridaとSonnyがお答え

する「Q&A with NORD-LOCK」。

ノルトロックグループが1982年、スウェーデンにて世界で最初に開発したウェッジロックワッシャー

である「ノルトロックワッシャー」は、摩擦ではなくボルトの軸力そのものを利用してセルフロック

を機能させることでボルト/ナットが物理的に緩むことができない状態を作り出します。是非動画で

その仕組みをご覧ください。

ノルトロックワッシャーの詳細ページはこちらから

動画「ノルトロックワッシャー ユンカー振動試験による他製品比較検証」